脳力開発179号/理念の時代に生きる179号

脳力開発179号 方針・日本のために貢献しているのか

 その一 朝日新聞政治部・吉田証言取り消しまで

 朝日新聞政治部著者鮫島浩氏は吉田調書問題当時のデスクだった人である。本の帯びに崩壊する大新聞の中枢「池上コラム掲載拒否」「吉田調書問題」「慰安婦記事取り消し」そして「経営陣はどこで何を間違えたのか?」と書かれている。すべて実名で綴る内部告発ノンフィクション。保身、裏切り、隠蔽  巨大メディアの闇と。

帯びに引きつづき以下のように書いている。そうか、朝日新聞はこれに屈したのだ。ネツトの世界からの攻撃に太刀打ちできず、ただひたすらに殴られ続け「捏造」のレッテルを貼られた

折り返しにこう書いている。若宮啓文政治部長が私達駆け出し記者に投げかけた訓示は衝撃的だった。「君たちね、せっかく政治部に来たのだから、権力とシッカリ付き合いなさい」

 

■若宮啓文は朝日の主筆として権勢を誇った。以下ウイキュペディアより

  • 2011年主筆、著書「新聞記者 現代史を記録する」において、従軍慰安婦問題について、「朝日新聞もこれを熱心に報じた時期があった。中には力ずくの『慰安婦狩り』を実際に行ったという日本の元軍人の話を信じて、確認のとれぬまま記事にするような勇み足もあった」とし、従軍慰安婦問題に関する朝日新聞のキャンペーンに根拠がないことを暴露した
  • 2013年1月16日、65歳になり朝日新聞社を退社、朝日新聞主筆を退任。1月30日、韓国の東西大学は若宮を「碩座教授」に任命。2016年4月27日に北京で、体調不良を訴え、翌28日に滞在していたホテルの浴室で死亡していた。68歳没。7月29日、「知韓派」のジャーナリストとして日韓関係の発展に貢献したとして、韓国政府から修交勲章興仁章が授与された。

 

鮫島氏の著書から本のポイントを抜粋しながら朝日新聞の断面・深層を改めて見なおす。

■吉田調書入手・吉田調書取材班を結成

  • 吉田調書は2014年2月経済部の木村記者が入手、特別報道部の市川誠一部長に呼び出され経済部の宮崎記者と三人で吉田調書取材班を結成。木村・宮崎記者は朝日新聞の記者に不信感を抱いていた。二人の不信感は東電や経済産業省に近い編集局幹部や特別報道部の同僚にも向けられていた。5月20日吉田調書入手の第一報掲載。関係者は両記者に二人が指名した堀内記者と私(鮫島)4名のみ。A4×400Pの資料。P203

■待機命令に反して9割が離脱

  • 2014年5月20日長官一面と二面に掲載。東京電力第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)を朝日新聞は入手した。それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日の朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反して、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せていた。P216

■第一報翌日の社内一斉メール

  • 朝日新聞編集局長室第一報翌日にだした社内一斉メールで以下の内容が流された。21日朝日新聞特別報道取材部とデジタル編集部の取材・制作チームによる「吉田調書」の特報に対して編集担当賞とデジタル担当賞が贈られることが決まりました。朝日新聞社内は称賛の声に包まれた。市川誠一報道部長は「木村社長が大喜びしているぞ。社長賞を出す。今年の新聞協会賞も間違いないと興奮している」と声を弾ませていた。p224

■朝日新聞独走・異論を封殺

  • 2014年5月は朝日新聞社内の権力移行が「木村独裁」が完成しつつある時期だった。第二報は続報をデスク達で議論し当番編集長の原真人さんは新聞の「アタマ」にするか「カタ」にするかで下した「カタ」にする結論を、渡辺編集局長が「いや、きょうはアタマにしてほしい。朝日新聞の決意を示す時だ」と決定を覆した。
  • 特別報道部や私の発言力も増して、それと引き換えに報道に異論を唱える声も影を潜め、不満や反発が水面下に蓄積した。それでも第一報に対し「待機命令を知らずに第二原発に向かった所員もいたと思う。早めに軌道修正した方がいい」と懸念を伝える記者はいた。マスコミ各社は調書が入手できず、朝日新聞の「独走」を静観していた。P231-232

