脳力開発178号思考方法・両面思考・多角度思考
■安倍総理の死について
参議院選挙前7月8日に安倍総理が亡くなられた。痛恨の極みだ。10日の選挙は自民党は圧勝した。立憲共産党(麻生さんのギャグ)を始め、維新以外は選挙前から票を減らした。公明党も減らした。結構なことだ。個人的には京都で立憲民主党幹事長福山が落選してくれたらどんなにか溜飲の下がったことか。
■国葬の問題が起こってきた。そこに旧統一協会の問題を持ち出している。メディアは国葬の決定に騒いでいるが、日本人の変化を立憲共産党は自覚しているのだろうか。
世界の国々から安倍元総理を悼む声が続々届いている現実を見て、安倍元総理の総理として日本という国を世界の人々に伝え信頼されてきたのかを、やっと日本人も理解しだした。
今月号で後の原稿で首相官邸の2800日を取り上げているが、ここでは世界の評価と朝日に毒された、もはや間もなく消滅する高齢者旧リベラルの実態を記しておきたい。
■それでも反アベ…偏狭なる日本メディア 八木秀次 引用記事
- 亡くなった安倍晋三元首相を惜しむ声が海外で絶えない。あの痛ましい銃撃事件の直後、米バイデン大統領は「世界にとっての損失」と述べ、インドのモディ首相は「世界的な政治家であり、卓越したリーダーだった」と述べた。米国、インド、ブラジル、台湾などは国としての服喪や公的機関での半旗掲揚を行った(日本は遅れて首相官邸で半旗を掲げた)。
- 海外メディアでは安倍氏が首相に就任した当初、「歴史修正主義者」などと呼び、ナチスのように危険視する傾向もあったが、いまやそんな論調はどこにもない。むしろ、安倍氏のビジョンや政策に深い理解を示している。
- 米紙ニューヨーク・タイムズは9日付で安倍氏の伝記も書いた政治評論家のトバイアス・ハリス氏のオピニオンを掲載した。安倍氏を「物事を小さく考えて満足する政治家ではなかった」と評価し、中国の覇権拡大や北朝鮮の核開発などを念頭に「彼は日本が国家間の激しい競争にさらされていると捉え、政治家の使命は何よりまず、国民の安全と繁栄を確保することだと信じていた」と称えた。
- 実際、安倍氏は日本が同盟国の軍隊を支援できるよう集団的自衛権の限定的な行使を可能にし、長期に及ぶ日本経済の停滞を解消するために「アベノミクス」を進めた。この「より強い日本国家」という安倍氏のビジョンには日本国内でも反対があったが、ロシアのウクライナ侵攻などで、正しかったことが証明された。
ハリス氏は「安倍氏が亡くなった今、日本人はようやく彼のビジョンに賛同するようになっているかもしれない」「危険な世界で国を守ることができる『強い国家』という彼のビジョンを国民が理解し始めたかもしれない矢先に逝った」と書いている。
- 安倍氏をかつて危険視していた米紙ワシントン・ポストも12日付で「安倍氏のレガシーを称える」と題する社説を掲載した。与党が大勝した参院選の結果は「憲法を改正して軍隊の合法性を明確にする安倍氏の目標を前進させる」とし、「米国や他の民主主義国は、日本の民主的な軍事力の正当化を支持すべだ」と書いた。そして「安倍氏はいなくなった。彼が日本と世界に与えた影響を忘れてはならない」と結んでいる。
■海外メディアは高く評価するのに、なぜ?
