脳力開発193号/理念の時代を生きる193号

脳力開発193号・青少年合宿卒業生須田耀介君の旅

ロンドン・オランダ

■2カ国目ロンドン/イギリス

2日目は、私が10月から通う会社EYの本社見学。EYの本社はロンドンの中心を流れるテムズ川沿いのオフィス街にある。テムズ川沿いは観光客だらけで、ここを毎朝出勤するのは辛いだろうなと感じながら歩いていた。EYオフィスの建物は想像していたものよりも小さく、日本の東京オフィスとほぼ変わらない内装であった。人種の構成比率に違いはあれど、社内の空気感や顔つきは似たものがあり、ここまで社風を統一できるものなのかと驚いた。

 

■ロンドン探索

現存する大学の中で3番目に古いと言われ、ハリーポッターのロケ地でもあるオックスフォード大学に行った。歴史ある荘厳な建物に圧倒された。写真の食堂は昼時にオックスフォードの学生が使用しているらしい。このような大学と比較すると、日本の私立大学の学歴は何の意味も無さないと思わされ、肩書きに驕らず努力しなくてはと強く感じた。

夜、ロンドン・ルートン空港からスコットランドのエディンバラへ。

18:00発のフライであるため余裕を持って16:30に空港へ到着。しかし飛行機が遅延で20:00発とのこと。飛行機の遅延てなんだ?と思いながらも空港で20:00まで待機していたがさらに遅延の告知があり22:00に。結局飛行機が出発したのは24:00で、エディンバラ到着は2:00頃となった。夏にも関わらずにエディンバラは肌寒く、長袖が必須だった。街灯は少なく、小説家コナン・ドイル、JK・ローリングが育った街であると聞いていたためかなんだか不気味な印象を覚えた。朝、昼は気温と景色が非常に素晴らしい場所であった。ぜひ皆さんも訪れてほしい。

 

■3カ国目オランダ/アムステルダム

エディンバラから飛行機で1時間半、オランダのアイントホーフェン空港に到着。空港からオランダ首都であるアムステルダムへ移動。アムステルダム駅は東京駅と似ていたが調べてもどこにも繋がりはないようだった。

オランダといえば風車、ということで風車を見るためにアムステルダムの北西にあるウォルメルという街にバスへ移動。バスに乗車すると一番後ろの5人掛けの席に3人のアジア人男性が乗っていたため、何となく居心地が良く私も最も後ろの席に座った。バスが出発して5分、日本語で「日本人ですか?」と話しかけられ、まさかの日本人3人組と遭遇。

よくよく話を聞いてみるとベルギーの大学院生、ドイツの大学院生、日本から旅行中のコンサルタントの3人組だった。どこで出会った3人組かを聞くとさらにびっくりで、私と同じ慶應大学で出会った友人同士だという。私も慶應出身だという話と、ヨーロッパの旅行話には花が咲きあっという間に目的地へ。目的地も同じであったため私含めて4人で風車を観光することになった。オランダは標高が低く、面積の1/4が海面よりも低い位置にあることから水害に悩まされ、土地の干拓のために水を汲み出す動力として水車が使われていたそうだ。水車観光の後、アムステルダムまで4人で戻りそのまま夕飯までご馳走になった。日本でまた会う約束をしたため楽しみである。(須田耀介・続く)

 

 

理念の時代を生きる193号

企業の目的は利益追求ではない  

■理念実践会の報告

理念実践会は近況報告を仕事と個人の報告をしてもらう。一人五分から七、八分になることもある。理解を深めるために詳細を語ってもらうこともある。

毎回近況報告から始める。「男子三日会わざれば、刮目して相会うべし」という箴言がある。この姿勢で参加者は報告を聞く。経営者養成塾ジュニアコース、シニアコースを人によれば数年経て、理念探究に進み理念を探究した上で理念実践会に至る。彼らは毎年、年初の経営計画熟考会とその後の年八回の理念実践会を継続している。何年も学ぶことを継続しているメンバーの会です。メンバーは互いを尚友として接している。

■尚友とは

「尚友」とは友を尚(たっと)ぶという意味で古来「読書尚友」というふうに使われている。何故とくに尚ぶかというに、道の上からいうのであり、その友人が道上から自分より一歩ないし数歩すすめており、従って自分はその友において大いに尊敬すべきものを認めるというとき初めて友を尚ぶとなる。(森信三)

■一日一語の輪読

その後一日一語を輪読し、その簡単な感想を述べてもらう中で近況報告のなかで気になった問題を「和談」をする。「和談」は答えを出すためではない。その和談の中から自らの気づきを大事にする。今回は中でも下記のふたつの箴言を取り上げます。

十月十二日・夫婦関係

夫婦のうち人間としてエライほうが、相手をコトバによって直そうとしない、相手の不完全さをそのまま黙って背負ってゆく。夫婦関係というものは、結局どちらかが、こうした心の態度を確立する外ないようですね。

