脳力開発166号/理念の時代を生きる166号

脳力開発166号 ・新・階級闘争論・門田隆将 

理念実践会のテキストを今回とりあげる。先月お話ししたポリテイカル・コレクトネスに関する問題を取り上げる。アメリカも日本も民主主義国家の世界的傾向は少数部分の問題を政治問題とする傾向が著しい。むしろ目立つ部分は少数で、目立たない部分が多数であるにも関わらず取り上げだした傾向がある。多数決を重視すること決めたのが民主主義の原理だ。しかし近年はこの少数部分が政争の話題となっている。

共産党は日本のみならず非合法団体と見なされ、いま共産主義を標榜する国家は中国と北朝鮮二国だ。中国は全体主義国家として民主主義国家から横暴を指摘されるがコロナ外交戦狼外交を続けている。

★今回新階級闘争論を取り上げ、日本が見事に侵略されつつある現実を冷静に見たい。

■はじめに  小路口氏

  • 「新・階級闘争」とは、かつての巨大な「階級」同士の闘いとはまったく様相を異にする。明確な搾取する側の「資本家」と、搾取される側の「労働者」のように位置づけられた闘いではない。それは、性別、収入、人種、性的指向、職業、価値観等々、人間の持っているあらゆる「差異」を強調して作り上げられた、本来は存在しない「階級」「階層」によるものだ。3-4
  • ポイントは、その「差異」の中で大衆に、自分は「差別を受けている」、あるいは「平等が侵されている側」という“被害者意識”を植え付けることができるか否かにある。つまり、「差別する側」と「差別される側」の二つの階層を概念上、つくり上げたうえで、大衆をそれぞれのジャンルの“被害者に持っていく”のである。4
  • ソ連崩壊後も、共産党一党独裁政権の中華人民共和国は生き抜いた。国家管理の下、自由経済を取り入れて、当初は安い労働力で世界と低価格による競争を行い、次第に外国の資本と技術を盗んだり、取り込んだりしながら、一党独裁政権下の経済成長という「奇跡」を実現したのである。7
  • 巷間(こうかん)、「左翼」と呼ばれる人々にとっては、中国の存在は一種、心の支えでもあっただろう。彼らはあらゆることを政権叩きの材料にし、いつの日か国家転覆を果たすのが目標だ。その手段が新しい「階級闘争」にほかならない。左翼は脈々と生き続け、新たな戦い方を考え、練り上げ、工夫し、創出しつづけているのである。7

■序章 メディアリンチ 吊るし上げ時代 濱田氏

  1. 今回の場合、森氏と東京五輪に打撃を与え、できれば中止に追い込み、選挙で自民党を敗北させ、菅義偉首相を政権から引きずり降ろすことが目的である。朝日の記事はすべて「そこ」に向かっており、事実は都合よく変えられるわけである。 P21
  2. 日本のマスコミは、朝日を筆頭に「事実」は関係ない。メディアリンチで徹底的に吊し上げ、架空の事柄によってその人物を葬り去るのである。 P23
  3. キャンセル・カルチャーというのは、その人の言葉の一部、過去の思想や発言の一つの側面を捉えて糾弾し、その存在すべてを否定し、非難することである。 P33
  4. 匿名は個人としての“羞恥心”をかき消す作用がある。一方、それに反比例して“攻撃性”を異常なほどに加速させる力がある。このキャンセル・カルチャーが過剰な糾弾を呼び自殺に追い込まれる人も出てくるなど、大きな社会問題となってきたのは各国に共通する。P33

                   

■第一章  SNSの標的になった人々 藤井氏 

  • 私はこの手のツイートを見る度に「本当にここは日本なのか」と思う。自分は匿名でこれほどの罵声を他人に浴びせることが出来る人が「大勢、日本にいる」ことに毎回、衝撃を受ける。それは日本の美徳でもある「寛容」が消えつつあることを示している。P38

異論を許さない全体主義の恐怖

  • 習近平とバイデンの関係は、台湾への電撃侵略を生むのか。そして苛烈になる一方のチベット、ウイグル、香港への人権弾圧、さらに尖閣から始まる日本侵略はどうなるのか。悪夢の四年間は今からなのだ。平和ボケ日本人に果たして「覚悟」は生まれるのだろうか。P51

切り取り「炎上」手法

  • 杉田氏はあくまでも少子化に対して「無策」に等しい状況の中で、税金をどこに重点的に充てるべきなのかという視点で書いている。子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うなら少子化対策に資するという観点はあって良いし、では、LGBTのカップルに税金を使うことはどうなのか。そうした視点や考察を怠らないことがむしろ立法や予算に携わる人間には求められる、と言っている。P57
  • 言論と表現の自由が守られている日本では、LGBTについても、今後、自由闊達に議論していけばいい。杉田氏が「少子化無策」に対して、あるいは、LGBTへの支援に度が過ぎている行政や、それを後押しするマスコミに対して激しい怒りを持っている人物だとは思ったが、「LGBTへの差別主義者だ」とは感じられなかった。P64

 