- 今や「世界における日本の地位を塗り替えた」(米誌タイム15日発売号)と評される安倍氏の「自由で開かれたインド太平洋」構想は、彼が第1次政権時の2007年にインド国会の演説で原型を発表したものだが、「当時は、世界の多くの識者は彼が挑発的で危険だと考えていた」と元米国家安全保障会議アジア上級部長のマイケル・グリーン氏は振り返っている(朝日新聞10日付)。
- 当時の国際社会には中国の覇権への警戒心がなく、その脅威を認識していた安倍氏は逆に危険視された。安倍氏のビジョンは先見的で、安倍氏の見ている現実を理解できない者には危険に映ったのだが、今やそれが間違っていたことを国際社会も認めている。日本国民の多くも安倍氏が何を目指したのか、やっと「理解し始めた」。
■朝日川柳 西木空人選 2022年7月16日 引用
- 疑惑あった人が国葬そんな国 (福岡県 吉原鐵志)
- 利用され迷惑してる「民主主義」 (三重県 毎熊伊佐男)
- 死してなお税金使う野辺送り (埼玉県 田中完児)
- ☆忖度(そんたく)はどこまで続く あの世まで (東京都 佐藤弘泰)
- 国葬って国がお仕舞(しま)いっていうことか (三重県 石川進)
- 動機聞きゃテロじゃ無かったらしいです (神奈川県 朝広三猫子)
- ああ怖いこうして歴史は作られる (福岡県 伊佐孝夫)
★朝日が思考停止したかつてのリベラルもどきの人達を使って、いつものお決まりの手で安倍総理や自民党(保守は少ない)を批判している。批評眼は大いに持つべし。されど批判的態度は厳に慎むべし。(森晋三。一日一語7月22日)
理念の時代を生きる178号
その一、後輩を育てた和環塾塾長・南後浩氏
- 南後浩氏がなくなられた。MGゲ-ムの創始者西順一郎先生と同い年の生まれだ。84歳。私達が企業に勤めたころ中小企業の経営者やサラーマンだった30代か40代の世代の東京を中心にMGマネージメントを核にして、脳力開発、MTマイツールを学んでいる人達が中心になって東京で勉強会を始めた。その後、大和信春先生と和道経営を学んだ。勉強会の名前を和環塾と命名した。勉強会だった。理念は①天命追及②人格向上③平和貢献
人は亡くなる
- 数年前癌を患われ手術をされた、その後の抗がん剤等の治療で、いよいよ車椅子を使われるようになった。同じ頃この会の最長年齢であった勘場治氏も癌に見舞われた。勘場さんは2年ほど前に亡くなられた。南後塾長の6歳上で私とは干支で言えば一回り上だった。この会を立ち上げたのが一九八七年だった。あれから35年経った。
- こうして私の先輩が逝去される報に接してあらためて人間は産まれ、そして何れは亡くなると言う定理を確認することになる。私も何れ人生を終わる日を迎えることになる。南後さんの逝去に伴い、和環塾のメンバーの南後塾長への思いはそれぞれ一入だ。少し振り返ってみた。
和環塾・南後塾長との邂逅
お会いしたのは一九八五年頃、八重洲の藤和不動産のホールだった。東京で太極拳の講習の席でした。会場は振りかえると南後さんの会社の確か6階の会議室だった。また、MG/MTに熱心に取組まれていた。
その後、私は広島に転勤になった。広島でも後に非常に親しくなる井辻食産の井辻栄輔氏とYMCAの責任者の梶原宣俊氏と交流が拡がり、数年後MGを中心とした全国からの広島見学会を開催し、その後、南後さんが広島に出張のされた時、私に声を掛けて下さいました。
その夜、食事しながらKJ法の川喜田先生の話、脳力開発の城野先生の話、MGの話と切れることなく続くのです。大企業の専務で、子会社の社長をなさっている南後さんが「社員の全員の活性化」に真摯に取り組んでいる姿に驚きました。こんな人も大企業にいるのかと驚いたものだ。
競合他社に勝ち、自社の利益を最優先課題として掲げる経団連や経営合理化協会の類の主流の勉強会から一線を画した私達の勉強会に「何故情熱を燃やして取り組まれるのか?」と、不思議、でした。翌朝、善子とともに広島全日空ホテルを訪ね午前中のフリーな時間に、「ひろしま美術館」を案内しました。「絵画」にも関心が深く「あぁ、こういう人と一緒になにかをしたい」と強く思いました。
和環塾の仲間との邂逅
