脳力開発163号/理念の時代を生きる163号

脳力開発164号・福島原発視察記・絶対必然即絶対最善 

■視察の経緯・根本鎮郎氏 

2015年3月福島原発の被災地を訪ねた。2011年3月の東日本大震災の後、福島復興に名古屋から毎月1~2週間通っている根本鎮郎氏に案内をお願いした。根本さんはふるさと復興のためという思いから、放射能汚染を自然界の力で何とか低減できないか?竹と微生物で放射能を低減できるのではないか?というテーマで「うつくしま、福島福幸プロジェクト」をスタートさせ3月11日直後から、ふるさとの福島に毎月のように通い、竹パウダーやミネラル類、微生物等で放射能汚染された土壌の改良を施している。 2011年から飯舘村の畑を借用し実験をスタートさせた経緯がある。

2021年1月初め産経旅行社の福島原発の視察ツア-の案内があり直ぐ参加を決め参加費も直ちに振り込んだが、コロナの関係で2月、3月二度とも延期になった。10年間ふるさと復興活動を続けている根本さんに原発視察のことを話して、私は先に視察をするがそのあと、知人達との福島原発視察および被災地の現在を案内していただきたいと依頼していた。

「東電福島原発事故自己調査報告」細野豪志著

訪問に当たって次の本を読んでいた。元原発事故終息担当大臣だった細野豪志著、社会学者関沼博編の「東電福島原発事故自己調査報告」サブタイトル深層証言&福島復興提言2011+10を読んで行った。細野氏は歴史法廷で罪を自白する覚悟を持って本書を書いたと帯に認めていた。章立ては第一章最前線の闘い(対話)第二章10年経った現場へ(対話)第三章福島のためにわが国が乗り越えるべき6つの課題。343ページで構成されている。是非ご一読ねがいたい。その他構内作業の実体験を書いた竜田一人氏のいちえふ・福島第一原子力発電所労働記を読んでおいた。勿論映画FUKUSSHIMA50は見ていたが。

■帰還困難区域・中間貯蔵施設現場視察 

福島第一原発視察の前日、被災地帰宅困難地域を視察した。特別に大熊町住民の一時帰宅という名目で通常は立ち入りできない中間貯蔵施設の現場です。案内は大熊町ふるさと応援隊の元理事長渡部千恵子さんにお願いした。ご自宅まで先導していただきました。立ち入り禁止区域に入りには事前の書類と中間貯蔵地域を出るときには今回の放射線量も測定されます。平均0.5から0.8マイクロシーベルトでした。一人一人の靴の裏を図ります。

中間貯蔵施設の地域には黒いフレコンパックが山のように積まれています。中間貯蔵運搬車両と長い運搬専用ベルトコンベヤーで運ばれています。10年のあいだにいろいろな設備も出来上がっています。

自宅は避難当時のままで、倉庫にあったコメは猪にシャッター破られ食い荒らされ三度も盗難にあったとお聞きしました。前回2015年視察した時も盗難にあった話を思い出します。双葉町大熊町と帰宅困難地域はつづき道の両側は立ち入り禁止でガードマンが立っていて勿論入れません。

 

中間貯蔵地域

ベルトコンべアー

渡部さんの自宅

■福島第一原子力発電所視察 

廃炉を進めて福島原発は10年の時間が経っている。現場に行く前に次のような点について説明してくれた。一号機から四号機までの状況を資料とプロジェクターを使って丁寧に説明してくれた。①港湾内外の放射性物質の濃度の変化、②汚染水と原子炉循環冷却の概念図、③汚染水対策の3つの基本方針、④汚染水発生量の低減、⑤労働環境の改善、⑥中長期ロードマップと実行計画の概要を解説してくれた。

★構内の位置関係と視察経路図  

そのあと、一人一人線量計をつけバスに乗って構内を巡回した。発電所構内は現在、96%が一般作業服による作業が可能なGゾーン、残りが防護服と全面・半面マスクで作業するエリア、Yイエローゾーン、防護服と全面マスクで作業するRレッドゾーンになっている。竜田一人氏のいちえふ・福島第一原子力発電所労働記を読むと福島第一原発に入るときは何重も厳重な防護服を着用していた当時から見ると、今は96%が一般作業服で可能になっている。

 

■一号機から四号機が一望 

構内の青い③の位置から一号機から四号機が一望できる高台で係員の人が各原子炉を丁寧に説明してくれる。10年前テレビで見た水素爆発を起こした第一号機は今も無残な姿を晒している。距離的には200米も離れていないだろう。四号機では燃料体1535本はすでに取り出し完了し、三号機も566本の燃料体も取り出し完了している。