■新聞協会賞に申請を目指す

  • 6月時点で吉田調書報道に向けられた批判に勢いはなかった。新聞協会賞に申請することを優先し、それに水をさす紙面展開を避けた。その間にネットメディアや週刊誌を中心に「命令違反と言えるのか」「誤報ではないか」と言う批判がじわじわ広がり始めた。朝日新聞はそれらの報道に抗議を繰り返し、7月3日「吉田調書」報道を新聞協会賞に申請した。p234

■「慰安婦問題を考える」

  • 8月5日特集記事「慰安婦問題を考える」を掲載したことで猛烈なバッシングの嵐が吹き荒れた。戦時中慰安婦を強制連行したとする「吉田清治」の記事を虚偽と判断し過去の記事16本を取り消した。訂正までに20ー30年かかったことや謝罪の言葉がないことへの批判が殺到した。「吉田証言」の信憑性を疑う指摘は1990年代からなされた。しかし会社上層部はこの問題を自ら、蒸し返すことをずるずる先延ばしにしてきた。P237

■産経・他社の反撃

  • 8月18日「吉田調書」報道に産経新聞が他社に先駆け「吉田調書」を手に入れ報道を開始した。

8月25日の記者会見で菅義偉官房長官が吉田調書の公表を発表した。読売や毎日も朝日に批判的な立場で吉田調書の報道を始めた。P240

■池上彰原稿に木村社長激怒

  • 8月27日の会議で「吉田証言」「吉田調書」を巡る朝日バッシングに対して断固戦う方針を決定した。直後池上彰氏の8月29日掲載予定の「池上彰の新聞ななめ読み」に慰安婦問題を巡る「吉田証言」の取り消しは遅きに失したと批判する原稿に、ゲラを見た木村社長が激怒しコラム掲載を拒否した。朝日新聞は世間から猛烈な批判を浴び立ち往生した。経営陣は総崩れ状態になった。P242

■命令違反で撤退の記事取り消し

  • 9月11日夜木村社長は朝日新聞本社で緊急記者会見に臨んだ。「吉田調書を読み解く過程で評価を誤り「命令違反で撤退」という表現を使った結果、多くの東電社員にその場から逃げ出したかのような印象を与える、間違った記事と判断しました。「命令違反で撤退」の表現を取り消すと共に読者及び東電の皆様に深くお詫び申し上げます」と頭を下げた。その上で退任を示唆し、この機会に慰安婦報道についても訂正が遅きに失したことを謝罪した。P248

■バッシングの嵐と記者処分

  • 吉田調書を独自入手した木村・、宮崎記者は「捏造記者」のレッテルを貼られデスクを務めた私もバッシングを受けた。木村社長が正式に辞任する年末まで続いた。「公開処刑」のようであつた。実際に「慰安婦」「池上コラム」の失敗は「吉田調書」へのバッシングで希薄された。P256

■渡辺新社長就任

  • 懲戒処分は2014年12月5日付けだった。木村・宮崎記者は減給、私は記者職を解かれた。翌朝の紙面には「朝日新聞社は変わります。私が社員の先頭に立って必ず変えます」と大阪社会部渡辺新社長の言葉が載った。P262

■渡辺社長退任

  • 2009年まで800万部あった発行部数は渡辺社長が就任した時点で700万部。そのご「朝日離れ」は加速し3年間で100万部のペースで激減、在任6年で500万部を割り込んだ。2021年3月連結決算で442億の赤字に転落引責辞任に追い込まれた。P286

■自分は自立していないサラリーマン

  • 2021年5月31日退社。吉田調書で処分を受けた時、自分自身がサラリーマンであることを思い知ったサラリーマンとジャーナリストであることは相容れないかも知れない。吉田調書でデスクを解任された時、一人記者会見をして全てを暴露してやめようと思った。でも会社に依存している自分の非力さを痛感して踏み切れなかった。その後早期退職募集に応じてやめた。p296

 

