脳力開発151号・コロナ問題についての各国の対応姿勢
依存人の国、自立人の国
★コロナ問題についての対応の仕方は日本と世界の国は大きく違う。現在の対応の仕方、状況を冷静に見ておきたい。EUに関して、中国から始まったコロナはあっと言う間にヨーロッパに飛んで、とりわけイタリアが凄まじい勢いで広がった。その後EUそのものの存在が問われ始めている。この機会にEUのあり方、アメリカ、中国、台湾そして日本の対応の違いを考えてみたい。
★先ず次の記事に注目したい。産経新聞パリ駐在三井美奈氏2020年4月6日の記事だ。
■EUは命を守るのか 新型コロナで「国境なき欧州」は「鎖国の共同体」へ
欧州連合(EU)で、新型コロナウイルスの感染による死者は4万人を超えた。まるで「戦時中」のような緊迫感の中、首脳たちは3月末、テレビ会議で刺々しい応酬を交わした。
- イタリアのコンテ首相は「コロナ債」と呼ぶユーロ圏共同債を発行し、感染のひどい国々の救済を求めた。「これができなければ、EUは終わりだ」と、必死に訴えた。ドイツのメルケル首相は「むちゃな期待はしないで」と応じない。スペインのサンチェス首相はコンテ氏に加勢し、「今が緊急事態だと分かっていますか」とメルケル氏に食ってかかった。会議は決裂した。
- 共同債は、ユーロ圏加盟国が借金を共有する仕組みだ。発行を求めたイタリア、スペイン、フランスは、いずれも重債務国。これ以上、国債発行ができないので「ユーロの傘」を頼った。実際にはドイツやオランダ、北欧の財政健全国が、負担を肩代わりすることになる。一見すると、10年前のギリシャ危機の「南北対立」が再燃したようだが、今回は人命がかかっている点でずっと重い。
- 新型コロナは、「EU市民の命はだれが守るのか」という問いを突き付けた。その答えはすぐに出た。医療崩壊にあえぐイタリアに、「EU支援団」は来なかった。各国政府は、自国民の防衛に精いっぱい。次々と国境を閉じ、「国境のない欧州」は瞬時に、「鎖国の共同体」に変わった。コンテ首相は「欧州の連帯を示せ」と熱弁をふるうが、イタリアの責任も問われねばならない。
- 2月、北イタリアで集団感染が発覚し、EUで出入国審査を免除するシェンゲン協定の見直しが浮上した際、伊政府は「国境は封鎖するな」の一点張りだった。ディマイオ外相は外国記者団を前に「外国で誤った情報が流れ、わが国の名誉と経済を傷付けている。ここは安全」と主張。観光客を呼び戻すため、ミラノ大聖堂を再開した。今考えると、まるで自殺行為である。
- EUは近年、米中に対抗する「強い欧州」を掲げ、独自の安全保障構築に動いた。だが、安保とは、域外への対テロ部隊派遣や核兵器による抑止だけではない。中核は、市民の生命を守ることにある。EU市民は感染の恐怖の中、「安全を保障してくれるのは国家」だと思い知った。各国で続く外出制限は国民から、就労や教育の機会、集会の自由まで奪った。それでも、独仏両国では約95%が支持した。
- 18世紀、フランスの思想家ルソーは「社会契約論」で、人が生来持つ「自由の権利」を権力者に委ねるのは、自己保存のためだと論じた。民主主義体制で、みんなが大きな自由を獲得した今も、本質は同じ。換言すれば、自分を守ってくれない政体に、誰も縛られようとは思わない。EUは4月7日、ユーロ圏財務相会合を開く。EUがプールした基金を使い、感染被害の大きい国を支援する仕組みが浮上する。一国の債務危機は域内全体に広がるから、経済が絡むと互いに妥協せざるを得ない。だが、ウイルスとの戦争が終わった後、イタリア人もドイツ人も「EUは何のためにあるのか」を問い直すことになるだろう。「欧州の結束」は、平和な時代の掛け声ではなかったか、と。(パリ支局長)
■何を読み取るか
★この記事をどう読むか。イタリアも、スペインもそしてフランスでさえEUとして援助が必要だと言い出した。何故そうなるか。かつてギリシャはそうだった。基本は財政状態の悪い国だ。私に言わせればEU諸国は「寄らば大樹の陰」、ドイツやフランスと一体になったら助けてもらえる。国ごとの自立性はもともと乏しい。その典型がギリシャだった。そしてコロナに関しても、助けてもらいたい。各国は建て直しに真剣な努力をしない。