一号機は大型カバ-の設置完了予定が2023年、燃料取り出しは2027年から二号機の燃料取り出しは2024年からの予定とのことだ。二号機が水素爆発しなかったのは壁面のパネルが一部剥がれ落ち水素ガスが外に漏れたためらしいが、新たに燃料取り扱い設備を設置したからの作業になるとのこと。今年の暮れから廃止措置終了まで30~40年かかるという長期ロードプランを聞くと気が遠くなる。

 

■現地情報・処理水の処理トリチウムの問題 

バスで巡ったあと、再び説明会場に戻り「トリチウム」の処理した現物を見ながらまとめをきいた。丁度私達がうかがった日は政府が処理水の処理について政治的決断を翌日に控えていた。13日、2年後を目処に処理水として放水する決定を政府はした。韓国中国は早速ハンタイを表明してきた。国内からも漁業関係者は放水反対を表明している。風評被害がその一番の要因だが。立憲民主党が民主党として政権にいたときに起きた福島原発水素爆発事故がおき、その対応をしてきたのが当時の政権の担当者細野豪志氏だった。

★科学が風評に負けるわけにはいかない。処理水の海洋放出を実行すべきと細野氏は著書の中で書いている。事故当時の責任者であった細野氏は原発事故直後、線量の高い水が海に流れ出るのを止めることができず世界から厳しい批判にさらされた。現在、処理水は当時とは全く比較にならない。福島の県民世論は依然として厳しいが伊澤双葉町長は「危険なものだから、そこに置いているという新たな風評被害つながる」吉田大熊町長は「また大地震があった場合、タンクがひっくりかえって流れだす被害も心配。住民帰還の足かせになる」と発言している。楢葉町の議会も処理方法の早期決定を求める決議が採択されている。

 

★セシウム吸着装置→淡水化装置→ストロンチウム処理水→多核種除去設備→多核種除去処理水(貯蔵タンク)と順次処理され、貯蔵タンク現在1050程度もあると聞いた。現在のタンク貯蔵箇所はかつて緑豊かな森であった。

保管されているタンクの水をそのまま海にだすという悪質なデマ

4月13日に政府の発表に対して前述したが早速反対した国もあったが、処理水=トリチウムの世界的な基準数値を基に処理すべき課題だ。(ここでは詳細は措く)

科学的な根拠に基づいた処理

今回の視察で感じることは、科学的な根拠に基づいた上で、国内はもとより海外についても継続して情報発信をしなくてはならない。国を挙げて冷静に情報発信をしなくてはならない。私達は今回視察することによって、現場の情報を体感した。そして今なお今後も30~40年にわたって廃炉作業に精魂を込めて働く人達の姿をみた。

 

■逆境から立ち上がる人々 

10日から11日にかけて会津から飯館村や被災地、いまだに立入禁止地域も巡った。その中で今回特筆すべきは会津電力がある。勿論その他の活動現場や人々にもあってきた。

■会津電力株式会社・理念・エネルギー革命による地域の自立 

地域内で資金を循環させ、地域自立を実現することがわたしたちの理念です。福島原発後、原発に依存しない再生可能エネルギーによる社会づくりを目指して会津地域の有志が集い2013年8月1日に設立。地域の資本と地域の資源を活用し、安全で持続可能な再生可能エネルギーの普及とその事業をおこない、多様な地域分散型エネルギーの創造と、その提供を通じて地域の経済や地域文化の自立に向けた地域社会の創造を事業とする。

会社案内にこう認めている。「国や東電を批判するだけでなく、原発を見過ごしてきた責任として、太陽光、小水力、木質バイオマス、地熱、風力等の再生可能なエネルギーを、他地域から運び込むのではなく、まず私たち自身で作り出そう」このような活動を通じて次世代の子供たちや孫たちに「社会は自分たちの手で変えることができる」という実感と共にこの地域を手渡していくと謳っている。(会社案内より引用)

 

■までい工房・美彩恋人・渡邉とみ子様 

「までい」という言葉は飯館周辺の方言で「丁寧に」とか「心を込めて」という意味だそうです。いいだけ村ではこの「までい」の精神が大切にされてきた。復興は未だ道半ばだ。災害は沢山のものを奪ったが、時間の経過の中でその経験により「得たものもある」と感じるようになった。生み出されたたくさんの人とのつながり、励まし、応援が何よりの宝だ。これからも手間を惜しまずおいしいものを皆さんに届けたい、と渡邉さんは言われる。

私達のためにお弁当を作って下さった。そしてお話しもお聞きできた。

■いいたてゆい農園・代表・長正増夫様 

根本さんが原発被災地で除染実験を行うために全村避難をしている飯館村を選び、知人の紹介で元副村長であった長正増夫さんに出会った。畑をお借りし2011年7月より実験を開始した。2012年7月から飯館村の村民有志とともに自主的な除染実験や県、国、東電に対して種々の働きかけをやってきた。飯館復興志士の会として現在までお世話になっている。