★朝日の体質が見事に描かれている。自浄装置のない経営陣の独断を指摘している。朝日新聞政治部こそ朝日の体質そのものと言ってよい。この事はGHQの言論統制以後権力に歯向かうと言う美名に隠れ、日本という国家に対し足を引っ張り続けてきた。慰安婦問題の捏造、吉田調書の誤報、池上問題で木村社長は記事を取り消した。これ以外にも朝日新聞の虚偽は沢山ある。若宮主筆はもとより誤報と知りながら唯々諾々としらを切り続ける体質だ

★日本国民は慰安婦問題を通じて日本を貶める朝日の姿勢を苦々しく思っていた。公器と言われる新聞メディアが政府の足を引っ張ることに専念してきた。吉田調書で責任を問われた記者とデスク、その時々の朝日新聞の組織を描いているが、自分はサラリーマンであったと自戒して退社する。組織に安住する「社蓄」に過ぎないことを自覚する。

★朝日新聞は今でも権力に立ち向かうとポーズを取りながら、安倍元総理に対しても野党ともども問題を矮小化し批判だけしてきた。国のために役立と言う、気概は微塵も感じられない。帯びに書いているように歴代の編集部主筆も自分の個人的保身に汲々として韓国におもねている。恥を知れと言いたい。

★虚偽報道に対して、朝日新聞は謝罪せず、記事の取消のみを2014年8月に行った。

 

理念の時代に生きる179号・「安倍晋三 時代に挑む」

★先月7月6日理念実践会に第一次・第二次安倍政権で内閣広報官を務め、総理補佐官として首脳外交から様々な課題に向き合った長谷川栄一氏の「首相官邸の2800日」を取り上げた。そして今月安倍総理の最新著書「安倍晋三 時代に挑む」を指定し、参加者にアマゾンから送付した。

★二日後、安倍元総理が銃撃され死亡された。2022年7月8日奈良の選挙演説の際に。思いもよらない事実として私達の眼前に起きた。

★森信三先生は「我が身に降りかかることは全て絶対必然即絶対最善」と言われる。私達にとって安倍総理の突然の死は何を意味するか、掲題の著書を通じて安倍政権の取り組み解決した日本の課題を理念実践会の皆さんと振り返って見た。

 

序章「天は自ら助くる者を助く」ウクライナの教訓とは 国家安全保障局 北村 滋

ロシアが仕掛ける「ハイブリット戦」と「情報戦」の帰趨(きすう)

  • 北村 クリミア併合(2014年)に際して、ロシア軍は、火力を主体とする軍事作戦とサイバー攻撃など非軍事的な工作とを組み合わせた「ハイブリット戦」を展開しました。電子戦部隊を展開してウクライナ軍の無線通信を遮断し使用不能にした。
  • 北村 ロシアは事前のサイバー攻撃で、ウクライナ軍の指揮命令の方法などの情報を入手。偽の指令の下に集まったウクライナ兵は、ロシア軍から集中砲火を受けて壊滅に追い込まれた。約一万五千人からなるロシア軍が、約五万人のウクライナ軍を圧倒したのです。p16
  • 安倍 情報戦は「情報収集」と「情報発信」の両面からなります。北村さんは情報収集について指摘されましたが、情報発信についてもウクライナ優勢が続いている。ツイッターやユーチューブを通じて、リアルタイムで現地の映像が世界中に拡散される。SNSを駆使するゼレンスキー大統領の発信力と相まってロシアを圧倒しています。p18

「NATOに入れない」ならフィンランド化

  • 北村 安倍総理は、プーチン大統領と二十七回の会談を重ねられました。プーチン大統領は、どのような価値観の持ち主なのでしょうか。
  • 安倍 彼は「力の信奉者」です。二〇一三年のG8首脳サミットでは、シリア内戦がテーマになった。ロシア以外の七ヵ国はアサド政権を退陣に追い込むべきだと主張しましたが、プーチン大統領は「この地域は力が支配する世界だから、後継者を決めないと大変なことになる」と反論。p19
  • 安倍 プーチン大統領と対話するなかで、我々とは異なる価値観を持つ指導者だと感じましたが、今回のような無謀な戦いに突き進むとは思いもよりませんでした。ウクライナ侵攻における彼の戦略を読み解くのは難しいものの、「選択肢はすべてテーブルの上にある」という姿勢で交渉すべきだったのかもしれません。p19

