理念探究会92

■理念探究会92号
◆◇◆進化経営学院西日本校次世代型経営人材養成塾開講◆◇◆

次世代型経営者養成塾を十一年間、シニアクラスを十年間開催してきた。今年から西日本を中心に開催することにした。講師は進化経営学院専務理事・竹内将清氏を中心に進める。今回私は開校式と初日の講義のサポートに駆けつけた。
スタートは三名。今回のメンバーは小企業の女性の常務、石材店の東京で大学在学中の二十一歳の青年。自立連帯企業の女性社員。開校式および初日の講義の補助で私も参加した。午前中の開校式から青年の母親も参加聴講した。
最初はインタビューゲーム、私も二十一歳青年に関心をもって十五分のゲームに参加した。いま関心のあることはファッションですとの答えに、一瞬男の癖にという思いがよぎったが、素直に彼の意見を聞こうと切り換えた。学部は人間総合理工学科。何をやっているのかは質問すると医療、健康、科学を学び、空間情報GIS人工衛星を使ったりナビ、脳科学なども学ぶという。
後で大学の案内を見ると「人間総合理工学科では、幅広い理工学の基礎知識をベースに理工学の諸分野を横断的に学びます。学ぶ領域は『人を知る・測る』『人の健康』『人と生活環境』『人と物質・エネルギー』の4領域。これらを横断的に学ぶことで、人間に関わる理工学の総合的教育を実現します」と説明があった。
高校時代はラクビーに没頭した。スクラムハーフをやり中学校までの野球から一転して毎日身体を鍛え、全身疵だらけ、靱帯切断も体験し、クラブメンバーと互いに切磋琢磨した三年間を体験した。いま関心があるのはファションの世界。好きなデザイナー、リック オウエンスはフランスのファッションブランド。メンズ・レディースともに展開。日本でも絶大な人気を誇るそうだ。音楽はどうかと聞くと、ヒップホップ系が好きだ。
将来の進路はと聞くと、四年生になると研究室に入り、一度は就職をして外部を見る。僅か十五分のインタビュー時間だったが、新鮮な印象だった。これを後で記事にして発表し合ったが、彼は私の発表を聞いてインタビュー記事が自分のことを正確に表現してもらえて「嬉しかった」と感想を述べてくれた。それは私が彼のことを深く理解しようとする姿勢があるからだろう。
第一講で森信三先生の修身教授録・妙録を輪読、和談した。
一、天の命
二、人生態度
三、人身うけがたし
四、尚友
五、同門の朋
六カ月後には大きな成長成熟を期待できるメンバーの会が始まった。
◎第二十一回理念探究会
今年は理念探究会に専念する。韓国から来日の英才、李員交女史を交えて天命舎では五人、高松では二人、九月から合流して七名の参加者でスタートする。理念探究を開始してそれぞれ一年~二年近く経過している。今年は今までの経緯を含めていよいよ最終探究を目指す。五人の第一回は、改めて森信三先生の「万人が自己の哲学を」というテーマで自己の哲学=自己の天命を輪読した。
理念を馬車に例えると、馬車を引っ張るのが馬で、私達の欲望・あるいは本能に例えることができる。そしてその馬をコントロールする御者が理性に例えることができる。御者は馬をコントロールしながら馬車を走らせる。しかしよくよく考えてみたと御者は姿は見えないが馬車の中に乗っている主人の指示に従って馬を走らせている訳だ。姿は見えないがこの主人こそ、実は自分の真我でありその真我こそ、自分は何のために生きるのかを知っている主人公である。それは森信三先生流に言えば、一人一人の哲学であり、一人一人の宗教でもある。
人はこの世に生命を受けたとき使命を授かっている。その使命を一生自覚しないままこの世の生を終わってしまう人がいる。しかし自分の使命は何かと関心を示す人もいる。いろいろな縁があって、こうして理念探究会に繋がってきている。三年近くの時間を共にしてきた若い彼らに是非、理念に到達して頂きたいと切願しながらこの一年を進めていきたい。

 

◎四十数年ぶりのたった二人の勉強会・岡部博氏八十二歳

私が日本コロムビアに入社したのが昭和四十二年四月。当時大卒二百名ぐらいの新卒入社であった。最初の新入社員研修会で会ったのが岡部さんだった。大学の先輩で昭和四十年にコロムビアに入社した山本重男氏の薦めもあって日本コロムビアを選択した。大学時代、ゼミや寮生活でも、いろいろお世話になった。その山本さんから新入社員教育を指導していただいた岡部さんの事は既に耳にしていた。入社研修の思い出が鮮烈だった。「商品を売る前に、自分自身を売りなさい」と。研修の間に私達に接する姿勢は人間的な真摯さ誠実さに溢れていた。いい人に出会ったと思った。
二カ月の研修の後、私は名古屋に赴任した。それからサラリーマン生活がスタートした。