いいだて結い農園は「安全・安心」を基本理念に自然に優しい農法、身体によい食材を造るため農薬や大型機械に頼らず農村の伝統的な「結いの精神」で手間と暇を惜しまず安全安心なのものづくりを心がけている。また、放射線測定や実証栽培を福島大学や研究機関共同で行っている。

今、老齢化している自分たちにできる「えごま」づくりに積極的に取り組まれている。飯館村道の駅で販売されている、えごま油、えごま入りビスコッティ、じゅうねん(えごまの実)を商品化されている。勿論私達も喜んで求めてきました。「えごま」は福島県の放射線測定で基準をクリアしている。

 

■もーもーガーデン・人と、動物と、自然すべてが、生き生きと輝く空間を作る 

 原発被災地で飼われていた牛たちが殺処分を免れて保護さている場所。11頭の牛たちが約七町歩の荒れた田畑の草を食べ美しく保全している。牛糞効果により土地も肥沃に新しい循環農業の場として広めたいという希望をもって取り組んでいる。根本さんは2015年から支援をしている。ジャングルのような草木で荒れていた土地が草原のように美しくなり牛も自然の草をたっぷり食べ元気にのびのび生きている。恐るべき除草力といえる。http://moomowgarden.or.jp

 

■絶対必然即絶対最善

東日本大震災・福島原発が起きて10年の時間が経過した。振りかえるとあっと言うまだ。

掲題の箴言はドイツの哲学者ライプニッツの言葉だと森信三先生から教えられた。人間は如何なることが身に降りかかろうとも、その事は避けることはできない。さすればその事は即ち自分にとって必然であり同時に最善であると信ずることだと。

私も間もなく78歳を迎えるが、この箴言どおり生きてきた人達に沢山お会いした。大震災のなかでもそう生きてきた人達をみた。災害の多い日本人は長い歴史のなかで必ず立ち上がってきた。今回の福島視察の旅でも、文字どおり立ち上がる人達に出会った。会津電力を立ち上げた会長佐藤弥右衛門氏、社長山田純氏達80団体ほか各地に理念を掲げて立ち上がり困難を超えて活き活きと生きている人達がいる。

今回の案内人根本鎮郎氏は10年にわたる福島福幸プロジックトを続けている現場から立ち上がる人達に出会い支援してきた。彼は視察の後「原発事故のマイナス面だけでなくプラス面も沢山あります。人々の生き方、考え方にも多大な影響を及ぼしてますね」と語っている。正に福島原発の現場の中で体感した言葉だ。

今回も私は福島第一原発による被災地の人達、廃炉に力を尽くす東電の現場で働く人達の姿に不屈の日本人の精神と行動力を見た想いだ。森信三先生のこの箴言・絶対必然即絶対最善に納得した。

■三現主義・現場・現物・現実 

問題解決のヒントは現場にある。必ず現場に行く事だ。情報化社会でこそ大事なことは三現主義だ、机上ではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識した上で問題の解決をはかる。是非若い経営者の人達に視察して貰いたい理由はここにある。

  • 今回友人の息子高校一年生が参加した。彼は小三から数年天命舎で合宿研修に参加した。今年高校に進学した。彼の感想文の一部をお見せします。★以前、津波の被害を見に行ったことがありました。その頃は、まだ僕も小さくて良く分からず「凄かった」という印象しかありませんでした。ですが、ようやくこの歳になりだんだん分かるようになってきました。三日目の福島第一原発では、東電の方々の詳しい説明を聞いて放射線のことなどが良く分かりました。タンクのなかの処理水にはビックリしましたが説明のなかでタンクの増量も難しいことを知って納得しました。根本様、今回の視察、人生で初めて原発を自分の目で見られました。本当にありがとうございました。これまでは、すごく原発が怖かったのですがこれからは、過度に怖がらず知識を身につけて正しく怖がる事が大切だと思いました。

★可能な限り日本人の一人でも多くの人に訪ねて貰いたい。若い人に行ってもらいたと切に感じている。(悦司)

 

理念の時代を生きる164号・孤高の画家田中一村を訪ねる 

奄美大島にある田中一村の美術館を再訪した。3泊4日のスケジュールだったが、その間3回美術館を訪ね彼の絵を堪能した。田中一村のことを知ったのは2010年8月21日から千葉市美術館で開催されていた「田中一村・新たなる全貌」の紹介をNHKの日曜美術館で見た。彼の絵に驚き、すぐに千葉まででかけた。