■第二章 コロナで焼け太る習近平と官僚  柳井氏

祖国を「中国に売る」人たち

  1. コロナ禍の数少ない人類への貢献は「中国の真の姿を世界に知らしめた」ことであるのは間違いない。国際社会の流れが、これを機に自国への中国による「工作」や「浸透」がどの程度のものであるかを検証することに繋がっている。その実態を知れば、おそらくどの国も唖然とするに違いない。78
  2. 中国の先端技術や軍事技術は、多くがこういう外国からの最先端技術者や研究者の囲い込みで、またスパイ活動によって得た情報や機密資料で、あるいは海外で活躍する中国人研究者らを呼び戻す方式などによって支えられている。
  3. コロナ禍は、はからずもこうした中国の動きに目を向けるきっかけをつくった。それは、国際社会が「ここで中国の増長を止めなければ大変なことになる」という共通認識の醸成に進み始めたことを示すものだ81

厚生省はなぜ国民の「命の敵」なのか

  1. 厚労省のコロナ対策を一言で表わすなら「不作為」である。武漢で感染爆発し、中国からの入国禁止を打ち出さなければならない時に「武漢からの航空便に発熱と咳の有無を聞く質問票を配布する」という驚愕の対策でお茶を濁した厚労省。
  2. サリドマイド事件や薬害エイズ事件等々の過ちを一向に顧みない同省は、未だ専売特許の「不作為」を続けており、何ひとつ国民の命を守るために役立たなかった。これが“秀才君”や“マニュアル君”たちの寄せ集めである霞が関の実情だ。89

■第三章 メディアの反日が止まらない 堀越氏

産経スクープ「吉田調書」の衝撃

  1. 産経新聞が報じた「吉田調書」には朝日が報じた「職員の9割が所長命令に違反して撤退した」という内容は出てこなかった。朝日は事実をかえりみず、ひたすら原発事故の現場の人々を貶めただけだった。現場の職員たちが「自分の死」を見つめながら必死に闘った。その人々に感謝する事はあっても、貶めたいとは思わない。しかし、朝日は違うのである。P101

マスコミは「歴史の検証」に耐えられるのか

  1.  いま日本は、新聞とテレビだけに情報を頼る「情報弱者」と、インターネットも情報源としている人たちとの間に「情報と意識」の乖離が生じている。野党がヒステリックに安倍退陣を叫んでも、それに踊る人間は「情報弱者」だけなのだ。世論調査が現実を映し出さず、選挙をやってみたら、結局「与党の勝利」となる。P127

朝日の「歴史への大罪」と終戦の日

  1.  昭和六十年夏、中曽根康弘総理の戦後政治の総決算を阻止するために朝日新聞が靖国問題を引き起こした。家族と国ために働いた人々をどう悼み、讃えるかは、その国の独自の文化であり、民族の財産である。だが朝日は先人の無念さえも、日本を貶める材料にして中国・韓国のための紙面を作っている。昨今は朝日の部数激減が顕著であり、その事を感じる人がいかに多くなっているかを表す指標とも言える。P139

 

理念の時代を生きる166号・北海道の旅

志に生きる若き酪農家たち

久世亮君に一年ぶりにあった。昨年よりもトラックターが増えていた。今年は草刈りも予定より早く牧草ロールが整然と積み上げられていた。牛の頭数は余り増やしていない。彼の年齢は46歳。稚内からの牧場までの道中久世さんとの話の中で近年は酪農離れが進み、廃業する農家が多いと耳にしていた。22歳で新規就農し今からおよそ24年前6000万円の借入を農協にした。

2013年彼をインタヴューした記録がある。その時今後の展開を聞いた。健康な牛を育てたい。穀類を餌にすると牛の負担が多い。草を主体に長寿命で牛に負担のない搾乳を考えている。親牛の平均寿命は二・四三歳、四歳までに淘汰される。六産七年の長寿の牛を育てたいと言っていた。当時、五〇頭今は七〇頭に近い。

二〇年先を描いている

今年も立ち話だったが、今後の方向はどうですかと聞いた。彼は20年先を予想しているようだ。牧場を将来継承する人のために牛を育てやすい環境をつくりたいと考えている。稚内から豊富にかけて幾多の牧場があるが、正直厩舎が朽ちかけた牧場も見かける。亮さんの買い増した牧場の厩舎も老朽化が進んでいた。素人ながらこれをどう活用するのかと感じる設備もあった。亮さんは将来引き継いでも(継承・売却)希望をもって酪農に打ち込める牧場にしたいと考えている。

酪農廃業の課題・親子の葛藤

久世君との話で廃業の問題点を聞いたことがある。今回も結局は後継者がいない。息子がいても継がないということだった。何故なのか?と問うと、彼は親子の継承は結局親があれこれ口出しするからだと言った。