★今回、5月からミラノに入り汽車で途中、イタリアの村々を訪ね10日ぐらいかけてナポリまで下り、そこからマドリッドに飛び、マドリッドからサンセバスチャンに飛ぶ計画を昨年から立てていた。イタリアもスペインも食は美味しい。加えて陽気で芸術についても豊かだ。その楽しみもあった。旅行者にとってイタリア、スペインは気楽で個人の趣味も楽しめる国だ。規制が少ない。規制が少ないことを誰でも望むが、このいい加減さが今回のコロナの感染速度に比例している。いい加減な国は規制を守らないし個人の楽しみを優先させるということだ。
★難民問題にメルケル首相はドイツ人の利益を優先させてきたが、難民の根本的な課題は克服できなかった。ドイツ人もEUが設立した当時の基本から考えると、自国優先、経済優先になって、EU全体もいい加減になってきた。緩くなってきた。今回そのEUそのものが問われ直されている。
次の記事で、EUのあり方を、EUの中でも、一番規制が厳しいドイツについてメルケル首相の演説から振り返ってみたい。この問題についてのメルケル首相の本心だ。
■メルケル首相コロナに関する演説・自立を訴える姿勢
- 親愛なる国民の皆様、 コロナウイルスは現在わが国の生活を劇的に変化させています。
何百万人という方々が出勤できず、子どもたちは学校あるいはまた保育所に行けず、劇場や映画館やお店は閉まっています。そして何よりも困難なことはおそらく、いつもなら当たり前の触れ合いがなくなっているということでしょう。もちろんこのような状況で私たちはみな、これからどうなるのか疑問や心配事でいっぱいです。
- 私は今日このような通常とは違った方法で皆様に話しかけています。それは、この状況で連邦首相としての私を、そして連邦政府の同僚たちを何が導いているのかを皆様にお伝えしたいからです。開かれた民主主義に必要なことは、私たちが政治的決断を透明にし、説明すること、私たちの行動の根拠をできる限り示して、それを伝達することで、理解を得られるようにすることです。
- もし、市民の皆さんがこの課題を自分の課題として理解すれば、私たちはこれを乗り越えられると固く信じています。このため次のことを言わせてください。事態は深刻です。あなたも真剣に考えてください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、これほど市民による一致団結した行動が重要になるような課題がわが国に降りかかってきたことはありませんでした。
- 私はここで、現在のエピデミック(地域を越えて大規模伝染)の状況、連邦政府および各省庁がわが国のすべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損害を押さえるための様々な措置を説明したいと思います。しかし、私は、あなたがた一人一人が必要とされている理由と、一人一人がどのような貢献をできるかについてもお伝えしたいと思います。
- エピデミックについてですが、私がここで言うことはすべて、連邦政府とロバート・コッホ研究所の専門家やその他の学者およびウイルス学者との継続審議から得られた所見です。世界中で懸命に研究が進められていますが、コロナウイルスに対する治療法もワクチンもまだありません。(中略)。
- 重要なのは、ドイツ国内のウイルスの拡散スピードを緩やかにすることです。そして、その際、これが重要ですが、1つのことに賭けなければなりません。それは、公的生活を可能な限り制限することです。もちろん理性と判断力を持ってです。国は引き続き機能し、もちろん供給も引き続き確保されることになるからです。私たちはできる限り多くの経済活動を維持するつもりです。