数年後に広島から再度転勤で帰って来た東京で、和環塾をつくるきっかけになったのです。転勤後一九八七年九月十二日、西順一郎先生が熱海赤根崎で「黒田脳力開発セミナー」を開催して下さり、後に和環塾の主要メンバーになる人達にお会いすることができたのです。この和環塾のメンバー達と、MG、脳力開発、MTを中心に相互の企業の活性化をねらいとして活動をしていました。そして大和信春先生の「和の実学」の出版決定に立ち会ったのをきっかけに「和の実学」の勉強会を開始しました。理念と和道経営を。
和道の体得と伝播
合宿や講演会などあらゆる方法で「和道」の勉強会をやりました。毎月一度の大和先生を囲む定例会も開催し、「和道」の勉強会を重ねたのです。一方、脳力開発を開催している全国各地に私と同行して大和先生に特別講師として和道の骨子を伝えて貰いました。たどり着いたのがIST情報統合技術であり、IATであり「企業理念」でした。従来のパラダイムである「覇道社会」から「和道社会」への転換を具体的に図ろうとする訳です。大和先生を中核に「新時代シンポジュウム」を何年も続けました南後塾長の行動力は私たちを心の底から振るい立たせてくれました。口では綺麗事を言って実際に行動しない人達の多い社会のなかで、トップとして挑戦する姿勢に頭が下がりました。
NEXT WORKS
私が創業したのが丁度50歳でした。理念を制定した上での創業でした。メンバーの多くは元々中小企業の経営者か二代目でしたので、殆どの人がその後が自立したことになります。南後さんも企業の役員をやめられてからNEXT WORKS を立ち上げ経営指導されてきました。
勉強仲間の末松清一氏が主宰される中小企業の経営者や後継者、若手幹部を対象として、プロ経営者の育成を目的に経営進化塾のお手伝いをされていました。その他広い人脈を駆使され各地の経営コンサルタントをされていた。沢山の若い人たちを育てて下さいました。35年間の歴史は私達にも様々な経験を積ませてくれ、そのまとめ役だった南後塾長の逝去は私達の人生と重なっています。
その二、久世さんの子供たちその後
三女あも氏レティエの経営
訪問記を書いてから10年経ちました。三女あも氏は数年前再婚した。ご主人は田中真生氏、今回お腹には二番目の子を抱えている。ご主人は昨年から牧場を経営している。二〇二一年四月新規就農の道を選んだ。
ご主人田中真生氏
今回は牧場経営の傍ら牛乳公社の責任者を引き受けている。友人鈴木さんも巻き込んで新製品を企画、ソフトクリームを提供している。昼食にピザとノン・ホモ牛乳を頂いた。ピザパイは旧来の物より全く生地から変わっていた。写真
レティエの経営はあもさんがやっている。妊娠したことから知り合いのパン屋さんに生地をつくって貰い、とことん注文をつけ「素晴らしい」ピザとして仕上げている。価格は千円、私も価格設定が低いと評価した。友人たちも異口同音に評価は高いが、彼女は価格を変えない。彼女の情報網は父上の活動や独自のネットワークで広い。八月の出産後次ぎなる構想もあるらしい。
ノンホモ牛乳
ノンホモ牛乳は圧力を掛けないで脂肪球を粉砕し均質化しないでそのまま使う。一般的にはホモ牛乳が世間では流通している。田中氏はここにチャレンジしている。現物をみて味わって見ると二度味わえる。現地での楽しみだ。この店を昨年働いていた池田樹亜君が今年も手伝っていた。 田中氏はチーズづくりにもチャレンジしている。久世さんがいう産業の六次化を実践しょうとしている。来年が楽しみだ。田中さん三十五歳。
六次産業
第一次産業(農業等) 第二次産業(製造・加工)第三次産業(外食・サービス・販売)之バランスだ。いま第三次産業が増えている。このバランスは換言すればこの世界情勢もみても第一次産業が大事で、農業はその根幹をなす。しかしいま酪農もコロナ以後離農が進んでいる。酪農も厳しい時代に直面している。
西崎司・歩夫妻
彼女は結婚後すぐには子宝に恵まれなかった。三年前ご主人の独立を機に子宝に恵まれ今は二人の子供を育てている。今回、削蹄業を営む西崎司氏は自宅と会社事務所、削蹄用大型車両も備えメンバーも二人増えて大幅に仕事の領域を広げている。仕事場も市内のパチンコ屋の駐車場を手に入れ便利のいい環境と仕事への態勢づくりを整えていた。司さん四十歳。
久世さんの住む豊富に通いだしたころは、二人でバンドを愉しんでいた。当時歩さんはチーズづくりを、あもさんがレティエの喫茶部を担当していた。今は社員二人を抱えた司さんをシッカリ支え、二人の子供を育てている。