今回あった中に三女アモさんが再婚した相手は田中真世君という。彼の両親に三年前にお会いした。田中さんは結婚後父上の牧場を継承する予定であった。ところが昨年お邪魔したときに父上の牧場継承が白紙に戻したということだった。父親がまだ現役を続けたいということだ。完全に引退はしない。ということで、結婚はしたものの一端牧場継承は白紙に戻し、昨年彼に会ったときはアモさんが経営する喫茶およびチーズ工場で仕事をしていた。そして久世さんがかつて使っていた牧場でわずかに牛やホウエー豚を育成していた。

事業継承・売却と相続

ニュージランド辺りでは牧場継承は牧場の価値を客観的に評価した上で、親が息子に売却するのだという。そして親は牧場経営から引退する。当時わたしも何故なのかよく理解できなかった。久世さんも合理的な日本人には何となく他人行儀なことをいうものだと思っていたが、これが実は事業経営にとって大事なことだとあとで知ることになる。

牧場だけに限ったことではない。日本でも事業を継承すると相続税という問題が生じる。親がここまで育成したものを個人の領域をこえて子供が継承すると場合によると膨大な相続税が生まれる。そこで相続税の支払いという問題が生じる。日本でも最近小企業でもこの問題が生じて時に廃業に至る。この相続税こそ企業価値の売却に相当する。

新規就農・親子の葛藤

話を田中さんの件に戻そう。田中さん今年四月新規就農の道を選んだ。昨年から準備して廃業する農家から牧場を購入し、今回新しい牧場を訪問したら、アルバイトの手伝いと二人の同業者が待っていた。田中さんの牛の種類から説明をしてくれた。ホルスタイン、ジャージ、ブラウンスイス、ガイジーと四種類の牛を育てていた。酪農大学を出ている田中さんは私にも分かりやすくそれぞれの牛の特長をはなしてくれた。新規就農した田中さんの意欲は高い。

牧場継承の要諦は①息子が継承しても口を出さない。②同居しない。③食事も一緒にしない。ことだという。それを守れる親はいない。結果として田中家も守れなかった。そして田中君も新規就農の道を選択した。

理入と行入

田中さんを訪ねていた友人の一人は私が経営に関わる仕事をしている自己紹介をしたこともあって。私に質問してきた。彼は三年前就農したらしい。

ドラッガーやその他の経営の専門的な本を読んでいるが、いま一つよく理解できないという趣旨だった。立ち話なので詳しい話をしたわけではないが、理入と行入の話を亮さんの事例を挙げてお話しした。三七歳の青年だった。生き方を見直してここで就農を始めているらしい。

大学を中退して田中さんのところで働いている青年

その場にいたもう一人の色の青白い手伝いの青年に会った。歳は一九歳だという。三〇分ほどいて解散ということで、私は久世さんと自給の村に移動することになった。青年も同じ車に乗った。その青年がどうして田中さんの仕事を手伝っているかという理由は皆目知らなかった。自給の村に着いて軽い昼食をとりながら話を聞くと以下の通りだった。

名前は池田樹亜(ジュア)君という。埼玉県から豊富に移って二週間ぐらいだという。名前は両親がタンザニアに新婚旅行でいったこともあって(海外青年協力隊だったか?)兄姉がいて長男は新波(シンパ)、姉は舞亜(エンア)という。名前からして何か曰くのありそうな家族だが、樹亜君は小学校から高校卒業まで野球に親しんでいた。

大学はマレーシア・クアラルンプールに決めた。選んだ学科は心理学だそうだ。心理学を選んだ理由は学生時代の野球部の経験からメンバーを理解し力を結集させるには部員の心理的な要因が大事だと感じたからだと。

 

大学をやめる

留学直前にコロナに見舞われた。渡航できないこともあってオンラインでの授業を一年続けたが、今年になって同じことを続ける意味を見いだせなかった。この状況を打破したいと思った。中退を決意し両親に相談した。ら、かつれお母さんの友人と一度北海道を訪ねて久世さんに会ったことがあったそうだ。久世さんが子弟の教育や生き方については緑むせる創造で紹介しているが四十二歳で兵庫県の山奥おくから移住してこの地で酪農のみならず 三人の子供たちを自立させ、今福島原発の子供たちの保養鵜目的に自立の村を立ち上げた。 結果的にこの地に樹亜君はたどり着くことになる。

十九歳の青年の未来

二時間ほど話を聞いた。不思議と人を惹きつけるものがある。野球部を小学校から続け高校で行き着くところが心理学、海外留学して学ぼうと思ったがアメリカは授業料がべらぼうに高い。いろいろ調査してマレーシアに決めたという。このあたりの視野の広さは私達とは時代の背景が違うとはいえダイナミックだ。十九歳。ざっと私とは七〇年の歳の差がある。若いときの二~三年はどうということはない。今できることをチャレンジしてみて楽しんで見ることだ。若いときから自分が何に向いているか自覚できる人は全く少ない。スポーツで鍛えられクラブでのリーダーとして体験したことは彼の今後の資質に大いにプラスするだろう。

久世家の大家族・四家族+孫七人

その夜家族同士が月に一度ほどの集まりがあった。久世さんとのジンギスカンの食事もおわり、その席に顔をだした。写真をみていただくとその偉大さに圧倒される。