- 人から人への感染リスクを可能な限り抑える必要があります。今でもすでに制限が劇的であることは承知しています。イベント、見本市、コンサートは中止、とりあえず学校も大学も保育所も閉鎖され、遊び場でのお遊びも禁止です。連邦政府と各州が合意した閉鎖措置が、私たちの生活に、そして民主主義的な自己認識にどれだけ厳しく介入するか、私は承知しています。わが連邦共和国ではこうした制限はいまだかつてありませんでした。
- 私は保証します。旅行および移動の自由が苦労して勝ち取った権利であるという私のようなものにとっては、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、一時的であっても決められるべきではありません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです。
- このため、国境検査の厳格化と重要な隣国数か国への入国制限令が今週初めから発効しています。 経済全体にとって、大企業も中小企業も、商店やレストラン、フリーランサーにとっても同様に、今は非常に困難な状況です。今後何週間かはいっそう困難になるでしょう。私は皆様に約束します。連邦政府は、経済的影響を緩和し、特に雇用を守るために可能なことをすべて行います。
- わが国の経営者も被雇用者もこの難しい試練を乗り越えられるよう、連邦政府は、必要なものをすべて投入する能力があり、またそれを実行に移す予定です。 また、皆様は、食料品供給が常時確保されること、たとえ1日棚が空になったとしても補充されること信じて安心してください。けれども限度をわきまえてください。何かがもう二度と入手できないかのような買い占めは無意味ですし、つまるところ完全に連帯意識に欠けた行動です。
- 今日私にとって最も緊急性の高いものについて申し上げます。私たちがウイルスの速すぎる拡散を阻止する効果的な手段を投入しなければ、あらゆる国の施策が無駄になってしまうでしょう。その手段とは私たち自身です。まず第一の協力は、今日何が重要なのかについて真剣に考えることです。パニックに陥らず、しかし、自分にはあまり関係がないなどと一瞬たりとも考えないことです。私たち全員の力が必要なのです。(中略)
- 皆様にお願いします。今後有効となる規則を遵守してください。私たちは政府として、何が修正できるか、また、何がまだ必要なのかを常に新たに審議します。
状況は刻々と変わりますし、私たちはその中で学習能力を維持し、いつでも考え直し、他の手段で対応できるようにします。噂を信じないでください。公的機関による発表のみを信じてください。発表内容は多くの言語にも翻訳されます。
- 私たちは民主主義社会です。私たちは強制ではなく、知識の共有と協力によって生きています。これは歴史的な課題であり、力を合わせることでしか乗り越えられません。
私たちがこの危機を乗り越えられるということには、私はまったく疑いを持っていません。けれども、犠牲者が何人出るのか。どれだけ多くの愛する人たちを亡くすことになるのか。それは大部分私たち自身にかかっています。私たちは今、一致団結して対処できます。現在の制限を受け止め、お互いに協力し合うことができます。
- この状況は深刻であり、まだ見通しが立っていません。たとえ今まで一度もこのようなことを経験したことがなくても、私たちは、思いやりを持って理性的に行動し、それによって命を救うことを示さなければなりません。それは、一人一人例外なく、つまり私たち全員にかかっているのです。皆様、ご自愛ください、そして愛する人たちを守ってください。
■日本の根本的問題が露呈
★日本もやっと緊急事態宣言を出した。この時期では遅いと批判されている。しかし、日本の憲法では特別措置法ができてやっと可能になった。安倍首相に対する批判も非常に多い。私も個人的には規制は遅すぎるとおもっている。習近平の国賓招待に対しても意見はあった。日頃共感する人たちも声を揃えて、国賓招待について批判していた。野党はさほど批判しない。コロナに対しての施策についても様々な批判がある。