250点の作品が展示されていたが、私達の関心はいずれも彼が奄美に移住してから描いた作品が中心だった。その作品は善子が制作しているパナマサンブラス諸島の原住民がつくる原色を使った飾り布の激しさに似ていた。画集も買い求め彼の評伝なども買い求めて読んだ。生涯を知るにつけ強く私達の心を打つものがあった。そして直ぐ奄美大島の一村美術館を訪ねた。

一村の生涯

彼の生涯を簡単に振り返ってみると明治40年1908年栃木県に生まれ父は稲村の号をもつ彫刻家だった。後に一村に影響を慕えた姉喜美子は幼少のころから芸事でも突出した才能を秘めていた。一村、幼名孝は成長するにつれ絵画に非凡な才能をみせていた。稲村は孝に米村という号を与えた。

大正15年芝中を卒業後、東京美術学校日本画科(今日の東京芸術大学)に進んだ。同期入学者20名の中に東山魁夷、橋本明治、加藤栄三、山田申吾が名を連ねていた。開校以来の秀才ぞろいという評判だった。しかし、結核再発や経済的理由もあって入学してまもなくやめることになる。米村の才能を惜しんで学校側も授業料免除などの態度を示したが、自分の目指すべき画道と校風に相いれないものを感じ始めていた。

50歳から奄美

奄美にわたる経緯はここでは省くが、奄美にわたって以来、大島紬の染織工を勤めながらお金をためて作品を書くことに没頭した。数々の作品を遺しながら68歳で一度心筋梗塞になる。前年彼の全作品を一度千葉に運び作品を知人たちにみせる。その作品を再び奄美に持ち帰った一村は、奄美大島の僻村の粗末な家で夕食の準備をしている時、心不全に襲われひっそりと昭和52年1977年69歳の生涯を閉じた。幼いころは神童と言われ、長じて天才画家と仰がれたが、画壇とは相容れず長年住んだ千葉から一大決心もとに一人南海の島に渡って以来極貧の生活に耐え、孤独のうちに亜熱帯の動植物を描き続けた。画壇からは忘れ去られた異端の画家。

一村の作品

私達が知るところの日本画とは全く違うといってよい。一村が親しんだ南画や日本画の伝統を超越して南国の動植物が織りなす幻想的な美と貧しさに徹して自分の芸術に殉じた求道者とも言える激しい生き方に強く惹かれる。南国の濃密な生命力あふれる幻想的な絵画世界に目を奪われる。

ゴッホに感ずる共感

私達の好きな画家はゴッホなのだが、2006年から彼の作品をみるために三度にわたってオランダアムステルダムのゴッホ美術館はもとよりアッペンド-ルのクレーラーミュラー美術館も何度も訪ねた。そしてゴッホの生誕地からパリのモンマルトル、ゴーギャンと共に過ごしたアルルなども訪ねた。最後は彼の終焉の地オーヴェル・シュル・オワーズまで訪ねた。初めて作品を見たときそのゴッホとのある種の共通点を感じた。そして田中一村の生涯を知るにつけ益々私達に一村の生き方に魅せられた。

MOLAの作品

善子は前回、奄美の田中一村を訪ねてから、南国の森をテーマにMOLAの作品を数点創作した。タヒチや沖縄の南の国の植物にはエネルギーが強い。今回も一村居住跡地で俵さんという方に出会い親しくなった。継ぎなる作品を期待している。(悦司)

 

理念制定式 

 理念制定式を今年も開催した。昨年に続いて二名の経営者が誕生した。今日に至るにはそれぞれの理由があるが経営者としてのキャリアを積んだ上でそれぞれ人生理念に出会えたことは、支援した私の喜びである。式には若手経営者8名および彼等二人を支援し続けてくれたN社の社長達が参加してくれた。

N社は企業理念を制定して17年経過している。自立連帯経営を行い7社の社長を誕生させた。そのうち彼等から4名が人生理念探究に到達した。この事は本体に企業理念が存在することの効果だ。

理念制定式の後、8名のコロナに遭遇した昨年一年間の快労報告会を行った。年齢37歳から最長60歳。一人一人が自社および自身の理念に添った経営の実践を語ってくれた。困難をものともせずそれを快労にかえる体験は誠に痛快至極だ。

最後に大和先生から経営の基本と魔の三段落ちという講話をしていただいた。

経営の基本と魔の三段落ち

理念のある経営と、理念不在の結果疑似理念がはびこり疑似理念がもたらす弊害を魔の三段落ちといい、以下のプロセスで企業が陥る背信体質に至る、というお話しだった。

  • 疑似理念   利益本位 → 利己主義 → 背信体質
  • 理念企業   理念本位 → 公益志向 → 社会の宝

脳力開発162号/理念の時代を生きる162号

脳力開発162号・日本人はゆで蛙になる 

世界のニュースを日本人は何も知らない  

3月の理念実践会で谷本真由美氏の本を取り上げてみました。参加者は各自ポイントレビューし和談しました。著者は現在ロンドン在住一児の母。元国連職員。1975年、神奈川県生まれ。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。日頃海外に対してほぼ無関心に近い日本人に対しての警告がかかれている。