十月二十六・人間を知ること

人間を知ることは現実を知ることのツボである。わたくしが人間に対して限りなき関心をもつのは、生きた人間こそ無量な「真理の束(たば)」だからである。

 

■社員の突然の退社

山本卓哉;柳井さんのところに一気に二人入ってきたことは、経営者としてうれしい反面、閑散期の仕事の割り振りやお金の問題等、悩ましいと思いますが、人間力で人を呼び込む姿は眩しく見えます。

  • 自分に欠けているものは何か、今回なぜ従弟が退職を決断したのか。柳井さんを思い浮かべると原因が見えてきます。プライバシーやハラスメントに気を付けなければならない時代になっていますが、そこに気にするあまり、突っ込んだ話ができないようになっていました。
  • 自分はもっと社員とコミュニケーションをとらなければならないと強く感じました。問題が小さいうちに解決し、一日一語にもあったように、後手に廻らず先手、先手を打ってゆけると思います。薄々は感じていましたが、今回の理念実践会で自分が実行しなければならない課題がはっきりと炙り出されました。
  • ミーティングを始めましたが、全然自分の想いを伝えられていません。今まで学んできたことの何を話したら良いか迷います。皆が理解できるような簡単な言葉も思いつきません。しかし理念に沿った、和道の自立連帯型の企業にしたい想いはあります。自分や妻が思い描く夢やロマン、鍛冶屋さんや柄と繪のお客さんとの出来事や体験を社員と共有することで、皆が同じ方向を向いて次の山謙のステージに進むための土台づくりが仕上がると感じています。今回も人として経営者として良い学びが出来ました。尚友の皆さん、ありがとうございました。

 

柳井誠一;今回弊社にスタッフが2名加わったことに関して和談をした中で、改めて自らがスタッフとどのように向き合っているのか、どんな思いで接しているのか普段は業務の忙しさで忘れていた面を思い出しました。

一:朝は必ず顔を見て明るく自ら挨拶をするようにする

(その際、普段と違ったりすると顔の表情で分かる)

二:何か悩みがあったり、体調が悪そうなときは何気なく2人の時に聞いてみる

(家庭の悩みなどは他のスタッフがいる前では話しにくいので聞かない)

三;お互いの欠点などを指摘し合うのではなく、お互いに助け合うことを繰り返し伝える

四;スタッフが変える際「お疲れ様でした」とは言わず、「ありがとうございました」と言うこのように普段心がけていることを改めてここに書き出すことにより、何でもない小さなことかですが、こういう考えがスタッフのみんなにも広まればいいなと思いました。

一日一語では10月12日の部分で夫婦の話ではありましたが、『相手に何かを求める依存人格ではなく、自らでそれを受け止めて行動していく自立人格になる』という風に藤井さんがコメントされたのを聞いて、さすが藤井さん!と思い大変共感しました。(柳井誠一)

 

写真 一日一語

■「人間の力」と「物の力」・経営の目的は利益追求ではない 青

Q:出光発展の原動力は何でしょうか

■「人間の力」

  • 一口で言えば「人間の力」だ。「物の世界」の力は金であったり、法律、機構、組織であったり、権力であったり、数・理論であったりするわけだ。「人の世界」の「人の力」はどういうことが一番いいかというと、個人個人が対立していると弱い、マイナスだ。だからみなが団結しているということが、ほんとうの「人の力」で、その「和の力」を出光が発揮しているということだ。86

■互譲互助・和

  • 度々言うが、日本は神、皇室が相手の立場、大衆の立場を理解して物事を行うこと言うことを身をもって教えておられる。互譲互助、お互いに譲ってお互いに助けるという根本的な精神がある。外国では対立闘争、権利の主張ということになる。日本では互譲互助があるから、相手の権利も主張も自分の権利も主張も容れられるわけで、それがつまり「和」なんだ。86

行き詰まり打破の鍵

  • 仲良く平和に暮らすということなんだ。そこに出来たものが日本の伝統、道徳、家族制度なんだ。現在ではこれらが悪く言われているが、行き詰まった世界の人々が探し求めているものが、実はこれなんだ。87

■金の奴隷になるな

  • 「人の世界」の和を実行している。出光には対立なんてない。別の側面から言えば、金の奴隷になるなとか、法律・規制・組織・権力の奴隷になるなとか、あるいは数・理論の奴隷になるなとか言っている。人間である以上、奴隷になってはいかん。87

■学問の奴隷になるな

  • 学問の奴隷になったら日本人はだめだ。卒業証書を捨てて、学問は一つの要素にすぎないというような考えで、人間として力をつけるために油の小売りからやって体験者となって、ほんとうの人間の力を発揮する。そうしてはじめて学問も生きてくる。学問の奴隷ではなく学問を活用できるような人になれ。87

