脳力開発176号

脳力開発176号 台湾から見たウクライナ危機

2021年12月1日、安倍元総理は台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加した。緊張が高まる中台関係について、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と述べ、中国側が軍事的手段を選ばないよう、自制を促す取り組みの必要性を訴えた。このとき中国の反応は大使を呼びつけ「必ず火遊びで焼け死ぬだろう」と警告した。

  • この発言に中国の本音が窺われる。そして二カ月後にロシアのウクライナ侵攻が行われ、中国の過去の数々の口先の上辺の姿勢に隠された本心が明らかになった。我々日本人にとっても、隣国の中国の習近平が如何に信用できないかも明らかになった。
  • 4月21日産経新聞・台湾支局長・矢板明夫氏の時事講座に参加した。安倍総理が12月に語ったことがまさに2月のロシアのウクライナ侵攻以来、文字どおり「台湾有事」が人ごとでなくなってきた。今回あらためてウクライナになぞらえる台湾の立場から現在を確認してみた。
  • 矢板明夫氏の略歴1972年中国天津市生まれ、15歳の時に残留孤児2世として日本に引き揚げ、97年慶応大学文学部卒業、松下政経塾入塾、中台問題の平和解決における日本の役割をテーマに研修、2000年中国社会科学院日本研究所特別研究員、南開大学非常勤講師02年から産経新聞社記者、さいたま支局、熊谷通信部、東京本社外信部勤務07年から中国総局(北京)特派員、20年4月から台北支局長。

 

  • この講座を通じて日本の置かれている状況をあらためて認識したい。

以下矢作氏の話しを■印を中心にすすめる。矢作氏の発言は●矢作:で記す。

■プーチンと習近平会談

1、ウクライナ侵攻の報告。2、ロシア制裁に参加しない。3、台湾侵攻の相談。

  • プーチンは2月4日、北京冬季五輪開会式の際に習近平と会談した。その時の共同声明でプーチンの主張するNATOの拡大に反対するロシアの立場に習近平は「支持する」と明言した。その後プーチンは五輪閉幕を待って侵略に踏み切った。
  • 矢板:ロシア側の情報によると、習近平は今秋に台湾侵略を考えていたようだ。ウクライナが二、三日で制圧されたら台湾もやれると考えていた。二〇〇八年のジョージア一四年のクリミヤ半島侵略を見て数日で決着がつくと考えていた。習近平の台湾攻略の野望が今回のロシアの失敗・苦戦によって完全に白紙に戻った。
  • 中国とウクライナの関係

ウクライナは中国と蜜月関係にある。空母「ワリヤーグ」を売却し空母「遼寧」に改修、旧ソ連の軍事技術に多くはウクライナが持っていて、ソ連崩壊後数百人単位で中国にわたっている。また、一帯一路政策もウクライナ南部のオデッサからキーウへ、ヨーロッパというのが需要なルートである。従って中国にはロシアの侵略は痛し痒しでもある。

 

■戦争長期化の原因

  • ロシア優位、兵力、武器
  • ウクライナ優位  情報、補給、士気、国際社会の支援
  • ウクライナ不利の当初の世界の予測は全て外れた。プーチン自身のイメージも私達が想像したように、兵力、武器の差が有利に働くと思っていたらしい。軍備の過多が話題になるし兵員数、兵器数、核の有無が問題にはなる。いずれもロシアの方が優位であることは変わらない。
  • しかし、事実は違った。情報、補給、加えて武器の新しさ、精度等があることが判明、加えて士気の差が大きい。かつて第二次世界大戦の時、米国が最も恐れたことは日本軍兵士の士気だったようだ。(ここでは置く)ウクライナ国民の国を守る意志が大きい。守り抜く意志が国際社会を動かした。
  • プーチンと習近平の最大の誤算は西側諸国が一致団結してロシアの戦争を許さないという姿勢を見せたことだ。ロシアの主要銀行をドル決済から排除するという前代未聞の経済制裁を課した。中国経済にとって、EUと米国の市場から追い出されると致命傷になる。