■はじめに

一、日本は島国であるがゆえに、多民族の情報の流入が限られる国でした。しかし現代は、通信技術やさまざまな科学技術の発達し、インターネットを介しては「世界はひとつ」とも言われる時代です。日本は、他国との情報の往来にはいつまでも透明の障壁が存在しています。それはなぜでしょうか。P4

二、ひとつは、日本のメディアが非常に閉鎖的であるということ。もうひとつは、そもそも日本人は海外のニュースに興味を持っていないということです。事実を直視せず重要なことを見逃している日本人は、ぬるま湯のゆでガエルです。たくさんの選択肢を失い、膨大な損失に苦しめられることになるのは目に見えています。世界のニュースにしっかりと目を向けて一人ひとりが意識を変えていくことが大切です。P5

 

 

■なぜ世界のニュースを知らないのか  

  • 日本の「トップニュース」に外国人は驚いている

一、外国人あるいは海外滞在人歴の長い日本人にとって日本で驚くことのひとつが、テレビや新聞で報道されるニュースがずいぶん違うことです。日本では、国際的なニュースはマイナー扱いで、国内の日頃の生活にかかわることや、ゴシップ的なことでも大きくニュースに取り上げられている。海外ではクオリティペーパーのトップニュースには国内外の政治経済のトピックが多く、日本のようにスポーツ選手や芸能人の話題など一切登場しません。

  • 「偏った情報」ばかりなのは誰のせいか

二、日本では大手一流新聞であっても報道される情報は国内のものだけになるなど偏っています。なぜそうなるのか、読者や視聴者である日本人が求めているからです。ではなぜ日本人が求める情報はこれほど偏ってしまうのでしょうか。

日本の国内市場がある程度大きいということ。国内市場だけで食べていけるので海外のことを知らなくても困りません。

日本は隔離された島国です。外国人はほとんどいません。海外の情勢など無関係、興味を持つわけがありません。

③日本人は「長いものに巻かれろ」体質の人が多く、自分の人生にシビアな目をもって向き合わず、危機感を抱くことがない。受け身の日本人には日本経済が置かれている状況にも無関心で、楽観的な意識を持っている人が多いのです。実はこれが一番憂慮すべきことかもしれません。

  • 外国人にとって常識的なことを日本人は知らない

三、海外では常識的に知られていることでも、日本人が知らないということが多々あります。

①ひとつ目に、日本が海外でどのように受け止められているか、どのような評価なのか、日本人は知りません。すでに経済成長が終わり、世界でも最も早く高齢化と少子化という問題に直面する大変厳しい状況に置かれた先進国である、と世界では見られています。

②ふたつ目は、日本人は「欧米」という単語を使いたがり、アメリカと欧州をいっしょくたにして物事を考えがちですが、実際は国によって大きく異なるということも、日本以外の先進国では常識的なことですが、日本人は知らない。

③三つ目は、欧州や北米で一般大衆の権利を守るポピュリストが支持を得ている理由です。フランスは大変な階級社会での格差の実情など何も知らず、上辺だけのイメージに捉われて黄色いベスト運動や移民問題などの事実を把握していない。

■世界の政治を日本人は何も知らない  

  • 所得格差が激しくなる一方のアメリカ

一、ホワイトカラーに要求されるスキルがどんどん専門的かつ高度化し、高い報酬を得られる仕事は金融やITなど専門性が高い業務に絞られつつあります。一方、かつては終身雇用を提供していたような製造業や事務職の仕事が激減してしまったり、海外に業務を委託したりするようになって以来、安定した中流層の仕事は減る一方なのです。P55

  • アメリカ人のほとんどが貧困層という現実

二、25%のアメリカ人は保守派で、先進的な改革派は8%に過ぎず、残りの三分の二はどの政治的信条にも属さない人々です。その人々が、日々の生活や過激な政治的主張による国の分断に疲れ果てているといいます。全体の80%はポリコレ(人種や差別、民族などによる偏見や差別を防ぐ政治的正しさという概念)に反対です