■家族温情主義

  • 家族温情主義は日本の国体の現れである。出光は石油業は一つの手段であって、人間の真に働く姿を現すのが出光の真の目的だから、他人が出光の家族主義に共鳴して出光に入ってくることは、大切なことなんだ。従来の特約店とかを廃してどれが直営か他人の経営かわからないようにした。他人が出光の家族に入ってもこのように仲良くやれることを現している。日本の和の精神、家族制度が個人経営の特約販売店にまで進んでいる。89

 

■感想 家庭も会社も人間を深く理解することが一番大事だ  

柳井誠一;「人の世界」と「物の世界」では家族経営について改めて考えさせられ、『仲間を否定せず、信じ、協力すること』、『相手の足りない部分をお互いにカバーしながら進んでいく』といったことを感じました。『人』というのも会社経営における重要な「特異貢献」であり大切な存在なので、これからも人を大切にし、共に成長したいと感じました。

 

藤井高大;今月の皆さんの近況報告と一日一語の内容について、自分に関わる多くの「人」について考えさせられました。

  • いつも当たり前のように側にいてくれる親や妻、子供たちである家族との向き合い方を再確認し、もっともっと感謝しなければいけない、そしてまだまだできることはあるなと感じました。皆さんそれぞれに社員さんたちとの関わり合いに変化が生まれているのだと、去る人があってもまた新しい仲間と巡り合える流れに入っているのでしょうか。私も家族と同様に社員たちや周りの仲間たちとのかかわり方をもっと大切にしていこうと再確認しました。
  • 「人の世界」と「物の世界」では、「和」の精神や力について考えました。「和道経営」という思向は今まで学ばせていただいてきたので理解できますが、実際は緻密な実践と継続力が必要ではないかと感じています。
  • 弊社も以前は社内間であっても暗病反言葉が飛び交った時期もありましたが、「不平・不満・愚痴・文句・比較」等を辞めよう、相手に求めることを辞めて長所を見よう、助け合おう、励まし合おう、ということを皆と共有することを地道に言い続けてきました。振り返ると少しづつではありますが前に進んでいる実感があります。実はこれらのことも理念に組み込まれていることなので、社内にも浸透しつつあるのだと前向きにとらえていき深めていきたいと思います。

 

堀越道弘;理念実践会に参加する事で、「物の世界」の日常から「人の世界」へ引き戻されて、自分が軌道修正される感覚になります。

  • 思えば十数年前、代表になり今まで通りの仕事を続けていましたが、だんだん受注も減り、問い合わせの電話さえ鳴らず、明日する事が無いぞという事態になりました。全く仕事が無くなったのです。丁度その頃に体調も崩し、人生初めての入院となりました。運が無いというか、タイミングが悪く、久々に頂いた新築の話も、いつ退院するのかわからない人には頼めないとキャンセルになりました。結局二週間ほどで退院できましたが、一ヶ月は車の運転も出来ず、日常生活もままならない日々でした。
  • その後、養成塾シニアで学ぶ事になり、顧客の名簿も無く、マップも無く、お客様のフォローは何もしていなかった事に気づかされました。早速、白地図に先代が建てた家の目印を付けると、自社の近所に沢山広がっていました。

■お客さんに目を向けていなかった

  • 当時は仕事=新築という考え方でしたから、一度新築したならもう、そこの家には仕事はない、と思っていました。代表が変わりましたという挨拶も兼ねて顧客訪問をしましょうとなった時は正直、キツイなぁと思いました。何の用ですか?と言われるかと思っていました。ところが訪問してみると皆さんニコニコと対応して下さいました。「ウチなんか忘れられたと思っていたよ」「お父さんは元気ですか?」先代が真面目に家造りをしてきた事がわかりましたし、お客様が周囲に沢山いた事に気がつきました。
  • 自分の都合だけ考えて、仕事が無いと嘆いていたのでした。こちらで勝手にお客様とのつながりを断ち切っていたのでした。お客様がなにを望んで、どんな事を考えているのか、お客様の立場になってみようとは考えていませんでした。家は建ててからが始まりでした。

■出光佐三の姿勢

  • 消費者の事を第一に考える出光佐三氏の、石油カルテルや政府とも闘い、困難な課題にも挑戦する姿。自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、世のため人のために事をなす。日本人が古くから大切にしてきた互譲互助の精神。出来れば、難しい事は避けて楽な方に進みたい。かしこく上手に生きる事をよしとする現代人に、日本人にかえれと説いています。それが「人の世界」ですね。
  • 人間が真に働く姿を現して、国家、社会に示唆を与えるまでは出来ませんが、住まいの困りごとを解決し、暮らしやすくするお手伝いが出来ればと思います。そして何より、理念にそって、常に知り行う、知り行う、の積み重ね、「知行合一」を続けて行く事が大切だと思います。