理念探究会78

◆理念探究会78

■その一ヒマラヤに挑む・田渕隆三作品展

田渕隆三氏の長年の課題であるヒマラヤの連作の作品展 を八王子村内美術館に見に行きました。「ヒマラヤに挑む」 が今回のテーマです。同時にグループ展がいつもの二階の会 場をたっぷり使っての開催されていました。 一昨年、昨年と私たちはネパールを訪ね、ヒマラヤ連山を目 の当たりにして自然の荘厳さに深く引き込まれていました 。一昨年はポカラからマチャピチャレからダウラギリそして ナガルコットに移動して厳冬のヒマラヤを遠望し、飛行機でエ ベレスト遊覧をしました。昨年は一週間早めた日程で、快晴 のヒマラヤ連峰をたっぷり楽しみ、その後はアンナプルナ連山 とマナスル展望の十三日の山旅をしました。三七〇〇米まで 登り、善子は痛めた膝のリハビリをかねて馬に揺られての登 山でした。 登り口までの一〇時間に及ぶ四輪駆動の道中は、恐怖と疲れて クタクタになったのも、終わってみれば心に残る旅です。次はルクラ からエベレストにどれだけ近づくかというのがテーマですが、善子は どうも高山病にかかりやすいということで、悩みの種です。  今回、村内美術館をたっぷり使っての作品展は縦二米横四米近 くの作品が何点も展示されています。その作品は十~十五メート ルほど離れて見ると、正にヒマラヤの山々と谷を見るように臨場感 をもって立ち上がってくるのです。田渕さんはモネの連作を展示し ているパリ、オランジュリーの美術館をイメージされています。  私たちも二度ほど訪ね、モネの壁面いっぱいを飾っている作品を 見ていますが、田渕さんの作品群の私の印象は「ヒマラヤの山々の 自然の荘厳さ峻厳とでもいうべき雄大さを体感させる」という想 いです。  日本の美術館でも百号よりも大きな絵を目にすることはありま す。ヨーロッパの美術館に行けばもっと大きな絵を目にすることは あります。それらの絵は近くから見ても、少し離れてみても訴え る物は余り変わらないというのが、私の印象です。田渕さんの今回 のヒマラヤの連作、大作は十米以上離れてみたとき、生き生きと 精気を放ち、立ち上がってくるのです。  田渕さんは年二回ヒマラヤを訪ね、実際に登り、厳寒の中で筆を とっています。多くは一〇号から二〇号を横にした二枚の作品を 何枚も仕上げてきます。昨年五月三浦雄一郎氏がヒマラヤ登頂を 果たしました。その前年一〇月の試験登山では、三浦雄一郎氏は 心臓に問題(不整脈)があると五〇〇〇米辺でリタイアした経緯 があります。そのとき田渕さんは三浦氏と同じ高度まで登って描 いていました。昨年私たちも実際に三七〇〇米まで登って、そこで 描き続けることの過酷さを体験しています。素人では想像できな い高度で何年も何年も描き続けてきたのです。三浦豪太さんにも ガイドをしてもらい何度か登っているのです。  田渕さんは今年七十四歳を迎える。田渕さんが古希を迎えた 年に頂いた便りに、長寿の彫刻家平櫛田中の言葉「六十、七十洟 垂れ小僧、男盛りは百から百から」を引用して、これからが制作に 生命を懸けるという決意を記されていたのを思い出します。 田渕さんの現地で描かれた何点かの作品を無理を言って分けていただき、 天命舎のリビングに飾っています。数点のヒマラヤの絵を眺め、自然の放つ 香気に浸りながら心と身体の安らぎ感じています。この「ヒマラヤに挑む」の 作品展は五月六日まで開催されている。是非多くの方にご覧になっていた だきたい。場所・八王子・村内美術館

■その二・進化経営学院・養成塾終了式

三月には次世代型経営者養成塾第十回ジュニア、第九回シニ アの終了式を迎えた。 振り返るともう十回を迎えたことになる。その間ジュニアを終 了した人の大半はシニアクラスに進み、そして理念探究コースへと 進む。創業して理念探究会を開催したのが二十一年前、理念 を探究した人達が四十名近くになる。理念型快労祭も今年十 四回目を迎える。養成塾を卒業した人で理念を探究した人は 現在三名そして理念を探究中の人達は八名近くいる。  今回の受講者には親から引き継いだ会社を結果的に閉鎖し た社長、先代が負債を抱えてここ数年返済に取り組み完済、 将来どのような企業として経営するかという課題を、理念探 究に求めて参加した人もいた。彼らを含めたジュニアクラス五名 の成長は、著しいものがあった。  この中の二人は、五月から理念探究に進む。彼らを含めて八 名の若い社長たちも一、二年の内に理念制定に到達することは 間違いない。足かけ一〇年で理念を制定した三〇代の社長が一 〇名あまり生まれることになる。石の上にも三年、一〇年も経 てば世代を超えて次の時代の主役が育ってくる。そして彼らが 次の世界を切り拓いていく事を予感させる終了式だった。