今回の旅で、久世さん子供たちの自立度の高さと進展に感動した。若い人たちが成長する姿よその子供たちの誕生と成長に喜びを感じた旅でした。久世さんは孫に囲まれ、自給の村でおお忙しだ。
その三、理念実践会・「首相官邸の2800日」
★7月6日理念実践会に第一次・第二次安倍政権で内閣広報官を務め、総理補佐官として首脳外交から様々な課題に向き合った長谷川栄一氏の「首相官邸の2800日」を取り上げた。そして来月安倍総理の最新著書「安倍晋三 時代に挑む」を指定し、参加者にアマゾンから送付した。13名の人達に。
★その二日後、安倍元総理が銃撃され死亡された。2022年7月8日奈良の選挙演説の際に。思いもよらない事実として私達の眼前に起きた。
★偶然かどうか解らない。森信三先生は「我が身に降りかかることは全て絶対必然即絶対最善」と言われる。私達にとって安倍総理の突然の死は何を意味するか、掲題の著書を通じて安倍政権の取り組み解決した日本の課題を順を追って、理念実践会の皆さんと振り返って見たい。
★相変わらず日本メディア、野党は枝葉末節な話題を取り上げ己の愚かさを露呈している。このポイントレビューをお読み頂きたい如何に具体的の安倍総理と官邸が日本国内と世界に向けて戦後レジームから抜け出し、日本の本姿を伝えてきたかを。
第1章 官邸広報とは何か
■4つのA
- 内閣広報官の職務は、第一義的には国民に対して政策の意図を正しく説明し、理解を得ることである。誰に、何を伝え、何を目指すかを考えることから始まる。「4つのA」を明らかにした上で取り組むことが重要だ。①誰に対する発信か、つまり宛先(Addressee)は誰か。②目的は当方への関心(Attention)を持ってほしいということか。③加えて、当方の意見に賛成(Agreement)までしてほしいのか。④さらには賛成した内容を行動(Action)に移してほしいのか。13
- 賛成を得るためには、相手の思考の深みに入り込み、こちらの主張を裏付けるファクトやデータを加える。また「こちらの話を聞いてください」だけではなく、相手の論議の土俵に乗って、問題点や不正確さを具体的に指摘する。すると、相手側も当方の主張を咀嚼した上で再考に及ぶことができる。14
■Agreement(賛成)につなげる
- 安全保障のような複雑なテーマの場合は、私たちが「直面する問題は何か」「歴史と経緯」「憲法や判例など議論の前提となる事項」「科学や技術など自分たちの思いとは別の次元で決まること」など、絡み合う論点を因数分解する。その上で、それぞれの因数について体系的に説明する。短さ、シンプルさに拘らず、長くなってもデータやファクトに基づいたほうが説得力で勝る。加えて注意すべきは、読み手を飽きさせない工夫だ。16
■平和安全法制についての説明
- 官邸HPの平和安全法制特集サイトでは、第一に日本を取り巻く周辺地域での安全保障環境が厳しさを増し、世界のそれ以外の地域でも紛争に繋がりかねない状況であることを説明した。第二に戦争を起こさないためには抑止力を強め、相手に行動を自制させることが重要であることを説いた。18
- 見落としてはならないのは、「日本を攻撃すると、自分がそれ以上の害を蒙るから行動を起こさない」と相手が思うかどうかは、相手に依るということだ。だからサイトではこう記載した。「ただし、『自分を利するか否か?』は、日本人の感覚のみに依るのではなく、相手の価値観や感覚を踏まえて判断しないと機能しません」と。19
- 「話し合って解決すれば、日本側は行動を起こさない」「国際法ではこうなっている」「日本国憲法の理想を一緒に実践しよう」などと説いてみても、相手がそれを自制の動機づけにしない限り、自制は起こらない。そう考えれば論議の対象になっている相手国に届く反撃力が必要か否かという点も答えは明らかだろう。日本人の常識や感覚だけで考えてはいけないのだ。それを私はこのサイトで伝えたかった。20
第二章 外国向け広報はなぜ重要か
■訪米で痛感した情報発信の必要性
- 日本のリーダーと政権のスタンスを正しく理解してもらうことから、日本という国の魅力の発信まで、守備範囲は広い。言語はもとより文化習慣や思考様式も異なる外国向けとでは様々な違いのあることに留意しなくてはならない。歴史認識をめぐる問題など、当事国で大きく見解が異なる場合もあり、時には対立的な発信も必要になる。p39