■世界の「常識」を日本人は何も知らない 

  • アメリカに対抗したいEU―一その顛末は

一、EUは20世紀末になると加盟国の国籍保持者であれば域内のいずれにおける労働お

よび居住も認められるようになりました。アメリカに対抗できるように経済を活発化

させようと目論んだのです。結果はイギリスやドイツなどの豊かな国に人が集まって

しまい、貧しい国が過疎化するという状況に陥ってしまいました。もともと文化も経

済レベルも異なる、完全な異国の集合であった欧州で、連邦政府制度のようなことを

やるのは無理があったのです。89

  • 難民騒ぎで崩壊寸前!無責任過ぎるドイツ
  • 移動と居住の自由が保証されている欧州域内に難民が押し寄せるようになりました。ドイツが見栄を張ってわが国は誰でも受け入れますと言ってしまった。EU統合でさんざん儲けたうえに、ギリシャの通貨危機も解決していないのに勝手に難民大量受け入れを決めてしまい、挙句、自分のところでは全部無理だから他の国も面倒をみろ、と一方的に要求を押しつける態度は傲慢なドイツそのものです。92
  • ドイツのこういう無責任さと傲慢さは周辺国を激怒させただけに過ぎません。もともと仲が悪かった国々が集まったEUは、ライバルであるアメリカにも対抗出来ず、ジャイアン状態のドイツが好き勝手やってしまったので崩壊寸前。一足先に抜け出そうとするイギリスのような国も出る有様です。93

■世界の「社会状況」を日本人は何も知らない 

  • 多文化主義を否定するようになった欧州

シリアの戦闘が激化するにしたがい、欧州にはたくさんの難民が押し寄せるようになり、

それと前後して顕著になってきたのが、宗教や人種の多様性に疑問を抱く流れです。リベラルで穏健派と見られていた国でさえ、そのような懐疑的な考え方をかなり強めている。112

二、ヨーロッパの国々は文化基盤が異なる移民をこれ以上受け入れたくないのです。政治的

には正しくないので口には出しませんが、これが本音です。チェコやハンガリーなどの

東欧諸国は「自分の国が外国みたいになってしまうのは困る。ここはヨーロッパだ。キ

リスト教徒だけを受け入れる」と言い切っています。114

  • 男女別の講義をしろという圧力に悩むイギリスの国立大学

一、ドイツ以上にリベラルで、自由主義を愛するイギリスも価値観の衝突に頭を抱えてきま

した。イギリスの国立大学では、保守派のイスラム教徒が男女別講義を求めることが、

男女差別と信教の自由をめぐって議論になっています。男女同権や差別禁止は国の根

幹である民主主義に沿った原理原則であり、信教の自由や表現の自由を盾にひっくり

返すような要求をされるのは困る、と考える人が大半です。116

  • 過激なイスラム教徒に乗っ取られたイギリスの公立小学校

一、イギリスでは市内の公立学校でイスラム過激化思想を広めるために、様々な陰謀が企て   られているという密告を受け、教育省や元テロ長官が調査に乗り出すと事件が起きました。二十一校に監査が入った結果、そのいくつかがイスラム教に極度に偏った教育を施しているなどの問題が発覚したのです。この件で中央政府は「公立学校ではイギリス的価値を教育するべき」という基本方針を強調しました。118

  • ニカブ着用問題で揺れる欧州

一、フランスでは2010年に公の場で顔をほぼ完全に覆い隠す装束の着用を禁止しました。一部のイスラム教の女性が着用する、目だけを出して顔や全身を布で覆う「ニカブ」

という衣装などがそれに該当します。国連は、フランスのニカブ禁止令は女性が信教の

自由を行使するための人権を侵害しているという決定を下しましたが、ニカブ禁止令は現在も有効ですが、テロや女性の人権をどう定義するべきかという議論で揺れる欧州各国には頭の痛い問題です121

世界の「教養」を日本人は何も知らない 

  • 日本「パスポートの自由度」世界一

一、そもそも国の政情も治安も安定していて、かつ一九八ヵ国(二〇一九年七月現在)も

の国にビザ不要で渡航できる日本国籍を捨ててまで、ほかの国籍に変えるメリットは

大きくないはずです。ちなみにイギリスのコンサルティング会社「ヘンリー&パート

ナーズ」が発表している、ビザ不要で渡航できる国や地域の数で

をはかるランキングでは、二〇一八年と二〇一九年の二年連続で日本のパスポー

トが堂々の一位。つまり日本のパスポートは世界最強ということです。P169

  • 幸福を決めるのは、お金でなく仕事のうえでの自己決定権

一、オックスフォード式の心理的幸福感を測る質問を用い「所得」「学歴」「自己決定」「健康」「人間関係」の五つがいかに幸福感との相関性が強いかについて分析を行いました。その結果、人生の幸福度を決めるのは学歴や資産ではなく「自己決定権があるかどうか」という驚くべき結論が導かれたのです。この自己決定権というのは、つまり自分でさまざまな物事をきめることができるということです。P186

