脳力開発161号
死生論 曽野綾子
二月理念実践会で「死生論」を取り上げた。若い経営者たちは輪読・和談では自分の人生をどういった心構えで送るかということ、理念に通じる部分が多いと感じたようだ。読めば納得することばかりで、一つ一つを自分に照らし合わせてみると、まだまだ自分の未熟なことも自覚でき、学びや実践の継続を改めて意識することができた一冊であった、と感想に述べている。
「死生論」の中のとりわけ心に響く箴言を記しておきます。今の言葉だけが先走りする軽佻浮薄な世間を改めて見直してみるのに最適な本でした。(悦司)
■人間の弱さといとおしさ
- 昭和と平成が与えてくれたもの
日本人は、個々の道徳性や哲学の上に生きるのではなく、世間の「評判を評価して」生きる面が強い様に思う。誰しも自分の仕事を高く評価してほしい、という気分はあるが、人間は死ぬまでに、誰に知られなかろうが、本来果たすべきだった任務を果たして死ぬという大きな使命がある筈だ。p70
- 受けるよりは与える方が幸いである
最近の若い人は「受けるのが権利」というふうにしか考えない。与えたら損になると思っている。同様に年寄りにも強欲な人が出てきて、親戚や社会からもらって当然という顔をする人もいる。他人から世話を受けても、感謝を忘れなければ、相手に満足や嬉しさを贈ると言う形で与えている。それが成熟した人間の姿勢だと思う。p74
■「不便さ」の効用
過剰サービスは精神の発達を妨げる
- 便利さに馴れると、子供たちの知能は伸びないし、大人はぼんやりとした創造性のない人格にしかならない。人間には現在ないことを予測する力が要る。予測は主に、どのような悪いことが起きるかを空想できる力である。「皆いい人」などということを信じる教育をしていたら、停電や断水も防げず、交通手段や通信などの安全も確保できない。p83
- 災害の時にどこに逃げたらいいかは、土地の知識と動物的な本能との相乗的な結果でわかる。その才能を発揮しないような過剰サービスをすることが、社会にいいことだという発想を私は取らない。若い人の精神を育てるには大きな毒害になる。p84
貧しさが培った日本人の心理
- 日本の近代を作ってきた要素の中には、貧しかった日本の歴史がある。与えられていない時ほど、人間は奮起し工夫する。しかし、文句のないほど与えられていれば、誰だって努力しないのは当然だ。p85
- 日本でも最近、貧しさはひたすら無意味な悪ということになった。しかしそうでもないだろう。富を求めるのはいいが、それが与えられなかった時には、貧しさの意味を把握して生きるのが、むしろほんとうに豊かな人の暮らしだ。p87
大切なものは「当たり前」の中に
- 一人の人間が、ある土地に生まれ育ち、所属する国家の言葉で、読み、書き、話すことができるかどうかということは、重大な問題だ。これほど恵まれている日本なのに日本語で十分に自分の思いを告げたり、書いた文章で状況を連絡したりすることに自信のない人が現代にはたくさんいる。96
- 日々家族や身近な知人が健康に穏やかに暮らせることは偉大なことなのだ。人を愛する、ということは、身近な存在から愛することである。だから、途上国援助も大切だが、順序としては、家族や友人から幸福にすることなのだ96
■善良で最悪な社会
乞食は何と呼べばよいのか
- 今の日本では、すぐルールを作って、この言葉は新聞では許されない、という形の排除を行う。マスコミの世界は表現の自由よりも、規則が好きなところなのである。私たちは現世に存在するあらゆるものを、自由に表現できなければならない。侮辱するためでも、差別するためでもなく、現実を見極めて、そこからよりよき方角に出発する智恵を持ち寄るためであろう。p123
人生は小さな戦いの連続である
- 人生は小さな戦いの連続なのである。表現の自由がもし許されているならば、大抵のことを口にできる自由も残さなければいけない。その場合も、常識の範囲内、個性として許されるものでなければならない。それに対して女性も、年齢や、態度や、言葉で相手に警告を発することはできる。p139
■どこまでが「ひとごと」か
実利主義者の方が信用できる
- トランプ米大統領について、日本のマスコミは、殆ど無駄な推測をしてきた。トランプという人は大統領になっても軽薄な成金趣味だが、ソロバンを弾く能力はある。軽薄な人道主義を唱えるアメリカのインテリアやマスコミ人より、私はずっと信用している。p153