■総理のスピーチ、メディアへの投稿
- 安倍総理には外国訪問時に、インフルエンサーの集まる場で積極的にスピーチをして頂いた。14年秋には豪州議会本会議、15年には米国連邦議会上下両院合同会議でスピーチを行った。内容と反響はもとより、こうした場に招待されること自体も対外広報としてインパクトをもつのだ。p46
■慰安婦問題での基本方針
- 2013年末に安倍総理が靖国神社を参拝した。2014年になると、中国、韓国の総理批判はさらに強まる。1月のダボス会議では、中国メディアに一部の欧州メディアも乗り、批判的発信が強まった。慰安婦像対策はタフな仕事だった。米国へ移住する韓国人は増加し、州によっては現地で投票権を得る。現地の政治のプレーヤーになるので、日本政府が外交を試みても、欧米諸国の地方の首長や議員には及びにくい。p48
■地道な努力の末の慰安婦合意
- 慰安婦問題で韓国は日本を激しく非難している。韓国の兵士がベトナム戦争当時に何をしたか、関心のある方も多いと思うが、公表されないまま今日に至っている。米国では相手の関心の度合いの差にも直面した。「あなたの話は理解するし賛成だが、日韓両国には仲良くして欲しい」、「米国には歴史の中の被害者を忘れないために多くの像があるが、撤去せよという人はいない」、「これは市レベルのローカルイシューであり、ワシントンの手は及ばない」と言われることもあった。p51
- 米国で選挙権をもつ居住者の数では、中国系、韓国系の伸びは大きい。日本のソフトパワーの総力を挙げて、米国の人々の心に刺さる形を工夫し、発信し続けなければならない。こうした中で在外公館はそれぞれに頑張り、官邸と外務本省と在外公館の連携は強くなった。正直きつかったが、「日本の名誉が懸かっている」という意識を絶やさずに臨んだ。p51
■低下する好感度、遠ざかる未来志向
- 多くの日本人は戦前の日本の歴史を学び、反省するべきことを反省しているので、繰り返し謝罪を求めてくる韓国側にうんざりしていると思う。両国間の距離は縮まらず、日本人の対韓好感度も低下している。p54
- 私はその底に根深い問題を感じている。かつて大きかった日本との経済格差が縮小し、一人当たりのGDPで韓国は日本に追いつき、デジタル普及度では世界トップクラス、多くが英語も使いこなせるなど、韓国人の中に「日本に遠慮する必要はない」という意識があるのではないかということだ。p54
■中国警戒論へと傾いた米国
- 大国である中国は、グローバルな勢力図の中で日本に対する方向も固めた。だから、日本が米国と離間し、欧州とも緊密でなく、豪州や他のアジア諸国も中国に近づいた時には、中国の日本への対応は厳しさを増す。
- 他方、日米同盟を緊密化し、欧州諸国のアジアへの現実認識が深まり、アジア諸国が本音に基づいて対中関係を構築しようとする試みを日本が有効にサポートできれば、中国は他の諸国の動きを踏まえて、日本への対応も改善させるだろう。p56
- 今でこそ米国内で「中国は競争国」だと公言されるが、私が官邸に勤めていた当時、米国では通商・金融面は別として、外交や安全保障面ではプロ・チャイナ(中国寄り)の傾向が強かった。米国のPR会社に広報サポートをお願いしても、友人からさえ「難しいね。ほとんどのロビーイング事務所に、中国関係者の顧客がいる」と言われたものだった。p57
■ASEANの日米中ヘッジ外交
- 中国が南シナ海での埋め立てを拡大し、軍事基地化を進めるに連れ、ベトナムフィリピンなどによる対中反発が増す。2013年10月の東アジアサミットで、南シナ海問題の話し合いによる解決と、地域の問題は域外国を含めずに地域内で解決することを強調する中国・李克強総理に対し、アセアン諸国の首脳を含め多くの首脳が反発した。p62
- 安倍総理が議論をリードした。ウォール・ストリート・ジャーナルはこう報じている。「オバマ大統領が欠席する中で、中国による強い主張が予想されたが、注目は安倍総理に集まった。安倍総理は中国と領土問題を抱える国々に、『単独で対処せずに国際法に訴えるように』と発言した」p62