 

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■ロシア軍苦戦は台湾を変えた

ウクライナ戦争をみて、台湾人は「中国に併合されたくない」という気持が強くなったのではないか。ロシア軍の虐殺の実態をみて「中国軍に侵略されたら同じ目に遭う」と連想させる。ウクライナの必死の対抗でロシア軍の苦戦は台湾人を元気づけている。

  • 矢板:台湾の人達はウクライナの状況を見て「中国はこうやって攻めてくるのだ」と想定する。これまで米国は台湾有事に対して「あいまい戦略」だった。中国の侵略に対して米国の来援はハッキリしなかった。今回、米国は来ないということが分かった。
  • 矢板:しかし米軍が来なくても勝てるかもしれないという希望が生まれた。米軍は来なくても武器と情報を渡してくれる。それで勝てる可能性が高くなれば台湾人も戦う。台湾人の考えが大きく変わった。
  • 矢板:補給の問題も、ロシアは陸離だがそれでも補給がうまくいかない。台湾の場合米軍は参戦しなくても台湾海峡は公海だから中国の船は容易に渡れない。台湾は自信を持った。
  • 矢板:蔡英文の支持率は何もしないが上った。親中派の国民党はこれまで「中国の言うことを聞かなければ台湾を攻めてくるぞ」と脅かしていたが、その恫喝も効かなくなった。武器さえ貰えば勝てると気づいた。対戦車ミサイル「ジャベリン」さえ貰えば戦えると自信を持った。

 

戦争で見えたこと

1、戦争はいつでも起きる。

2、独裁者は判断ミスをしやすい。

3、ロシア軍は意外と強くない。

4、戦争の要は情報と補給

5、指導者が重要

  • 日本人には平和憲法、第九条があるから日本は戦後75年戦争に巻き込まれることもなかったと戦後リベラルを自称してきた個人、団体、政党を信じて来ていた。金科玉条にしてきていた。その事が真実だと洗脳されてきた国民も大半だった。日本学術会議でも研究すら忌避してきた。
  • 独裁者は判断ミスをしやすい。ロシアを見ていると結果としてそのように判断される。かつてのスターリンや毛沢東も同じことを繰り返している。私達がかの国に生まれたとしたら、独裁者に反対することは「死」を意味する。彼等の犯した数々の事実を振り返って見ると、その残酷さにヘキヘキする。人間でありながらこの残酷さに。
  • ウクライナ軍の闘いに兵力、武器の差が勝敗を直ちに決することに繋がらないことを知った。第二次世界大戦の時代、今から70ー80年前と大きく違って、現代はそこに情報の比重が増えている。勿論第二次大戦の当時も「情報」は大事だったが、現代はそのスピードが大きな力となっている。米国、英国の軍事情報以外の情報もウクライナの戦い方に大きく寄与している。

 

■日本への影響

  • 矢作氏、石平氏、モンゴル出身の楊海英静岡大学教授

 三人の鼎談で日本に対しての影響を正論六月号で議論している。

  • 日本もウクライナと同じ環境にある。日本人もウクライナ人のように戦わないことには米国も国際社会もなにも出してくれない。いまだ中国が攻めてきたら投降しなさいという人もいるが、如何なものか。ウクライナの戦争で日本人に大事なことを教えてくれている。①平和を望んでも相手が侵略してきたら瞬間に崩れる騎弱のものだ。

②侵略されれば如何に悲惨なことになるか。

③守らなければ女性や子供が殺される。守るために必死で戦う覚悟がいる。

  • 矢板:戦後の平和主義が如何に時代錯誤か明らかになった。「戦争を放棄する」と書けば戦争が起きないのであれば、地震や津波を放棄すると憲法に書けばよいという話だ。戦争は向こうからやってくる。「攻められたときどう対応するか」を考えなくてはならない。

 