★しかし戦後の憲法では欧米のような対応策はとれないのが日本の状態だ。しかも自民党の内部も一枚岩ではない。利権の対立するグループの集合体だ。分かりやすくいえば親中派は二階幹事長グループだけではない。超党派で中国韓国を支援する国会議員は多い。また経済界でも親中、親韓派は沢山いる。第一に「経済中心主義」の考えを持っているのが経済界は殆どだから、調整に時間を要することは論を待たない。
★コロナ禍で経済のあり方が問われ直されてくる。1971年以後、欧米も日本も中国に肩入れしてきたのだ。日本は台湾と断交した。アメリカは1979年台湾関係法を設定したが、中国に協力していれば、いずれは共産主義から民主主義に移行するという幻想を持ったことだ。
★そのトップを走ったのがアメリカだ。1972年キッシンジャー、ニクソン大統領の国交回復に始まりクリントン政権になってからアメリカは中国に猛烈に肩入れしてきた。国を挙げて政界、経済界、学界、メディアをはじめ中国に肩入れしてきた。国連も同様だ。
★加えて中国の市場に欧州もそして豊かになった中国から金を引ききだそうと世界中が中国詣でを繰り返してきた。しかし、アメリカが考えたように中国は動かないことに気がついた。気がつくまで四〇数年掛かった。したたかな中国共産党に騙されてきた。やっと気がついて2016年トランプ大統領が就任して以来、共和党民主党ともに議会として対中国に対抗策を取り出したが、やっと対中国制裁の緒についたばかりだ。日本もその流れに乗ってきた。しかし、日本の経済界は利益優先しか目がない。
★55体制にマンネリ化した自民党にあきた国民は民主党を選んだ。幸いなことに東日本大震災に引き続き民主党のあまりの不甲斐なさに気がついた日本国民は、やっと安倍政権を選びその政権が続いている。しかし、安倍政権の中にあっても経済中心の日本人の意識は変わらない。それが、コロナ感染の渦中にあっても、安倍政権の対応が遅れる一つの理由だ。アメリカが中国に力を注いだ間に日本も次第にサプライチェーンを中国に依存する、別の表現をすれば「原価のやすい中国」に依存してきたということだ。
★日本人は確かに優しい。しかし、世界は自国の利益最優先で日本の優しさは、立場を変えれば扱いやすい国民性だということだ。日本人の特性をなくし、欧米並みに覇権を唱えろということではない。「優しさだけの日本流と訣別」を考える時代に気がつかなくてはならないときを迎えてきた。コロナ禍にあって改めて日本人の平和惚けが問われ直されている。(悦司)
理念の時代を生きる151号・自立した国家・国民
■台湾のコロナ対策と後藤の遺訓
中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスが世界的感染拡大の傾向を見せはじめたころ、台湾はいち早く有効な手を打って拡大阻止に努めていた。1月には武漢との団体旅行往来を禁止し、2月6日には中国全土からの来訪を禁止した。予断は許さないが、台湾が上手に感染を制御していることに注目が集まっている。
◆公衆衛生の観念普及
その背景には、中国を起源とする重症急性呼吸器症候群(SARS)が2003年に台湾で広がった時の苦い経験があった。この時、SARSに対処したのは、現在の副総統・陳建仁氏で、当時行政院衛生署長だった。陳副総統が、当時WHO(世界保健機関)に台湾から病例を報告しても反応がなく、WHOから検体が得られていれば不幸な院内感染は起きなかったと語っている。そのため台湾は独自で未知の感染症と戦わざるを得なかったのだ。そんなSARSとの戦いの陣頭指揮を執った陳建仁氏が蔡英文総統を補佐する副総統なのだから、台湾の今次の新型コロナ禍への対応が迅速かつ的確であったことも頷ける。
◆後藤新平を彷彿
陳氏の存在は、まさに第4代台湾総督・児玉源太郎を補佐した民政長官・後藤新平を彷彿させる。後藤新平─冒頭の内科医が語るこの偉人は、「台湾近代化の父」として台湾人の尊敬を集め、その功績は今も語り継がれている。