自己犠牲はきれいごとでは済まない
- 人を救うという事は、一時の言葉だけで済むことではない。本当は二膳食べたいときに、一膳しか与えられていないご飯を、見ず知らずの人に半膳ゆずれるか、ということなのだ。p154
- 私たちは自分の生涯を大切にしなさい、と教わる。しかし皮肉なことに、生涯を捨てる覚悟をしないと、生涯に一つの事業も完成しないことがある。昔はそのような捨て身のお手本がたくさんあった。今は自己犠牲もしない方がいいという。p156
■危機に学ぶ
本能の指令をどう鍛えるか
- このごろの若者たちは、何事によらず、マニュアルとか、上からの指令がないと動けないしい。都庁に新しく勤め始めた青年たちの代表が、小池百合子知事の言葉をオウムのようにまねて「安心と安全」を目ざすというような挨拶をしていて興ざめだった。安心と安全は組織としては大切な心構えだが、それは年寄りの精神的姿勢である。P211
- 船が沈みそうになると、鼠が船外に逃げ出す、という話は嘘か本当か見たことはないが、泳げない私でもとりあえず甲板に出る。セウォル号の場合、先生が生徒に船室に集まるように言ったからだというが、緊急の場合は、「先生の命令になど従うな」と私なら子供に教えておく。P212
「平和な日常」の貴重さを思う
- 平和も反戦も、デモや署名活動やシュプレヒコールで手にできるものではない。人間は、食べられて、大して暑くも寒くもなく眠れて、子供を安全に学校へ送ることができ、日常生活で誰かに襲われるようなこともなく暮らせれば、あまり闘争的な気質も持たないものである。人間は、いい意味で怠け者だと思っている。P224
■職業に適った年齢
順調を羨むことはない
- 貧乏も、病気も、家庭の不幸も、天災も、すべてその人の資質を伸ばすのに役に立つ。経済的に安定した平和な家庭で、穏やかに成長することの方がいいに決まっているが、必ずしも順調を羨むこともない。P242
学校なんていかなくていい
- 新学期になると、子供の自殺者が出るという。学校は、私のような歪んだ心理の子供にとっては、刑務所と同じ、拘禁される場所である。「学校なんかいかなくていいんだよ」とその時、一言いってくれる大人が周囲にいたら、子供たちは決して追いつめられて自殺するような気分にならなくて済むだろう。P245
世の中を動かしているのは二番以下の人たち
- 「一番」は一人しかいない。残る二番以下の人たちの人生が輝いていないのではない。むしろ社会を基本から動かしているのは、二番以下の大勢の人たちの存在だ。どの世界の片隅にも、自分なら生きられる、もしかすると自分を必要としていると思われる場所があるはずだ。P250
人生の目的は人に会うこと
- 人間の幸不幸の原因は、社会や国家の仕組みのせいだと思っている人が多いらしいが、実は半分以上、自分の性格から出ているものではないか。この世に生まれてくるのは、人に会うためなのである。人と出会ってその豊かな才能を見ることが、楽しみでもあり豊かさでもあると、私は終始感じている。P258
理念の時代を生きる161号
JAPAN Forward
■日本の海外への情報発信
英語ニュースオピニオンサント「JAPAN Forward」は2020年6月知ネット通信を初めて4年目になる。私はこのサイトの考え方・姿勢に協賛しています。協賛に至るまでの理由とサイトの姿勢を今回取り上げます。
- 私は個人的には常々日本の世界に向けての対外的な国としての発信は「いったいどうなっているか」と切歯扼腕の思いであった。その事は、私が70歳の歳を迎えて戦後70年を振り返り「戦後70年を検証する」と宣言し、日本の戦後を振り返り始めたころから感じていた。
- 昭和十八年生まれの私は正に戦後教育そのものを受けて育った。日本の戦前の教育を知らないで育ち、大学時代の前後に学生運動も直接、間接に体験している。労働運動も経験し日本の経済復興と高度経済成長そのもの、同時にバブルも体験している。しかしながら日本の戦前戦後について全く学ばないで育ち、このことが澱のように、私の心の中で引っかかっていた。