■幸運続きの台湾

1、日韓対立 → 韓国半導体産業に打撃→ 中国に不利

2、米中貿易戦 → 台湾企業の出戻りブーム→ 中国不利

3、香港反政府デモ → 台湾に金、人材流入

4、コロナ禍 → 半導体需要急増

5.ウクライナ戦争 → 国際社会の台湾支持強化

  • 矢作:ウクライナ戦争による影響を考えてみると上記のように台湾にとって幸運が続いていると言っている。ロシアの背後には中国がいる、習近平がいることは明らかになっている。ウクライナに準えられる、台湾は現在の状況から中国を意識しながら台湾からの視点で見ると多くの点が有利に影響している。
  • 以下、矢作氏は台湾の状況を報告された。大いに納得できた講演だった。

■蔡英文総統の「四つの堅持」

1、自由と民主主義

2、中華民国と中華人民共和国は互いに属さない

3、主権の侵犯や併呑を許さない

4、台湾の将来は台湾人の意志で決める。

■台湾の選択

1、「安定、臨機応変、進歩」

2、挑発しない、譲歩しない

3、米台関係の強化

4、国際社会への積極的な参加


脳力開発175号/理念の時代を生きる175号

脳力開発175号 日本国憲法のあり方を考えるインポジュウム講演

櫻井よしこ氏、安倍晋三氏、前統合幕僚長河野克俊氏、ケント・ギルバート氏、有本香氏

によるシンポジュウムにオンラインで参加した。翌朝新聞で記事として読んだが、新聞記事はホンノ一部しか掲載してなく、加えて東京新聞などは全く見当違いの論評にあきれ果てる。記者の能力とメディアの姿勢が鮮明に出ていて、かつてNHKで「加計学園問題」で愛媛県知事・加戸守行と前文部次官の前川喜平氏との論戦を中継放送したが翌日の新聞諸紙の掲載ぶりに前川10に対し加戸0.4の割り割合に唖然としたが、今回も同じ雰囲気だ。しかし、ウクライナ・ロシア問題で国民の意識は大きく変わり、朝日、毎日の世論調査はメディアの意図も国民の意識をコントロールは出来ない。講演の骨格をお伝えします。実に明快な講演会だった。

■桜井よし子の講話 

「ユーラシア大陸を制する国が世界を制する」という言葉がある。中国に資金を供給する国であつたわが国は中国の台頭を許してきた。ロシアの今を見ると国連でも大半がジェノサイドとして非難しているが、常任理事国一国の反対で反対の効力が無意味になる現状に世界は国連の無能さを自覚しだした。

中国、北朝鮮はロシアを擁護しているが「ロシア」の衰退は断言できる。いま「中国は遠く未来をみて、ロシアの衰退=ユーラシア大陸の覇権」を描いている。元々今の中国の領土もモンゴル、ウイグル、チベットが中国の領土の六割を占めている。

「日米同盟を大事にしょう」と野党もいいだしたが、果たして「日米同盟だけで大丈夫」なのか。自国を守れるのか。日本国を大事にすることが本当に出来るのか。

日本強靱化の四つの問題点

一、GDP2%は早急にすべき。

メルケル首相在任中から中国ロシアに対して忖度し防衛費GDP2%を渋っていたドイツもロシアの姿勢に直ちにGDP2%を決議した。5年間でGDP2%というに引き上げるという自民党内の提案に対し、第十九代元防衛大臣の岩屋猛氏は防衛費2%に反対し、財務省矢野財務次官も訳の解らない視点で物流のシッカリし医務の財務の健全化を優先させると言っている。5年かけて段階的に積み上げるという考え方は、G7にとって国の姿勢が問われている段階で、日本の国の姿勢にあきれる。

二、専守防衛・考え方を変える時だ。

 専守防衛という効力のない、役に立たない考え方を変える時だ。専守防衛とは国民が先ず犠牲になって初めて防衛する。ウクライナはロシアには攻めて行かない。ロシアの本土には行かない。ウクライナで起きていることが文字通り専守防衛だ。日本はかくなる状況に追い込まれても国民が犠牲になるまで反撃しないのか。公明党の山口代表も創価学会・池田氏に忖度していつまでも中国に配慮しているが、学会員の若い人の反応はもはや過去とは違う。