入社して四年に私は結婚することにした。岡部さんにお願いして、わざわざご足労をお願いして東京から奥様と彦根までいらして頂き、結婚式に参列していただいた。その二年後岡部さんは退社して産業能率大学に転職された。岡部さんは当時三十八歳だった。
それから以後、あまりお会いすることはなかったが、次々と出版された著書を送っていただき、私の営業姿勢に多大な影響を受けた。著書を通じて社員の教育の方法、姿勢に強く共感するところがあった。
岡部さんは、大学での授業と大手企業の社員研修を担当もされ全国各地を担当された。私と、同期入社の親友で広島大学出身の井上隆純君もコロムビアの商品企画や人事部での研修を担当し四十歳前後で郷里山口のお寺の住職を引き継ぐこともあって退社した。在職中は城野宏先生から教えを請うた「脳力開発」のコロムビアへの導入に私と協力した思い出がある。四十二歳で広島営業所のトップとして私が赴任したころ、彼は退社した。
一度、二人で岡部さんの自宅を訪問した記憶がある。あれから四十数年経つ。岡部さんは七十五歳まで日本各地で研修に関わっておられた。その間、幾多の著書を書き続けられた。七十五歳で一応引退され五年懸けてプロローグからエピローグを含めて九章仕立てで「慕標」ーこれが私の心の旅ーという題の自分史を執筆された。八十歳を記念して誕生から今日までのことを各章毎につづられている。私にも送ってくださ
った。感想文をお送りした。お会いしたいと思った。
確か十年前ぐらいだったか、千葉県御宿に住まいを移られていた。毎年年賀状はお出ししていたが、私が五十歳で創業してからも仕事に関してもアドバイスを頂くことがあった。真摯な指摘で思い当たることがあった。天命舎や進化経営学院、モラ美術館には関心を示され、理念探究や次世代型経営者養成塾に関心を持ってくださっていた。数年来お会いしたいと思っていたが、御宿から我が家まできていただくにはあまりにも時間がかかりすぎる。
今年になって、お会いしょうと決めた。それには私がお迎えに上がって、天命舎まで車でお招きすることが最善だと妻と話し合った。四月二十四日~二十五日の計画で実行した。妻が御宿までの車を運転してくれた。
六時に我が家を出発した。三時間半の行程だった。二時間ほど滞在して高速を通り我が家に向かった。到着後、進化経営学院、モラ美術館、森のフォーチャの施設をご案内した。その夜、親しくしてもらっている料亭「如月亭」のカウンターで亭主が腕によりをかけた品々を頂いた。河豚さしを頂きながらヒレ酒から始まってワインまで楽しめた。四十数年ぶりの心なごむ一時であった。

●二人の勉強会
当日と翌日に分けて三時間から四時間にわたる勉強会をした。五月末に出版される本の原稿を題材としてA4・10ページのテキストを輪読と和談をした。勉強会の内容の一部を紹介すると

第一章「崩壊の時代」が始まっている。そのままでは貴方の会社は崩壊する。会社だけでなく、職場も家庭さえも崩壊するだろう。何故そのようなことが言えるのか?―――と抗議されるかもしれない。しかし、実は会社や・家庭だけで終わらないのだ。最近「新しい国の形を考えよう」という言葉がしばしば聞かれる。これは国家や自治体でさえ、今までの「形」では崩壊する可能性が大きいことを示している。(中略)
第二章 「崩壊の時代」に成長する企業とは。そのままでは貴方の会社は崩壊すると言われて何もしない人はいないだろう。事実、この「崩壊の時代」といわれる世の中でも成長し、業績を伸ばしている企業が存在するのだ。その成長している企業やその一部である職場は、何をどのようにしているのだろうか。それは3つの行動から始まっている。
1、自分の組織全体や職場の「形」を構造的に深く把握している。
2、自分の組織全体や職場の「形」を構造面から社会
の「質的変化」に対応できるように変革している。
3、変革した組織・職場を社会の「質的変化」に対応して動かしている。
(後略)
文中、理念を明確にして優れた個性のある組織・職場を作るという指摘の中で話がはずんだ。たった二人の勉強会は岡部さんの考えも実践し、また独自にいろいろ経験してきた私にはそれらが統合されるような楽しみを経験することができた。