■理念探究会84号
■津山鏡野・建部(岡山県)を訪ねる
津山鏡野・和仁さんとの二日間
鏡野で理念探究の研修が一日あった。鏡野で行った。鏡野は近頃、山田養蜂で有名だが、現在山田養蜂場は美術館を建設していると思われる。私が大変尊敬している田渕隆三画伯の作品も膨大に所持している。現在は広大な会社内に展示している。また、フランスのバルビゾン派の膨大な作品を購入されたと耳にした。恐らく来年にはオープンする予定だ。鏡野町は教育にも熱心で、知・徳・体の調和的発達と弱者への配慮ある教育を提唱したペスタロッチに着目して、「日本のペスタロッチタウン・鏡野」を宣言。ペスタロッチ像を建て、町立図書館をペスタロッチ館と名づけ、その思想の普及と継承に努めている。二七日夕方より和仁さんを訪ねた。五月以来。神戸三田に教師をしている娘の応援で出かけている奥さん・泰江さんも夏休みで帰宅中だった。
久しぶりに三人で津山の食、天満鮨の鮨、日笠の焼きとりガンコモン、泰江さんの手料理など懐かしい味とお酒を楽しんだ。七月末には津山の同級生久世薫嗣氏を稚内に訪ね、幌延深地層研究所・高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する話に耳を傾けた。和仁君とは個人的に関心のある平川祐弘著の「日本に生まれてまあよかった」を題材に最近の日本の動きを語り合った。やっと元気が出て、いよいよ備前焼の新作づくりにも取り込むようだ。
■経営における知行合一
十月から、下期を迎える。今回はグループ会社六社の下期方針熟考会と二日目午後からの社長会で三日間の長丁場。半期を振り返り現状を客観的に認識することから始める。
経営数字編と方針実行編。人間にとって知行合一とは、知っていることと行っていることが必ずしも一致することはない。自分では一致していると言っても、他人から見るとそうでないことが多い。Mランド会長は「経営にとっての知行合一とは、それぞれの持っている力の限界を知ることだ。理想論を追うことではない。知り行う、知り行うという営為を繰り返し真剣に積み上げていくことである。その努力のプロセスが大事である。
その努力する一瞬一瞬が知行合一のもっている本来の意味ではなかろうか。しかもそこには到達点がない。そういう営為をどこまでも継続して行けるかというところに知行合一の意義がある」と言われる。
■逆境練機・逆境は神の恩寵的試練なり
今回は、昨年決算をベースにして再建計画を立て直した会社が二社ある。赤字を計上した。経営において赤字が出ない方が良いに決まっている。しかし時に赤字が出ることは決して悪いことではない。赤字は「その企業が貢献力を失っている」事を如実に示しているからだ。当の経営者にしてみれば、冷や汗ものであることは勿論、自らその後何年かかけて累積赤字を解消しなくてはならない。そのとき、経営者は自らの腹を括ることと、今までの生き方を変える時期を迎える。「逆境は神の恩寵的試練なり」とは正にそのことを指している。そして企業理念を背景に、三~五年のビジョンと事業計画を明確にする、絶好の機会になる。この知的作業を三日間にわたって行った。
建部の森は高台にあり、朝は小鳥の声や夜になると遠く夏の花火が上がっているのが見えた。静寂の中で、理念を共有する六社のトップにとって、振り返れば至福の時になる。
「美しくなりたく候」と言う言葉がある。「真なる、善なるもの」(理念)を根底においた生き方をしたいということだ。経営における知行合一の努力にこそ、そういう生き方の追求の姿勢がある。
■李登輝講演会・これからの世界と日本
昨年来日の予定だった。昨年は体調を崩され中止。今年九十一歳を迎えられ来日。
講演会場は産経プラザホール。SPもいて若干物々しさはあるが、非常にリラックス
されたなかでお話しされた。奥様お嬢様お二人も同行された。お目にかかりたいと念
願していた李登輝元総統のお姿を初めてお見かけしたが、非常にお元気で、講演中も
強いエネルギーを感じた。
目的は本年度より始まる台湾淡水に建設予定の「李登輝図書館」について日本でも広
く知ってもらうことと、人生の師と仰ぐ新渡戸稲造の事跡を訪ねて北海道大学を訪ね
ることだそうです。日本李登輝友の会が招聘した。およそ五十分弱の講話だった。骨
子は、創世記の解説から始まり現在の世界情勢と日本の取り巻かれている状況、真の
自立を目指しての憲法第九条まで踏み込んだお話だった。
平和と戦争については創世記から解きほぐし、人類は分離と結合を繰り返してきた。
自身の幼少の時の体験も語り、母からの自立の経緯もしんみりと語られた。自由と不
自由、戦争と戦争のない状態。トルストイの「戦争と平和」の時代から、世界の人類
のもつ国家我についても話は及んだ。「平和とは現在では戦争のない状態を意味する
が、世界の現実の中で考えなくてはならない。人類にとって戦争の廃絶は難しい。ユ
ートピアとして不可能だ。武力を保持することは国益の最大化を主張する国々にあっ
て、国家を防衛するためにも武力の排除は考えられない。歴史は組織、共同体の盛衰
と交代といえる。従って指導者の能力が問われる。」と続けられた。
「今はGゼロの世界だ。二〇〇一年九・一一テロ、二〇〇八年リーマンショックによ
ってもはやアメリカは単独で世界を引っ張って行く力はない。中国は世界のリーダー
としての能力はなく、周辺諸国への内政、領土干渉を繰り返すことによって自分たち
の力を誇示している。」
一九九六年台湾で総統を選ぶ総選挙を実施したときに、中国はミサイルを撃つと脅か
してきたが、私は「ミサイルは見せかけだけで、爆薬は入っていない。入っているの
は着弾地点を知るための計測器だ。これは脅しにすぎない。心配いらない。私は台湾
を守るための十八種類のシナリオを持っている」と言って国民を安心させた。
「主権が民にある時代だ」と主張し、選挙キャンペーンでも「国民の声に耳を傾けよ
う。民主改革を徹底的に押し進めよう。大台湾を基礎にして、新しい文化をしょう」
伝えた。
逸話として台湾がF6戦闘機購入のとき、社会党の土井たか子氏がきて「何故、戦闘
機を購入するのか」と質問されたから、総統が「自分の国を守るのは当たり前でしょ
う。戦力を持つことは戦争をすることではない。自分の身を守るために必要だ。自国
を守るためです」と答えたら、黙ってしまい。それから以後、彼女は台湾に来ません
と場内を失笑させた。
日本の集団的自衛権の行使容認は日米同盟を強固にするものだとして、「決断した安
倍晋三首相に心から敬意を表したい」と語った。「くしくも今日は安倍首相の60歳
の誕生日だ。さらなる活躍を台湾から期待している」と安倍首相にエールを送った。
その上で、重ねて日本に憲法改正による「自立」を要求。「それが結果的に東アジア
の平和と安定につながり、日本と台湾にさらに良い関係をもたらす」と訴えた。
進化経営学院・くろだワークスでは「理念を訪ねる旅」として理念制定者、卒院生、
受講生たちと台湾を訪問している。二・二八記念館、後藤新平事跡、教育に貢献した
六士の墓、烏山頭ダム、八田與一記念公園(台南市)等々を三泊四日の旅をしている。
今年も十一月二十日~二十三日の予定で訪ねる。台湾には今では日本で失われた「誇
りを持った日本人たちの姿」を見ることができる。今年も八名で訪ねることが決まっ
ている。