日清戦争後の1895年下関講和条約で日本に割譲された当時の台湾は、まだマラリアやチフス、コレラなど様々な疫病が蔓延(まんえん)する瘴癘(しょうれい)の地であった。この疫病を駆逐することが台湾統治の最重要課題の一つだった。
児玉総督の右腕として渡台した後藤新平は、大規模な土地調査を実施し、インフラ整備を行うと共に医療環境改善に注力した。医師でもある後藤は、病院や予防消毒事業団を設立し、公医制度を設け各地に診療所を配置したほか、上下水道を整備して衛生環境を改善した。とりわけ手洗いやうがいの励行、布団を干して叩(たた)くといった公衆衛生観念の普及は効果的だった。こうして次々と疫病が駆逐され、近代化の基礎が築かれていったのである。
◆「人を残す人生」の偉業
後藤新平の遺訓は「金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生は上」だった。 1999(平成11)年5月22日、台湾南部の台南市で後藤新平と、新渡戸稲造の業績をたたえる国際シンポジウムが開かれ、私もこれに参加した。この時、李登輝総統(当時)の国策顧問を務めた許文龍氏は、会場の台湾人に、日本人の功績によって現在の台湾があることを忘れてはならないと訴えた。許氏は社員教育で講演した内容の一部を整理した小冊子『台湾の歴史』の中で、こう述べている。
≪台湾の基礎は、ほとんど日本統治時代に建設したもので、我々はその上に追加建設したと言ってもよい。当時の日本人に感謝し、彼らを公平に認識すべきである≫ 事実、台湾人の多くは異口同音に日本統治時代の教育・医療、そしてインフラ整備を称賛する。
今年1月の総統選挙で再選を果たし2期目に入る蔡英文総統を、陳建仁氏に代わって支える副総統は、医師の肩書を持つ頼清徳氏だ。蔡総統は、再び“後藤新平”を右腕に抜擢したわけである。
◆台湾の経験に学ぶべき
新型コロナが世界各国に感染拡大するなか台湾が感染制御に一定の成果を上げている。 私には、どうも後藤新平の“教え”が台湾を守っているように思えてならない。日本統治時代の医療インフラを基礎に現在の台湾医療が築かれたからだ。開南大学で教鞭をとる台湾人の友人がいう。「台湾は、WHOに頼れないから、独自で感染拡大防止策を考えなければならなかったんです」結果的にはむしろ、中国への配慮と受け取られかねない姿勢も指摘されるWHOに頼らない方がよかったのかもしれない。一国への政治的配慮を世界の防疫問題に持ち込んではならない。防疫は世界全体の公衆衛生と人命に関わる問題だからである。井上和彦(ジャーナリスト)
■いかなる困難にも果敢に臨む台湾
★コロナ禍にあって台湾がとった現実的な行動は上記のとおりである。WHO事務局長は世界的なコロナ感染の初期、習近平にコロナ隠蔽を問題にしなかった。加えて台湾のWHO加入を無視した。欧州各国もやっとコロナ感染の現実をみて中国のプロパガンダに気づき始めた。自国の利益優先をさせてきたなかでアメリカのみが対中政策を強化させて、台湾法の成立、香港人権・民主主義法を成立させている。
★台湾のコロナ禍における現実をみてあなたはどう感じるか?WHOの判断はおくとして自国民を守るという使命感をもって毅然と施策を打ってきた蔡英文総統の評価は高い。中国のプロパガンダの中にあって今年一月の総統選で中国におもねる国民党の候補者を敗り、WHOの承認のない中で毅然と手を打つ台湾が世界から見直されている。大国に依存していきるEU諸国の姿勢と比して毅然として自立する台湾の姿勢をみて、私たち日本が真に協力すべき国はどこか、心して考えなくてはなるまい。
■新型コロナウイルス中国の現状・華鐘コンサルタントGWebセミナ
★4月10日日中合弁事業の仲介を30年近く中国で活躍されている華鐘コンサルタントGのWebセミナがあった。毎年2回上海・日本で定期的に中国の経済報告会を開催されています。私も何度か参加しています。今回1時間半の現状のホンの一部の紹介です。
- 武漢市と湖北省は完全に「ロックダウン」された。→自主隔離ではない。住民は自宅から外出できない。地下鉄や高速鉄道、高速道路も全て封鎖。
