理念探究会88

■理念探究会88号

■その一、無尽蔵井泉・絶対浮力と関係浮力
理念を実践していくことはその基礎に絶対浮力が要求される。絶対浮力とは関係浮力と対になっている。
関係浮力とはわかりやすく言うと、地位、権威、容貌、利権、名誉等を言う。大きな社会変動があると無力に化すもので、継続性がない。例えて言うとかつて戦時中、外地で関係浮力で隆盛をきわめた人でも、敗戦で帰国してからはすべて元の木阿弥、その人の実力以上には役に立たない。絶対浮力とはどんな状況に遭おうとも「起き上がりこぼし」のように立ち上がる力だ。どんな嵐が来ようと沈まない毬の力を言う。
この絶対浮力はその人固有の特長と結びついたお役立ちの能力である。私たちは絶対浮力を磨き続けなければならない。多くの人に役立つ多種多様な能力=絶対浮力(脳力)を磨くことが、自分自身に課せられた使命(志)を果たす力につながる。
沖縄で、来期の方針設定の時間に拘束されない熟考会を行った。この企業は企業理念を制定して十年がたつ。グループとしての企業理念を求心力にした自立連帯経営を実施している。それぞれの自立連帯の企業の社長は個々の人生理念を探究している。企業経営は理念を背景に経営計画をたてる。経営は二つの側面でできている。論語と算盤、個々人の使命探究支援と科学としての経営数字の統合が企業理念。私たち はその二つの統合を目指している。これが進化経営学院の指導する進化経営(和道経営)である。この無限の命題達成には、個々人の絶対浮力が欠かせない。
今回は、三つの方針(環境整備の新しい次元へ・お客様との直接の関係を強化する・経営能力を磨く)の中心には、理念を背景に「信頼」というイメージを置いた。
私たちは「信頼される」仕事をしていますか?
私たちは「信頼される経営者として経営能力を磨いていますか?」
私たちは「信頼される環境整備憲章に則った実践をしていますか」
この方針と実践の「知行合一」の一瞬一瞬に無限の力を注いでいますか?このことが絶対浮力を高めることになるのです。
■その二、二十二回目の和環塾の新年会
和環塾は今から二十七年ほど前に、MGの指導者西順一郎先生との出会いから始まった。会社経営の戦略会計を学ぶMG研修で知りあった中小企業の経営者の関東圏の仲間たちとの交流が出発点だった。そこに「脳力開発」「MTマイツール(パソコンソフト)」そして後に「和の実学」「和道経営」を学んだ。それから、サラリーマンだったメンバーが次々と創業し、経営者のメンバーとともに切磋琢磨した。塾頭を 勤めた私も五十歳で創業した。
メンバー最長年齢は現在八十四歳のK場氏。会社は若いT内氏に譲り、世界一周の豪華客船の旅を何度もしながら、後進の経営の諸々の応援もしている。塾長M後氏は元上場不動産会社の役員、全日本テニスシニアダブルスで優勝経験もあり、昨年喜寿を迎えて、尚、テニスと経営者二世の応援をしている。父親の創業した印刷会社を経営し、不動産業に転進?しているA羽氏、独特の整体の世界を開いて十五年の弟のA羽氏、NTTから独立して会社経営に専念しているY川氏、彼とは現役時代に何度かシリコンバレーを訪ねた。「心の自立」や和環塾の出版などを受け持ってくれた特種印刷会社を経営するK西夫妻。息子に経営を任せつつある。リフォーム会社を経営し和道営業の達人K原氏、MTの事ならおまかせと全国からお呼びがかかる、お酒の達人M川氏、小田原の再開発で定年後も活躍している最年少のT田氏、外国語に堪能でかつては中国でも活躍、今は現役から引退したが夫婦の旅を楽しんでいるT山氏、今回欠席したが、超能力研究に余念のない元お茶の水のスポーツチェーン経営者のT松氏、今も現役で経営品質賞審査員で最近医療関係で活躍し、今回はドバイに出張しているS松氏等々挙げればきりがない。今もかつての勉強仲間が現役で頑張っている。寿命のある限りお役に立って一生懸命生きたいものだ。