■世界の「国民性」を日本人は何も知らない 

  • アメリカ人、実は……信仰心がとても強い

一、日本では普段の生活でも宗教を意識することはほとんどない無神論者が大多数でしょ

うが、アメリカの田舎や保守的な地域では宗教がしっかり根付いています。これは田

舎のほうだけではなく都会、リベラルな人々にさえも大きく影響しています。p194

二、欧州では、たとえ保守的な国であっても信仰心が薄れている人が多く、欧州の西側、

例えばスコットランドでは倒産してしまう教会が続出しているほどです。p196

  • 欧州人、実は……読み書き計算さえヤバイ

一、日本の場合は初等教育から漢字の書き取りや算数の計算をきちんとやるので、字が読めない、九九ができない人はかなり稀です。ほかの国の場合、先進国であっても格差がすさまじく、こうした基礎的な学力が身についていない人が大勢います。p199

二、日本は大学進学が最も容易な国で、54.7%という進学率は世界最高の割合といえます。学費が北米やイギリスよりはるかに安いのがその理由です。アメリカの多くの若者は大学卒業時に一千万円以上の学資ローン、つまり借金を抱えた状態となります。p202

 

理念実践会

理念実践会「世界のニュースを日本人は何も知らない」の感想  

  • 「世界のニュースを日本人は何も知らない」のポイントレビュー輪読・和談で感じたことは、第一に昨今のネット普及による情報が蔓延している社会でも、この本に書かれているような内容は自分で求めないと入ってこないということでした。日本人は体質として受け身の部分があるので、何もしなくても入ってくる情報に偏らないで、自らが知識を求める姿勢を持つことの重要性を感じました。

情報についても、その情報をどのように判断するかという力を養うことも、これからの時代には特に必要になっている。そういった意味では移民問題について和談をし、そこに至るまでの経緯や現在欧州で起こっている問題は「自業自得」だという見方を学べた。一つの問題を見る時には、その問題だけを見るのではなく、そこに至るまでの時代背景や過程を知ることが大事だと改めて思いました。

  • アメリカや中国・韓国に対しては少なからず関心があったが、その他の海外についてはほとんど意識をしていなかった。他国から日本がどう見られているか、どのように思われているかなどは考えもしなかった。アフリカは資源が多く豊かな国であるはずなのに、植民地化されていた歴史により海外企業や利得権利者に独占されている事実があるという。

日本も敗戦国としてGHQの戦後教育や朝日を筆頭とするマスメディアによってコントロールされてきた過去があるが、危機感を抱くことがなく、他国の都合の良いように操られてきた楽観的な現実の日本であることも自覚しなければならない。F氏

  • 今回の『世界のニュースを日本人は何もしらない』は、すべてをそのまま鵜呑みにはできませんが、それでも海外、外国人から日本や日本人がどう見られているかという事や、普段はあまり知ることがない、ヨーロッパの国の国民性などが垣間見ることが出来た。世界を相手にするには、我々は他の国の事をあまり知らないし、日本人として足りない部分や欠けている部分がある。外国やそこに住む人たちの国民性や特性を知って対応することが大切だ。
  • 著者は世界の国々の情勢が刻々と変化しているのに、自国の日本では何も知らずにのほほんと過ごしている、その様なことではいつか日本がそのことに対応できない国になってしまう、取り残されてしまう、そのことを憂いている。世界の状況をあまりつかみ切れていないという状況はある。先日まで中国が世界中にその影響力を及ぼそうとしているということを知らなかった。正確な情報を掴むということは、必須であると感じた。と同時にあらためて、自分たち日本のことも世界に発信されていないのではないかと感じました。
  • 「JAPAN Forward」、「世界のニュースを日本人は何も知らない」を学ぶ中では、我々は改めて正しい歴史認識を身につけ、それをきちんと伝えていく必要があることを、何が本当に正しいのかを自ら判断できる力が必要であることも。

東日本大震災以降、「日本人は素晴らしい」と言った報道を見る機会が増え、そのことにより「日本とはいったいどういった国なのか」と世論の関心が高まっているのも事実です。そのような中、戦後の教育で教わってきた日本、日本人を見直す機会も増え、良い方向へ向かい始めていると感じていました。著書の中で、「日本は素晴らしい」とだけ感じていると、「ただのゆでガエルになってしまう」と警告されており、もっと広い視野で物事を判断する必要があり、世界の情勢にも関心を持つ必要があると感じました。