今日のウクライナは明日の台湾

  • 北村 習主席は、台湾統一に並々ならぬ意欲を燃やしています。二〇二一年七月、中国共産党創設百年を祝う式典で、「祖国の完全統一を実現することは党の歴史的任務」と語り、「あらゆる『台湾独立』のたくらみを断固として粉砕し、国家主権と領土を守り抜くという中国人民の揺るぎない決意を甘く見てはいけない」と述べている。p21
  • 安倍 ところが、軍事力で圧倒するロシアがウクライナを攻めあぐねている。中国といえども、台湾を武力統一するのは容易でないと認識したはずです。p21

共通点(同盟国なし)と相違点(台湾は国連加盟国ではない)                   

  • 安倍 米国はこれまで、台湾政策で曖昧戦略をとってきました。中国が台湾に侵攻したとき、軍事介入するかどうかを明言していません。「米国が軍事介入するかもしれない」と思わせて中国を牽制する一方、台湾の独立派には「米国が軍事介入しないかもしれない」と思わせて暴走を防いできた。ところが現在、曖昧戦略は、中国に米国の意思を見誤らせる危険を孕(はら)んでいます。米国は、台湾防衛の意思を明確にすべきです。p24

中国が狙う世界秩序「変革」の危険性

  • 北村 一〇%近い内閣支持率を犠牲にして成立させた平和安全法制によって、集団的自衛権が一部容認されることになりました。他国と情報共有する上で欠かせない特定秘密保護法と合わせて、日本が「普通の国」に近づいた。p28
  • 北村 中国企業が世界のインフラ投資に参入して、経済成長に不可欠な資源を確保するとともに、世界中に軍事拠点をつくる。それが「一帯一路」です。カンボジアやミャンマーなどの東アジア、スリランカやパキスタンといった南アジアでは、中国が戦略拠点をすでに確保している。p28

 

第二章 台湾侵攻は「中国の自殺」と悟らせよう   桜井よしこ

「台湾有事は日本の有事」の真意とは

  • 安倍 台湾本島から与那国島は百十キロ、尖閣諸島は百七十キロしか離れていません。台湾へ

の武力侵攻は、同時に日本の領土を脅かす行為でもある。だからこそ、台湾有事は日本の有事、

そして日米同盟の有事でもあると述べました。p65

  • 安倍 台湾がTPPに参加すれば、日本の経済・安全保障における戦略空間はさらに拡大する。

TPPはルールにもとづく国際秩序を維持・強化していくための枠組みであり、台湾は参加資格を十

二分に備えています。p67

「価値観外交」は勝つ!

  • 安倍 第一次安倍政権では「価値観外交」という形で打ち出していました。当時から日米豪印の

四カ国が協力して地域の平和と安定を守るべきだと主張していたのです。p69

  • 安倍 中国による一方的な現状変更の試みが明らかになるなかで、各国の中国に対する見方が

変わってきました。そして、菅政権下では、史上初の四カ国首脳会談が実現。日米豪印からなるク

アッド」という略称も広く知られるようになった。p70

「国際ルール」を守らせよう。

  • 櫻井 クアッド以外にも、TPPイレブンや日欧EPA(経済連携協定)など世界政治の軸となる枠組

みは、およそすべて安倍総理が主導しました。注目すべきは欧州の動きです。これまで中国の軍

拡や人権問題にさほど関心を持っていなかった欧州の態度が、急速に変わりつつある。p71

  • 櫻井 中国は一路一帯やAIIB(アジアインフラ投資銀行)を利用して、米欧の分断を狙いました。

中国と敵対するトランプ政権とEU諸国にくさびを打とうとしたわけです。p71

  • 安倍 日米が共有する価値観を具体的なルールに落とし込み、積極的に提案することが重要で

す。自由主義陣営が主導するルールの枠内に入れてしまえば、中国といえども従わざるを得ませ

ん。中国はWTOに加盟して以降、急速な経済成長を遂げました。国際ルールを守ったほうが利

益になるということを、中国は理解しているはずです。p72

 

第4章 コロナ禍だからこそ改憲議論を進めよう   弘兼憲史

「清廉潔白なれど無能な政治家」とは誰?