私(黒田)に言わせれば公明党との連立をやめ、維新、国民民主党との連立を、と考えるが衆参両議員で2/3を確保するのは、そう単純でないのが現実らしい。

三、非核三原則(持たず、つくらず、持ち込ませず)

まるで国是のように扱っているが、民主党が政権をとっていたとき岡田外務大臣も答弁で持ち込ませずという考えに対して「持ち込ませることもある」と答弁している。米軍に持ち込ませずといい続けるのか。そして守ってくださいと言うのか。岸田総理も持ち込ませるといいきれば良い。自国が戦わずして他国が協力してくれる訳がない。戦うウクライナに応援しているのだ。永世中立国のスイスしかり、スエーデン、フィンランドしかり。中国、北朝鮮が核を使えば次の広島はどこだ。第三の広島は。

四、中国よりも対中抑止力の強化だ。

日本安全保障戦略研究所・矢野一樹氏は対中国に対して水中能力、潜水艦は中国に対して力がある。中国の潜水艦は能力が低い。潜水艦は空母に比較して対称性が高い、原子力潜水艦があれば第一列島線を破られることはない。原子力を平和利用のためだけでなく考える。AUKUSオーストラリア、イギリス、米国の軍事同盟に誘われている。

パネルディスカッション

 いか安倍元総理に絞ってまとめてみた。新聞などのメディアでは理解できない明快な話し、議論であった。これらの問題の根本に戦後一度も改正されない憲法の問題がある。私達もロシアに侵攻されるウクライナの現実を直視しながら、平和惚から脱皮しなくてはならない。

■安倍元総理の発言まとめ

ウクライナはNATOに入っていれば侵略されなかった。ドイツが反対した。 バルト三国に手を出せないのはNATOの加盟国だからです。ウクライナは「NATOに入りたいけど入れない」という最も危険な状態にあった。

■今日のウクライナは明日の台湾

ウクライナ情勢は台湾有事とリンクしている。西側諸国がロシアによる一方的な現状変更を止めることが出来なければ中国は台湾への威圧的行動を強めるはずだ。中国といえどもロシアはウクライナを攻めあぐねている。台湾を武力統一するのは容易でないと認識したはずだ。

■米国は台湾政策で曖昧戦略をとってきた。中国が台湾に侵攻したとき、軍事介入するかどうか明言していない。曖昧戦略は、中国に米国の意思を見誤らせる危険をはらんでいる。米国は台湾防衛の意思を明確にすべきです。

タブーなき「核共有」議論を

ロシアのウクライナ侵攻という現実は、綺麗事だけでは国民の命は守れないことを再認識させた。日本は、中国・ロシア・北朝鮮という三つの核保有国に囲まれている。今こそ現実を直視した上で冷静に議論することが求められている。

■米国は報復してくれるのか

抑止力には「拒否的抑止」と「懲罰的抑止」がある。懲罰的抑止は相手に甚大な被害を与える能力や意図を示すこと。日本は懲罰的抑止を米国に頼っている。日本の平和と安全は相手国が米国から報復される可能性をどう評価されるかにかかっている。NATO方式の「核共有」においては攻撃された当事国が報復の意思決定に関与できる。日本は報復するかどうかの意思決定に関与できない。

★是非機会を捉えて講演会をあるいは新聞などではなく正論・HANADA・WILL・文藝春秋・中央公論などもお読み頂きたい。(悦司)

理念の時代を生きる175号・三つの物語

その一、快労報告会・経営とはいかなることか

快労とは

一年ぶりの理念制定者による快労報告会を開催した。「快労とは理念を制定したものにとっては、なにがあってもおもしろい、挫折感を持たないだけでなく、苦労が喜び」なのです。「苦」がないわけですから、起きてくることが全て「快」になるわけです。「快労」がつづくわけです。九名の理念制定者の快労報告がありました。