理念の時代を生きる162号

日本を貶めるフェイクニュースを論破する

この本の中で、第一話から第十三話まで海外の日本に対するフェイクニュースを取り上げいる。その中の一部を今回記してみたい。海外はかくもこのように日本に関する情報を流している。これらの誤報に対して丁寧に、真実を伝えている。ここでは省くが、これらの誤報に日本も外務省も今までは反論もしてこなかった。

アメリカを代表する「ニューヨーク・タイムズ」、「ワシントン・ポスト」などの一部有力メディアは反日メディアと評されるほどネガディブ、偏った日本報道を繰り返してきた。日本のメディアは上記のアメリカメディアの引用が多い。日本で一番古くからの世界に向けて発信してきたJapan Todayジャパン・トゥディは誤解を垂れ流す傾向すらあったということです。改めて見直してみます。

■靖国神社を貶めるわけ  

  • 英国の高級紙「タイムズ」紙が報じた靖国のニュースの記事の誤り。長年日本特派員を務めるリチャード・ロイド・パリー記者の記事の見出し「英軍ラクビーチームが日本の戦争犯罪者のための神社を訪れる」と主張。2019年9月18日張。
  • 在日英国大使館のエマ・ヒッキンボサム紙は「タイムズ」の主張を明確に否定した。「英国大使はこれまで神社を訪問しないように指示したことはありません。縁国は日本の伝統と文化を尊重します。私達はラグビーワールドカップのために訪日する英国人観光客が神社を含む日本の文化の多様な面に触れることを期待しています。
  • 「タイムズ」の記事は靖国神社が「ジンゴイズム(自国民族優越主義)と嘘の神社であり、日本の植民地支配を経験した韓国人と中国人に戦慄を与える攻撃的なナショナリズムの倍陽気である」と述べている。p40

■「令和」の意味を曲解する欧米メディア  

  • CNNテレビは「『令和』は権威主義的な意味にも受け取られている。命名が「日本政治の右傾化を反映している」というテンプル大学ジャパン・アジア研究学科ジェフ・キングストン教授のコメントを報じている。「和」という漢字が選ばれていことは第二次大戦時の元号「昭和」を想起させ「日本の戦時中の過去をより前向きにとらえようとする安倍首相の意図にそったものかしれない」と指摘。
  • 英BBC放送も令和の「令」が「命令する」という意味があると伝え、米国のインターネットメディア、デイリー・ビーストに至っては「日本は新しい時代を迎えたが、安倍政権のもとでは未来は暗い」などと伝えている。
  • 『ニューヨーク・タイムズ』は天皇陛下の即位礼について、ユニークな文化や伝統をたいせつにしようとする日本を笑い、欧米よりも劣っているかのような報道をしている。95
  • 国内の英語メディア、ジャパンタイムズやジャパン・トゥディの英文記事は、日本の文化を貶める英文記事を盛りだくさん記載している。「島国根性」「外国人嫌い」「性差別」「封建的」といった決まり文句や、それよりも酷い事を日本人の筆者が寄稿している。日本文化を貶める発信は日本国民を侮辱し、ヨーロッパの白人文化を逆に高めている。136

 

「JAPAN Forward」のビジョン・2017年6月 

  • 英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」を運営し英語を話す人々に政治・経済・文化・社会などの様々な分野で、等身大の日本の姿や日本の多様な価値観・日本企業・団体・個人による国際活動などを積極的に発信します。
  • 世界にはびこる日本と日本人に対する誤解や偏見を払拭し日本の現在(今)を冷静かつ前向きにそして多元的に伝えることで日本への関心を高め、世界と日本をつなぐ新しいメディアを目指します。
  • 「JAPAN Forward」(ジャパンフォワード)は、良識ある日本の声、等身大の日本の姿を世界に届けるために、産経新聞社の支援を得て創設した新しいインターネットの英語ニュース・オピニオンサイトです。世界が大きく揺れ動く中、日本での主要な出来事や論点、課題、歴史、文化に至るまで、「素顔の日本」を多角的にわかりやすく伝え、日本と日本人への理解を深めていただくことが設立の目的です。

 

JAPAN Todayのビジョン2000年9月刊行 

  • 日本にある数少ない英字メディアとして、一般ニュースから芸能ニュースまでをカバーし、日本国内のみならず、海外に住む多くの読者に日々利用されている。英字ニュースソースとして海外で高い認知度を誇るJAPAN Todayは、国内外の人々に「日本の今」を伝えることをその報道使命としております。
  • しかし、一方で設立者(クリス・ペトロス氏)は以下のように認めている。記事の情報元として週刊実話」「アサヒ芸能」「週刊大衆などの実話誌から多くを引用しており、コメント欄は「あまりにも多くの読者が日本を攻撃するためにそれを使用」と設立者のクリス・ベトロスが認めている通り、外国人による差別的なコメントで溢れている。(ウイキペディアより)