  • 安倍 政権時代、二十代と三十代の自民党支持は岩盤のように固かった。全体の支持率が落ちても、若年層の支持率はさほど変わりませんでした。アベノミクスで雇用が回復して経済的恩恵を受けたこともあるでしょうが、テレビを見ずにネットで広く世界を見ていることも大きいと思います。P113

法学部の学生時代に気づいた「九条」の矛盾

  • 弘兼 私は1966年に早稲田大学に入学しました。そこで教わった憲法の“矛盾”が原点です。九条には「戦力を保持しない」とかいてあるにもかかわらず、日本には戦車や戦闘機を持った「自衛隊」という組織が存在する。P114
  • 弘兼 全共闘世代なので、教授を含めて9割が左翼思想に染まっていた印象です。特に法学部は共産党シンパの教授がズラリと並び、授業内容も偏っていました。とはいえ、左翼学生のうち学生運動に参加していたのは1割程度。信念をもって活動していたのは10分の1ほどです。P115

「平和安保制」の整備が日米同盟強化につながった

  • 安倍 父の秘書官だった頃、私は岡崎久彦さん(外務省情報調査局長、駐タイ大使などを歴任)から「集団的自衛権の行使で解釈変更に踏み切らない限り、日米同盟は危うくなる」と聞き、その通りだと考えていました。P117
  • 安倍 トランプ大統領から「日本が北朝鮮から爆撃されたら、米軍は日本のために戦う。でも、米軍が攻撃されても日本は助けてくれない」と言われた。即座に「だからこそ内閣支持率を十数%落としてまで平和安全法制をつくった」と反論しました。トランプ大統領は「素晴らしい」と。もし平和安全法制がなかったら米国内で日米同盟を見直そうという議論が巻き起こっていたかもしれません。P117
  • 安倍 今となっては、平和安全法制を破棄すべきだという声はほとんど耳にしません。平時であっても自衛隊が米軍の戦艦や航空機を防護できるようになり、日米共同演習の回数は格段に増加。結果として、同盟の絆がより一層強くなったことは明らかです。P118

「第一列島線」を守り抜く

  • 安倍 異常なスピードで拡張する中国に対し、安倍政権は尖閣を守り抜く確固たる決意を示しま

した。 防衛最前線は欧州で、それを支えていたのは北太平洋条約機構(NATO)でした。現在のフロントラインはインド太平洋、沖縄からフィリピンを結ぶ「第一列島線」。それを守り抜くのが日米同盟の使命です。P122

  • 安倍 オバマ政権は尖閣に日米安保五条が適用されると明言し、それはトランプ政権、バイデン政権にも継承されています。しかし、自国の領土を自らの手で守るというのが大前提です。P123

台湾有事のシナリオ

  • 安倍 台湾は特殊な歴史的背景と地理的条件のもとに置かれた日本の友人であり、自由・民主主義・人権という普遍的価値観を重んじる同志でもある。台湾が変質するようなことがあれば、我が国の安全保障にとって重台な懸念材料になります。P123
  • 安倍 ニクソン訪中以来、米国は台湾政策で「戦略的曖昧」を貫いてきました。「米国が介入する可能性」をほのめかすことで中国を牽制し、「米国が介入しない可能性」があることで台湾は慎重に行動する。ところが最近、米国の中国専門家から「戦略的曖昧」の危険性が指摘されるようになりました。米国が明確に介入の意志を示さなければ、台湾に侵略するのではないかと危惧している。P124
  • 安倍 日本も、新しい戦争の形というものを考える必要があります。防衛の最前線がサイバーや宇宙、電磁波の世界になった現代において、専守防衛かという線引きは難しい。政府のサイバーセキュリティ戦略本部では、中国やロシアなどの関与が疑われるサイバー攻撃を念頭に、自衛隊のサイバー関連部隊を強化する方針が示されています。P125