◎彦根での経営計画熟考会
今年も一月の二週目に彦根で経営計画熟考会を開催した。お正月の元旦と二日に久々の大雪で三〇センチも積もった。その一週間後、関が原の雪と伊吹山の山頂の雪模様を見ながら彦根に着いた。道中の富士山は快晴で美しい姿を魅せていた。
その日は、恩師江竜龍太郎先生のお墓をお参りし、その帰り道善子の伯父さんの家を訪ねた。健康な生活の極意を聞きたいと思い八十五歳を迎える伯父さんの話はとても参考になる。
翌日は会場の彦根プラザに一駅、南彦根から車で五分の会場に到着。翌日は琵琶湖湖岸を参加者の一部と通りながら会場を訪れた。快晴の琵琶湖は凛として対岸の山並みが美しい。気持ちもすきっとする。五十年前学んだこの地で次の時代を担う経営者の支援をすることの喜びがある。

■宇宙の大法・物盛んならば必ず衰う
今回は、大局把握から始まり、宇宙の大法を基準としてこの変転して止まない世界情勢を判断する。「物盛んならば必ず衰う」「物事には一長一短がある」「両方よいことはない」という真理から、長い歴史の流れを見る。
私の大学時代(一九六二年~六七年)はヴェトナム戦争(一九六〇年~一九七五年)と安保反対闘争、学生運動、一九六四年東京オリンピック、結婚した七〇年から始まった高度成長と円の切り上げ体験。第一次石油ショック(一九七二年)で一ドル三百六十円から第二次オイルショックで百二十円までの体験。一九八九年バブルに躍った世間とその崩壊による倒産の嵐、最初の銀行倒産は木津信用金庫で一九九六年。
ソ連の崩壊一九九一年。その後のアメリカ一極化と二〇〇八年のリーマンショック。そして今日、アメリカ、ヨーロッパは自国の陰りを体験している。正に「物盛んならば必ず衰う」の宇宙の大法を体験している。

■無限脱皮・未来開拓
企業は常に脱皮を続けなくてはならない。したがってどんな企業にも力が衰える時がある。しかもその時は一番隆盛の時に足音忍ばせて近づいている。しかも隆盛のときに衰えることを予想、予断する人はいない。
人は渦中にいるときは分からない。私自身を振り返ってもそうだった。「物盛んならば必ず衰う」しかし脱皮できない組織、企業集団は必ず衰える。それを防いでくれるものは「企業理念」である。
私が大学生の頃、ダイエーが誕生し五十年で消滅した。高度成長を担った電機業界も沢山のメーカーが衰退消滅した。今また、一九七〇年代進取の気性溢れたSONYも今は大企業病にかかり、衰亡の道を歩み始めている。SONYには井深太や盛田昭夫氏現役の頃は創業の強い思いが生きていた。大賀社長のときもまだ健在だった。その後後継者には「企業理念」欠如の自覚がない。人間はせいぜい二~三〇年程度しか見えない。現在と近い将来の業績にしか目が行かない。いわば利益最大化という擬似理念でしか物を見ない企業人が大半だ。「見えども見えじ」。「宇宙の大法」などというものは、心ある人には見えるが心なき人には、たとえ眼前にそれが働いていようとも、そうは思えないものだ。
今回の若手経営者は自分たちが切り拓かなければ次の時代には存続し、脱皮できないことを体感した。ある経営者は大局の変化にそって未来を見通し、若手にゆだねること。若手経営者は経営者としての覚悟を決めていよいよ本気で取り組む決心をした熟考会であった。

■歳を重ねても現役のお店
少し余談だが、交流会では今なお現役の大将が八十六歳奥様八十一歳の「とり卯」で食事をした。八名限定のカウンター席で何種類かの料理を分け合って食べた。ホテルへの帰り道、学生時代アルバイトでコーヒー配達をし、グリークラブのみんなとお世話になった喫茶「らんぶる」で歓談しながらウイスキーの水割りを飲んだ。マスターは七十八歳。矍鑠としてダンディー。彦根は歳を重ねても人々を潤してくれる仕事を、淡々とこなしている尊敬に値する先輩が暮らしている。