- それぞれが自国一国だけでは中国と対峙できない諸国は、アセアンを通じての一体行動と、他の大国とのヘッジによる外交をする。米国はもとより、日本への期待は大きい。この地域との経済、広報、留学生などあらゆる面での交流を進め、国を挙げての関係強化が欠かせない。p62
■選挙連勝で増した対外信用度
- 民主主義国家のリーダーにとって、多くの国民から支持を得て国政選挙で勝利し続けることは至難の業で、その難しさを最も肌で感じているのが首脳だろう。それは選挙で勝ち続ける安倍総理への他の首脳からの対応ぶりにも影響した。訪日する外国首脳の数、国際会議出席時の外国首脳との二者会談の数が増えていった。p63
第三章 首脳外交、ゴーン事件、コロナ過の渦中で
■15年安部訪米とケネディ大使の尽力
- 「G7サミットを来年5月に伊勢志摩で開催する」年が明けて15年1月、年初恒例の伊勢神宮参拝の折の年頭記者会見で、安倍総理は「G7サミットを来年5月に伊勢志摩で開催する」と明らかにした。一方、毎日新聞は1月14日、「安倍首相:真珠湾訪問を検討 大型連休、訪米で調整」と報じた。しかし、これは総理の意向に沿わず、事実でもなかった。P75
■「歴史修正主義者」のイメージを刷新
- ワシントンで、総理はホワイトハウスでの首脳会談、歓迎の宴、上下両院でのスピーチなどの行事を相次いで進めていった。このスピーチを巡っては、日米双方のメディアにより多くの肯定的な見方が報じられている。P80
- この訪米を通じて、安倍総理の活動と政策、人柄や実像が多数報じられた。一部のメディアが報じてきたような、「安倍晋三氏は歴史修正主義者(歴史を曲げようとしている人物)」ではない、という理解が広まったと思う。P81
■感動的だったオバマ大統領の広島訪問
- 「(オバマ広島訪問のニュースを)目にしたとたんに、久方ぶりに日本外交にとってのうれしいニュ
ースだと思いました」「特に、日本側が『謝罪を求めない』といっているのが、大変に良い」「謝罪を
求めず、無言で静かに迎えるほうが、謝罪を超え高々に求めるよりも、断じて品位の高さを強く印
象づけることになるのです」「『求めない』と決めたのは安倍晋三首相でしょうが、リーダーの必要条
件には、部下の進言も良しと思えばいれるという能力がある」P88
■トランプ大統領とのパイプづくり
- ホワイトハウスでの首脳会談の後、安倍総理はトランプ大統領からフロリダ州パームビーチにある別荘マール・ア・ラーゴに招かれた。食事会、ゴルフをまじえ、リラックスした信頼関係づくりが進んだ。ところがその夜、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射。両首脳は急遽、共同記者会見を行った。米国で行われる会見なので、慣例では米国大統領から発言を始めるのだが、この夜は総理から発言を始めた。
■「北朝鮮を非難する。北朝鮮は、国連安保理決議を遵守(じゅんしゅ)しなければならない」
- これを受けて大統領は簡潔にこう述べた。「私が皆さんに理解してほしいこと、十分に知って欲しいことは、アメリカ合衆国は、偉大な同盟国である日本の後ろ盾になっているということだ。100%だ」トバイアス・ハリス氏は著書の中で、「この瞬間、両国政府の力関係は(日本側に)重みがついて傾いたようだった。安倍総理が長い経験を積んだプロに見えた」と記している。P92
第四章 メディアとどう向き合うか
■ジャーナリストは文化エリート
- ジャーナリズムの最盛期には懐疑と好奇心が求められた。優秀な記者は常に伝えられたことを
疑う。そして弁明と説明とを較量しながら代替の説明を自分から創り出そうとしてきたが、現代のジ
ャーナリストは違う。自分を文化エリートの一員と位置づけ、選ばれた側にいる事で満足する。これ
はジャーナリズムではない。P147
■良質なメディアは共有財
- 報道はまずはファクト(事実)に立つ、それも正しい文脈で位置づける事が前提となる。頭と心と
に収納したファクトの引き出しの中から自分の主観で取捨選択し、ストーリーを織り上げてもらいた
い。P150
- メディアの世界は、やり甲斐と醍醐味を若い時から味わう事が出来る職業だ。現在のメディア幹部には、ご自身の経験を活かした発信をするとともに、次を担う世代を励まし、育てて頂きたい。良質なメディアは国民の精神を豊かにし、国の質を高め、民主主義の強さの証左となる、共有財というべきものだ。P151