■理念探究会70 その一・高める、鍛える、深める。
恒例のN社利尻合宿を行った。企業理念を制定して間もなく一〇年。自立連帯型経営を開始して九年目。その間は試行錯誤。しかし大局は正解。企業理念・社志の第一項「社会に役立つ自立した人材を育てます」。自立とは、経済的な自立だけではない。判断の自立。心の自立人としての生き方。経営者としての自立は「利益を増やすことではない」。
N社は昨年はグループ社長会が軌道に乗り掛かった。環境整備憲章も若手社長を中心に進めた。一方、ここに小さいながらも社長として試される出来事が起こった。社員の中にも憂慮すべき問題が顕在化した。渦中にいるときには、冷静に判断できない。理念に照らし合わせば容易に判断できる問題でも現実にはその通りに行かない。制定後一〇年が近づいても経営姿勢や就業姿勢がまだ完全に浸透しているとは言えない。
二〇〇〇年、理念制定とその後の社員研修に関わっている(株)リブドウコーポレーションは理念制定一〇年後、二〇一一年、デイズニーランドにへ社員家族一〇〇〇人を集めて、次なるステージへ向けて飛び立った。そして今年新居浜に最新の○○工場をつくって着実に進化している。
私の尊敬するMランド(益田ドライビングスクール他)は創立五〇年を迎える。毎年入学するゲスト・受講生の人達は六〇〇〇人を超える。そしてその六割以上は、紹介による。自分が体験したから後輩や知人に薦める。社員は常に前向きだ。昨年から徹底した環境整備を取り入れ、研鑽を続けている。受講生への働きかけて何重にもなって、幾多の生き方の体験が積める。今年、食事は玄米に切り換え、禁煙に切り換えたが、受講生は嬉々として受け入れ尚、薦める。これは免許を取るという初期の目的をはるかに超えた人間教育の実践の場になっている。一人の人間としての成長の体験と生き方への指針を体得する人が多い。この境地は傍目から見ている人には到底理解できない。
N社はいよいよ次の成長のステージに近づいた。夜明け前の闇が一番深いという。別の言い方をすれば「逆境は神の恩寵的試練なり」とも言える。次のステージに進むための時を迎えた。一つには世代交代。一つには事業構造の転換。そしてもう一つが自立連帯型企業経営者としての成熟だ。下期から徹底してこの三つを研ぎ澄ませていく。自らを「高める、鍛える、深める」。いよいよ夜明け前に差しかかった。後は未来の希望に進むときだ。
■その二・恵那企業視察。
昨年に引き続き、恵那に銀の森とナカヤマグループ(東海神栄電子工業)を訪ねた。今年も恵那への企業視察を企画した。
昨年の参加者は異口同音にレベルの高い進化を続ける企業に、自分たちの進む道を重なり合わせた。恵那には、個性を持った企業が存在する。それは二十一年前、勉強熱心な企業のトップが集まって21世紀クラブという勉強会を始めたことによる。今回お伺いした二社は私と共に学んだ同志とも言える企業で、縁が深い。
田中義人社長はと言えば、現在「日本掃除の会」の会長を務められ、鍵山秀三郎氏との出逢いから二十一年。日本中に掃除をする企業を呼び起こされた、企業経営に掃除の新しい価値を見いだされ実行された最初の企業である。環境整備は今や世界に広がり始め、その伝導役を務められている。昨年はルーマニア、今年はイタリアにまで出かけられた。
銀の森コーポレーション(今年五月銀しゃり本舗から社名変更)の渡辺社長は、平成八年、広大な緑の公園の中に夢工場を設計された。独自性の高い「お節」を中心にした製造卸売業から二年前小売業に進出され、更に拡大した緑の公園の中に将来の夢を広げられている。一流の料理も提供される「五節会」で、参加者は夏の夜の日本の伝統的なもてなしも体験してもらった。二社には共通して企業理念・経営理念がある。今回、福井県鯖江地域の経営者の人達を中心に訪問することになった。ここには企業理念を制定した数社の企業があり、MKD(村上経営道場)と(株)ムラケンの宇野社長と共に学ぶ人達が訪れた。彼らはまだ若い。そしてこれから更に磨かれて行くと確信している。