- コンタクトトレースの強化(感染経路の早急な特定)全ての携帯電話番号は身分証番号に紐付けされている。→支払い履歴との照合。高速道路・飛行機など交通機関乗車時には身分証番号が必要。通信会社・IT会社・交通機関で人の移動情報を収集。
- ソーシアル・ディスタンシング。レストランや食堂の席は1米以上離れた配置。ドローンによる監視やAI駆使した集会状況の判明。
- トリアージの徹底。病院では感染者でも重傷者・軽症者・無症状にほけ、入院前には陽性反応者・発熱者・症状有り・濃厚接触者に分けた。
★古林恒雄董事長は中国では「休業補償、給料補償は一切ない」と明言された。
写真・華鐘コンサルタントWEBセミナ・レジュメ
■安倍晋三首相・緊急事態宣言について
- 新型コロナウイルスの感染者が首都圏や関西圏などで急激に増大している。この危機的現状を踏まえて、7日、安倍晋三首相が緊急事態を宣言した。
緊急事態宣言公布後、安倍首相は会見を行い、「今回の緊急事態宣言は、海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものでは全くありません。そのことは明確に申し上げます。今後も、電車やバスなどの公共交通機関は運行されます。道路を封鎖することなど、決してありませんし、そうした必要も全くないというのが専門家の皆さんの意見です。海外では、都市封鎖に当たり、多くの人が都市を抜け出し、大混乱と感染の拡大につながったところもあります」と述べた。
欧米の日本への見方
- わが国の緊急事態宣言に関して欧米の報道は、生温(ぬる)いと批判的だ。〈7日付フランス紙フィガロは、「日本の緊急事態宣言は、現実には見せかけだけ」と評した。同紙は安倍晋三首相が参院決算委員会で、フランスのようなロックダウン(都市封鎖)はできないと述べたことを紹介し、「日本人は在宅を強制されないし、自粛要請に従わなくても企業は処罰されない」と強調。自動車や航空産業が集中する名古屋周辺が対象地域に含まれていないことにも触れた。ロイター通信も「日本では自粛要請を無視しても、罰則はない。ロックダウンにある多くの他の国の厳格さとは異なるようだ」と報道。「東京では感染者が急増しており、非常事態宣言の対応は遅すぎる」と問題視する公衆衛生の専門家の見解も紹介した〉(7日の産経ニュース)
移動規制への姿勢
- しかし、このような批判は日本の現実を踏まえていない。危機対応はそれぞれの国家の伝統と民族の文化によって異なってくる。新型コロナウイルス対策で、イタリア、フランス、英国などでは移動の規制を法律で定めている。これに対して、日本では国も都道府県も、法律や条例によって行動を規制することに対しては慎重だ。憲法第22条で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定められているからだ。何人ということは、日本国民だけでなく、外国人、無国籍者も含まれるという意味だ。移動(移転)の自由はあらゆる人が本来的に持つ基本的人権の一つだ。
日本は移動規制をしない
- 公共の福祉という観点から、法律によって、新型コロナウイルス対策として人の移動を規制することも理論的には可能なはずだ。しかし、政府はそれをしない。法律が存在しなくても、国や都道府県が自粛を呼びかければ、法律や条例に相当する効果がわが国にはあるからだ。(中略)
民主主義の原点
- こういうときに重要なのは民主主義の原点に立ち返ることだ。わが国では民主的選挙によって国会議員が選ばれる。そして、国会議員が民主的手続きによって首相を選出する。 従って安倍晋三首相は、民主的手続きによって選ばれた国民の代表なのである。
危機を脱するために国民が一丸となって安倍首相を支持すべきだ。特に野党の国会議員は、政争を一時凍結してほしい。感染症対策では、建設的な批判によって政府を支援すべきだ。日本の国民と国家の危機が迫っている現実を真摯に受け止めなければならない。元外交官・作家佐藤優