- 戦後のGHQによる占領政策がいかにその後の日本に影響を与えたかということは知的保留事項だった。以来3年半の研究を経て2018年に「戦後70年を検証する」タイトルで小冊子化をした。その後も「森のフーォチャ」に研究したことを継続的に書いてきた。
■虚偽を認めても姿勢を変えないメディア人
- そのご「何故日本は世界から誤解されたま、国として外務省としても世界に向けて発信しないか」と思っていた。日本のメディア特に朝日新聞は世界に向けては慰安婦問題30余年発し続け、6年前当時の慰安分問題の記事の虚偽を認め、木村社長の退任があったものの、その虚偽事実を世界に向けて訂正はしていない。訂正しないのみか、いまだに日本を貶める活動をやめていない。人間として日本人として恥を知らないかと思う。
- 1991年に執筆した従軍慰安婦に関する元朝日新聞記者の植村氏の捏造情報を指摘した桜井よしこ氏を彼は2015年、名誉棄損、損害賠償で訴えた。しかし、植村氏の訴えは2020年11月18日、最高裁で退けられた。にもかかわらず、反省する姿勢すらみせない。この判決の後、安倍前総理が投稿したSNSに対して「植村裁判を支える市民の会」なるもの事務局長が内容証明つきで通知書を送付したという。
- 国連人権委員会で日本を貶める人達であふれている。自国を貶める人間が世界に向けて間違った情報を発信している。この遠因は戦後のGHQのコントロール下にある時代に、迎合したメディア、弁護士(日弁連の一部)、日本文芸家協会、日本学術協会の一部にも含まれる。戦後75年も経って未だGHQの影響を払拭できていない。
■状況を変える地道な活動
- そんな状況を変えるは、ささやかであろうが、間違った評論に対して継続的に反論を繰り返し証明する以外に方法はない。その活動を目的として「JAPAN Forward」が発足することに私は心から共感と喝采を送った。賛助会員として協賛した。
- スタートから3年経過した。日本発英語ニュースメディアのFacebookのフォロアー数は137万人がフォロー中です。現在トップスリーだ。2月時点ではおそらく二位になっているだろう。一位、NHK200万人二位、JAPAN Today146万。是非ご覧になっていただきたい。
■JAPAN Forwardの基本方針・姿勢
一、日本と日本人を応援する英語メディア
二、「素顔の日本」の魅力を発信
三、「課題先進国」日本の取り組みを伝える
四、双方向型の信頼されるメデヘアを目指す
■ビジョン
- 英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」を運営し英語を話す人々に政治・経済・文化・社会などの様々な分野で、等身大の日本の姿や日本の多様な価値観・日本企業・団体・個人による国際活動などを積極的に発信します。
- 世界にはびこる日本と日本人に対する誤解や偏見を払拭し日本の現在(今)を冷静かつ前向きにそして多元的に伝えることで日本への関心を高め、世界と日本をつなぐ新しいメディアを目指します。
- 「JAPAN Forward」(ジャパンフォワード)は、良識ある日本の声、等身大の日本の姿を世界に届けるために、産経新聞社の支援を得て創設した新しいインターネットの英語ニュース・オピニオンサイトです。世界が大きく揺れ動く中、日本での主要な出来事や論点、課題、歴史、文化に至るまで、「素顔の日本」を多角的にわかりやすく伝え、日本と日本人への理解を深めていただくことが設立の目的です。
- その運営には、一般社団法人ジャパンフォワード推進機構が当たります。私たちは、産経新聞の主要記事をはじめ、良質な記事や論評、動画、インタビューなどをタイムリーに世界に発信し、議論に参加しやすい双方向型のネットメディアコミュニティーの構築を目指します。異論や反論にも一定のルールのもとにスペースを開放していきます。
- 私たちは、日本、そして世界の国々が安全で、共に繁栄する地球を築くことを強く願い、恐れず、偏らず、そして、おもねらず、自由闊達な言論活動を謙虚に展開していきます。「前進を続ける日本」-それが、「JAPAN Forward」のタイトルに託した思いです。日本と日本人を応援する私たちのコミュニティーにぜひ加わってみてください。私たちは、皆さまのご参加とご支援を心より歓迎いたします。内藤泰朗(産経新聞社東京編集局副編集長)
★次号で・「日本を貶めるフェイクニュースを論破する」を取り上げたい。