理念制定のサポートをしてくださる大和信春先生の講話をヒントに理念経営についてまとめてみよう。

経営とは如何なることか

 と問われたらどう答えるであろうか。ある経営者が子弟を経営者として育てたい。そのためにはどのように育てたらいいものか、またどう伝えたらいいのかと方策に迷っていた。大企業でも中小企業でも事業承継は喫緊の問題である。結局は経験を積む中で経営に向いたあるいは能力相応しいと思われる人材を選んで承継させると言うのが一般的だ。その根底は「経営で一番大事なことは利益を生み出すことである」と言う思い込みがある。この事に反対する人はいない。

経営とは利益を出すことか

となると、三年目を迎えたコロナ禍の世界でも「利益がどうなっているか」に一番関心がもたれている。メディアも色々な視点(GDPが下がったとか、規制の関係で収益が著しく減少しとか、廃業したとか、失業したとか)で語る。ロシアとウクライナの戦争に関しても人権の問題、戦争犯罪の問題として語られる一方、メディアは材料費の高騰で値上げもやむをえないという話が必ず話題になる。

はたして利益本位が第一義か

 時に顧客本位だとか、社員本位だとか色々な視点で言われることがある。その視点も根底には経営する上での「利益本位」という姿勢を偽装しているに過ぎない。誰しも「経営は利益本位」と言うことに疑問を差し挟めない。

経営で大事なことは

 一番大事なことは「企業理念」である。しかし企業経営者は「理念では飯が喰えない」という。最近の事例として熊本産のアサリのことをお話しされた。中国産アサリを何日間熊本の海に蒔いたら熊本産といえるのか。中国で育った同じ期間以上熊本の海に蒔いておけば国産と農林水産省は認めているらしいが。鰻の偽装でもあった。売る方も買う方(消費者)も安い価格を望み騙し騙される。そして偽った方は飯が喰えなくなる。

理念のない企業は隠し事の固まりだ

「理念のない企業は隠し事の固まりだ」といえる。理念の替わりに利益本位になる。そして利益本位は隠し事をし、究極的には飯が喰えなくなる。理念のない経営者は隠し事を知っていながら嘘をつくが、これも何時かはばれる。

次ぎに大事なことは

特異貢献である。会社独自の他社が真似の出来ない商品づくりである。固有の存在価値を持った商品づくりのことである。その土台に研究体質がある。特長商品が経営の安定を保障する。固有の役立ち方が出来て始めて他社との競争から抜け出せる。

■終身就業

参加企業の報告の中で今働く人達の高齢化の働きがいの点について考えてみました。

初代社長は現在八六歳、現社長は五〇代、そして三代目を自認しているお嬢さは高校から美術関係に進み、大学で家具関係を学び卒業後、家具関係の会社に就職し、経験を積んだ都内の職業訓練学校で木工コースを学び、自称三代目を自認している。

コロナ関係の結果、建築資材の輸入の関係で材料が高騰した。その結果、工事の遅れが発生している。今年はモデルハウスになる自然環境を取り入れた自宅兼モデルハウスを建設予定だが、この機会に材料を見直し国産材を使いしかもプレカットではなく八六歳の父上の手刻みをしてもらった。

父親は緊急のときに自らのもつ技術を生かしている。当然活き活きと仕事をしている。通常の建築関係の会社では八〇歳代で現役の大工さんなんかいませんよね。役に立つことで喜ばれる実例です。効率やSPEEDだけを優先しない。

 

草むしり隊・八〇歳も有望な仕事人

草むしり隊で働く人達は様々だ。年齢は三〇代から八〇代。そもそも創業の頃は60歳以上の人しか応募して来なかった。退職したそれでもなんとか働きたいという人が僅かに応募してくれた。一般的な会社ではとうの昔に首にされている。「草むしり」という会社が存続していることですら、一般の人には疑問だと思います。創業以来10年。現在二つ目の事業も立ち上げようとしている。この会社で働く人は若い人に比べても遜色ない。若い人も仕事の丁寧さ、仲間やお客様に対する人当たりの良さは真似が出来ない。