コロナ禍の今だからこそ改憲議論を進めるべき

  • 安倍 私はかねて、憲法改正の必要性を訴えてきました。その理由は三つあります。まず、憲法の成立過程に問題があるということ。GHQ占領下でつくられたことは事実です。二つ目は、成立から七十年以上が経過し、時代にそぐわない部分があること。三つ目は、国民投票を実施し、自らの手で憲法を変えることが新しい時代を切り拓く精神につながるということ。P128

 

第五章 「危機の時代」にこそ読まれるべき名著  百田尚樹

命の大切を伝えたい

  • 安倍 百田さんが書かれる小説のテーマには、「他者の為に自分の人生を捧げる」という事があるのではないでしょうか。
  • 百田 おっしゃる通りです。長い間、日本人はそういう生き方をしてきたと民族だと思っていますし、今もすべての日本人の心の底に眠っています。そういう生き方を思い出し、命の大切さを伝えたいと常に思っています。P136

「永遠の0」に学んだこと

  • 安倍 指揮官による判断と決断の誤りによって多くの人々が命を失うことになり、国家の命運を危ぶむ事にも繋がりかねない。私も国の判断を下す立場に立っており、「永遠の0」を読むと改めて指揮官の重要性を感じます。

「右傾化小説」という批判

  • 百田 「永遠の0」と「海賊と呼ばれた男」は右傾化小説と朝日新聞に書かれました。それに早速、韓国が飛びついて「日本、安倍政権で文化も右傾化」と嬉々として書いています。戦後、焼け野原になった日本を懸命に立て直した経営者の物語がなぜ「右傾化小説」と呼ばれなければならないのか。まあ、朝日新聞は「竹島は韓国に譲れ」と言っていた主筆の若宮啓文が退職した途端に韓国の大学教授になれる会社ですからね。P143

他人のために生きた世代

  • 百田 大正生まれの人たちは「他人のために生きた世代」だという事です。地獄の戦場を生き抜いて、何もない祖国を立て直す為に懸命に働き、経済成長を成し遂げたのも大正世代なのです。昭和三十九年には新幹線を開通させ、東京オリンピックも成功させた。彼らがいたから私たちの世代が成り立っていると思います。P146

資料を読んでいて体が震えるような衝撃を覚えた

  • 百田 敗戦のわずか二日後に社員たちに「我が社には最大の資産である人が残っとるじゃないか」「愚痴をやめよ」「ただちに建設にかかれ」と号令するのです。出光佐三さんのこのくだりを見つけた時、衝撃を覚えました。

出光佐三は、戦後忘れ去られた経営者だった

  • 安倍 出光さんのやられた経営は日本的経営の典型であり、グローバルにも成功を収めている。このエッセンスをどうにか現在にもうまく活かすことができないかなと思います。

 

■各国首脳「追悼の言葉」

バイデン大統領「民主主義という仕事に身を投じた」、トランプ前大統領「彼のような人は二度と現れない」、ペンス前副大統領、オバマ元大統領「安倍元総理の優しさ」、ジョンソン前首相「未曾有の時代に発揮したリーダーシップ」、ショルツドイツ首相「ドイツは日本の傍に」、メルケル前首相「一緒に仕事をするのが楽しみでした」、マクロン大統領「世界の秩序のために取り組んできた首相」、蔡英文「台湾と日本に多くの花を」、ゼレンスキー大統領「残酷で恐ろしいニュース」、習近平「中日関係を構築してきた」、トルドー首相「献身的で先見性のあるリーダー」、ボルソナー大統領「三日間の藻に服す」、モディ首相「親愛なる友人、安倍さん」、モリソン前首相「歴史の架け橋となる能力があった」、インドネシア大統領「常に忘れることはない」、ライエン欧州委員長「多国間世界秩序の擁護者」他。

 

★朝日新聞は7月15日の紙面で「学者数人に国葬への賛否を述べさせ、元首相の政治姿勢、

政策には「支持できないと言う批判が根強くある」「外交的成果は思ったほどなく、仕事ぶりに不

満がある」「国論を分裂させる国葬をわざわざやる必要はない」と述べている。

 

国葬儀を積極的な外交の場に  日本財団笹川洋平氏 安倍レガシーを弔問外交に