理念探究会91

■理念探究会91号

◎競争社会からから調和社会へ
私は中谷石材G経営計画発表会の席上、パワーポイントを使い福島原発視察の写真をお見せしながら、以下の話をした。
森信三先生の幻の講話(一九七一年著)の中で次のことがまとめられている。宇宙の大法とは「物盛んなれば必ず衰う」「物事は両方よいことはない」「 一長一短がある」 世界の歴史をひもとき、古代ローマの繁栄と没落を以て「宇宙の大法」の一顕現としてあげられている。
一九七一年当時、経済的、軍事的な実力において世界のその覇を唱えていたアメリカをしても、四十四年後(二〇一五年)その勢いを全く失っている現状を見れば一目瞭然だ。また、「人は物質的に繁栄すると、人間の心は弛む」ということもあげられ「物盛んなれば必ず衰う」とは人心の弛緩が招来するが故だと言われる。
全ては刻々に変化して止まらぬこの無限に流動的な世界情勢下にあっては、「活眼」を開いて民族の歩みを、この転変して止まらない国際情勢との関連において、体感して見るとき、この「宇宙の大法」という絶対真理を思い出してもらいたいと締めくくられる。
その視点から見るとき、かつて日本の高度成長、経済的繁栄とその裏面である公害、そしてバブルの崩壊をみても、そして予断すれば中国の経済的繁栄もこの轍を免れることはできないと考えている。競争型社会の典型である、自国の利益を最優先し、異質排除する欧米・西洋型社会の行き詰まりもまた「宇宙の大法」の一顕現であると見ることができる。
中谷石材グループの企業理念、社志に「社会の互恵関係の発展に努めます」そして「競争指向」から「調和指向」への移行を推進し、お客さまはもとより関係者から応援される企業を目指します。そして広く社会の心価高め、互恵社会の実現に貢献します。と解説している。中谷Gもいよいよ本腰を入れて次のステップへと進むべきときを迎えた。

 
◎福島原発視察報告その二
●逆境に人の生き方が問われる
福島視察で根本さんに何人もの人達を紹介戴き、お話を聞く機会があった。震災後、帰宅困難地域に追い込まれ、その後の解除はあるものの、避難地域に近い場所での仕事はない。一方で補償がある事によって起きてくる様々な問題。四年の時間は被害を受けた人達に様々問題を生み出している。私達は被害を受けた地で人間としての生き方を見る思いだった。根本氏はその中で立ち上がる人達を支援している。
話をお聞きした方のお一人を紹介したい。

都路町商工会会長・渡辺辰夫氏1952年生まれ
現在田村市に移転しているレストラン・ホットハウスは震災前、阿武隈山地の都路村にあった。「村では、冬になると、みんな出稼ぎに行っていた。高校に入ったころ、福島第一原発の工事が始まった。出稼ぎにいかなくてもよくなった。多いときは村から五、六百人ぐらい行っていた。おかげで、進学率もあがった。だから今でも、東電のことを悪く言う人はあまりいない。」と回顧する。お店は福島原発で被爆した二十キロ圏外わずか六十メート外にある。圏外には補償は一切ない。東電の賠償で二十キロから三十キロの範囲の人達が一番苦しむことになる。山の中で本格的な料理をだすことで注目されていた。

●再スタート
氏は元の場所での再開は無理だと思った。圏外六十メートルに人が来てくれるわけがない。同じ年の六月二十八日、ここの店舗用地の資料を貰った。四千万円かかった。県の補助金五百万、東日本大震災事業者再生支援機構から三千万円借りた。残りは自分のお金。四年後から月々十六万六千円の返済が始まる。地代は月十二万円。経営は苦しい。口さがない人は「あんたいいなあ、東電から金もらって新しい店を造って」と言う。いつからか睡眠導入剤を使うようになった。

 

●復興組合を立ち上げた
震災後、都路の業者が「仕事がなくてどうしょうもないんで、除染の仕事にたずさわれないか」と言ってきた。組合をつくればいいなと考え、商工会の会員全員に趣旨説明の文章を出した。説明会を三回開き、最終的には二十一業者が参加したいといってきた。二〇一二年二月「ふるさと復興組合」ができた。
目的は顔が見える除染をするため、地元業者潤うこと、それに伴う雇用を生み出すことだ。田村市都路町商工会会長をやっていた氏は商工会がつくれば市は優先的に使ってくれるだろうと考え、手さぐりで組合を作った。他の商工会にもアドバイスすることになる。市内の十六組合が参加している。都路の二つの組合も参加している。
●都路復興コミュニティーセンターオープンさせる
地域のコミュニティー維持のために二〇一二年一〇月、都路の以前の店を改造して都路復興コミュニティーセンター「結」をオープンさせる。店の中を半分に区切って飲食と物販にする。住民の一時帰宅や除染業者、国道利用者のため。都路商工会は今まで何をやっても人が集まらなかった。それが震災後変わった。植栽をやるというと以前は三十人ぐらいだったのが、五十人も集まってくれる。「結」の草刈りをボランティアで三十人も集まってくれた。トップが本気でやれば会員はついて来るものだ。会員の意識が変わってきた。
●原発事故でコミュニティーが崩壊
原発事故による避難でコミュニティーは崩壊した。更に悪くなっている。東電の補償金とかお金の問題で。二十キロ圏内は精神的慰謝料が一人月十万円出ている。三十キロ圏内人は二〇一二年八月で打ち切られた。一寸の違いで打ち切られたという思いがある。二十キロ圏内でもいろいろな動きがある。百二十八世帯三百八十人ぐらいの町だが、早く帰りたい人と帰るのを遅らせて補償金を長く貰いたい人がいる。避難指示解除されたら国は早く帰った人には九十万円あげますと言って崩壊に拍車をかけた。
●新しい街づくり・コンビニオープン
都路の復興のため商業施設とコンビニ誘致を企画した。ファミリーマートは市の用地買収で暗礁に乗り上げた。地権者が三人いて一人が頑として言うことを聞かない。どうしょうもなくなった。うちの店を壊してもいいよと言った。「コンビニと自分の店舗が再開するのと、どっちが住民のためになるのか考えた。帰還率も利便性も高くなる方を選んだ。都路に戻る道を自分で閉ざした。こっちの店が順調にいけば、いずれ譲って都路の店でやればと思っていたが、帰ることは断念した。
渡辺氏の話を聞きながら、いかなる情況でも立ち上がる人とその流れに埋没してしまう人達がいる。
同行したS田氏は以下の感想を伝えてくれた。「起きたことは既に過去。これからを考える。」「補助金は、自立を奪う。」まったく同感だ。