■引退のない会社

■理念のある企業は終身就業が可能なのです。従業員か働きたい限り終身就業を目指しています。大企業では社員は一見皮肉な表現をすると「社員=社蓄」とも言えます。自分のしたい仕事に携わっている人も勿論いますが、「生活の資」を第一の目的として仕事を

選択せざる場合が多いものです。私自身も振りかえるとそうでした。仕事の領域は関心のある領域の仕事でしたが、その先は経営者を目指していました。職種はどうでもよかったのですね。

役に立つことで喜ばれる

人間は元気で自分のやっていることが「人から喜ばれる」体験をつむと年齢を重ねるほど「生活の資」を得ることよりも「役に立つ」「喜ばれる」ことの方が生き甲斐になるものです。しかもまだまだ働けるのに高齢者社会になればなるほど、高齢者が働く場が狭まるのです。そして大企業では「若手採用」が強まります。その根底には「経費の削減」と「経営の生産性」が叫ばれます。経営者にといて全てが「利益を出すことが最優先」だからです。

■企業理念のある会社は「社会との互恵」「同業者との互恵」「取引先との互恵」そして「社員の互恵」があり「社員同志の互恵」も大事にする「諸方互恵」を求めます。しかし、企業理念のない会社は、冒頭に述べたように「利益本位」になります。終身就業などは考えられもしません。なぜなら、企業の目的は利益を増やすことが最大の目的になっているからです。

■勿論、人生は一度ですから、終身就業と言ってもやめて新たなことをやりたいとか、残りの人生は自分の好きなようにしたいとか考える人もいるでしょう。経営者としては組織を若返らせるという気持もあるでしょう。しかし高齢になっても働きたいと思う人は沢山いると思います。

■私は引退のない会社を基本として、引退したい人はこれまた自由にという組織を作ることも面白いと近頃考えています。そんなことが実践できる企業づくりをする。勤めたい人は70歳、75歳、80歳と5年置きに自分で選択させる。働いて「役に立って喜ばれる会社」をどんどんつくる、これが長寿社会の必須条件になると思います。

その二・70歳が老化の分かれ道

年三~四回高校時代の関東地区の同級生が中心でZOOMで同窓会をしています。参加者合計11名。先日の同窓会で現役研究者から「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹著の紹介がありました。同じ著者の「人生100年老年格差」も読みました。そのポイントに全く同感です。常識的には異端でしょう。私なりに10項目にまとめました。

  • 「何事からも引退しない」前頭葉の老化を防ぐ(創造性、他者への共感、想定外への対処力)仕事だけでなく、町内会の役員、趣味の会の世話役。
  • 「運転免許は返納しない」生活環境を変えない。高齢者の運転の危険性は印象、統計をみる。都会ならともかく、田舎は外にでる機会を奪う。
  • 「高齢ドライバーは危なくない」高齢者精神科医の立場で言うと「認知症」が原因での踏み間違いはほぼない。あわてるからだ。
  • 「肉を食べる」日本人の5人に1人はタンパク質不足。幸せ感は脳内のセトロニン、肉はセトロニン生成を促進する。野菜が中心はよくない。
  • 「コレストロールも余り気にするな」男性ホルモンの原料で「意欲」を他者への関心、集中力に関係している。活動意欲低下は元気のない老人になる。
  • 「活動レベルを落とさない」運動の習慣が大事だ。散歩の習慣、水泳、ゴルフ、武道。その他、観劇、俳句などの習慣やめない。
  • 「ダイエットをしない」少々ふっくらした方が良い。日本のメタボ対策は高齢者医療の学者の指導。スリム体型は寿命を縮める。
  • 「インプットからアウトプットに行動をかえる」物知りよりも話の面白い人。自分の考えを加工して話せ。
  • 「健康診断より心臓ドック、脳ドックを受けろ」コレステロール食事制限するな。薬をのめば「免疫力」が低下する。
  • 「がんが見つかっても70歳になったら手術はしない」手術をすれば確実に体力が落ち老け込む。正解はない。本物のがんは転移するがんは早期発見しても厳しい。

■私達夫婦の好きな番組

「ぽつんと一軒家」と「イタリア・小さな村の物語」をほぼ欠かさず見ます。イタリアは私の好きな国です。昔イタリアの修道院の音楽担当の尼僧だったといわれたことがありました。(冗談ですが)二つの番組の共通点は、大変高齢な老人が今も働き活き活きと暮らしている。村全体がコミュニティまた一人でもお役に立っているのです。

「何事からも引退しない」

妻ともどもこれらの項目を実行しています。毎日体重計に乗っています。体重の上限を決めて。お酒は控えました。飲み過ぎの傾向がありました。毎日ビール半本酒一合、あるいはワインは2杯。一番は「何事からも引退しない」ことだと話しています。

 写真 70歳が老化の分かれ道 人生100年老年格差

 

その三 引退をしない人生・米寿記念誌

知人のご両親の米寿の記念に、ご両親の幼少からの歴史をまとめさせて頂いた。そのインタビューにあとがきを書きました。10歳上の先輩は、生き方にロマンがあります。ご主人は酪農関係の大学をでてすぐにドミニカ移住。奥様今も現役。興味津々の88年。

■事前にご両親の簡単な年表を作ってもらい、その流れに沿ってお話しをお聞きしました。お父さんの赴任地韓国で誕生し、終戦の前年帰国されています。

■終戦後、GHQによる農地改革など戦前の制度が大きく変化し、日本も食料難のなかで、農村環境も大きく変化を迫られました。そんな中でお二人は中学、高校と進まれ、Sさんは広島師範卒業後、韓国で教師だった父上のお薦めもあり、安中の中高一貫校・新島学園に進まれています。

■大学は酪農への道を選択され北海道酪農学園大学に進まれ、奥様のお母さんは当時では珍しい大和農芸家政短期大学への進学を応援されました。終戦後、日本が戦後復興に邁進している最中、一九五一年には朝鮮戦争が勃発した時代です。

■高校を卒業すると殆どの人達は働き始めていた時代です。大学進学は男子で一割強、女子は一割にも到底満たない時代に、お二人とも大学に進まれ、海外勇躍の志を抱きながら学生生活を過ごされました。

■卒業後、ご主人はドミニカに雄飛、奥様は志した農村の改革の世界に進まれ戦前の農家の生活習慣や生産・加工方法を指導し、農家の婦人の生き方を変える活動を開始されたのです。

■数年を経てお二人は結婚、そしてご主人は農協中央会に入られ農業の飛躍的発展に力を注ぎ始められました。日本も高度成長が始まり東京オリンピツク開催、新幹線開通と希望に満ちた時代でした、私も大学生活を愉しんでいたことを懐かしくおもいだされます。

「親の心子不知」と言われますが、若いころ親が子にどんな思いを抱いていたか考えることなどありませんでした。この歳になって今は亡き両親の子供に対する愛情の深さに思い当たることがあります。誠にお恥ずかしい限りです。

■お二人のお話しを聞きながら私の兄やその世代の青春時代、壮年時代を実感しました。また亡き父や母の若き時代に思いを馳せました。子供たちに対しての親の無償の思いも強く感じました。親というものは本当にありがたいものですね。お二人の人生は変化に富み興味津々でした。S家百年物語を紡ぎください。

私達の両親は既に亡くなっているでしょうが、歳を重ねてわかることがありますね。生前でも両親に聞くことなど全くありませんでした。しかし私も60歳過ぎたころから四人の男兄弟の中で私が父親に一番よく似ていると言われたことがありました。

★長男のお嫁さんに「孫の大空は主人(倫太郎)にソックリ。主人はお父さん(私)にソックリ」と言われたことがあります。こうして血がつながりって家系というか、そんなものが出来ていくのですね。

★森信三先生は老後に「自分史を書くように」と言われています。私は様々な形で書き残していますが、是非皆さんも自分史を書き留めておくのは大事なことだと思います。高校、大学、結婚の動機、子供が生まれたときの喜び、仕事の思いで等書いておかれると子供や孫には新鮮ですよ。ご両親のお元気な方は何かの機会にお聞きすることをお薦めします。