自己実現と理念

脳力開発⑪
「他人の利益も図る姿勢」「自己実現と理念」
 自己実現と理念(使命+志)との違いについて考えたい。「私欲は必要だが、行き過ぎるとマイナスになる」と脳力開発の指針のなかでも城野先生はお話しされる。しかし誰にも欲があることを忘れ、他人との協調が頭になく自分だけの私欲に縛られるようだと二つの面で脳力発揮の大きな損失になる。一つは主観的すぎる状態(自分の利益優先)になり、欠陥や失敗を招くことになり、もう一つは他人や周囲の協力が得られなくなる。人間のもつ利己心(自分だけよし姿勢)からの脱皮は容易ではない。この利己心からの脱皮に「小欲から大欲へ」とか、いろいろ先人たちが言ってはきているが、その原動力は人が動いていく最も深遠強大なものは脳力開発では「社会的な価値の追求心」だと教える。情熱と信念とが揺るぐことなくしっかりと裏付けられたものを使命感と呼ぶ。おそらくこれこそが人間を長期的な活動に対する最高度の原動力だと。理念探究もこのロセスを経て自分にとって揺るぎない原動力=理念(使命感+志)に到達する。
 一方、自己実現は人によって公的社会的な要素が欠落する場合がある。あくまでも個人をベースにしている。従って、理念が社会に役に立つという公的、社会的要素が色濃くあるのに反して、自己実現は個人の思い、夢が中核になる。例えていえば、欧米の経営者が晩年ボランティア活動や社会活動に蓄積してきた資財を寄付したり、財団を組織して社会貢献を標榜する。換言すれば現役の時の罪滅ぼしのようなかたちをとる。贖罪の活動だ。理念の場合にはすでに企業でも、個人でも社会的な貢献が現実の活動の中にでなされている。
 仕事がら人よりも多くの若い人たちにあい指導している。今回、彼らに伝えたいことは、自己実現と理念とは全く違うと言うことである。経済的な豊かさの上に育ってきた人の多くは、個人と社会の軸を考えたとき、どうしても個人の欲、私欲がいろいろな形で出てくる。1)金銭執着(収入を増やし、生活の安定を優先させる)の考え方、2)直果願望(結果を早く求める)、3)人格的な謙虚さにかける(先縁尊重をしない)という点に出てくる。大和信春先生(理念探究の指導者)は若い人たちに次の様な箴言をいわれた。1)人に対しての姿勢は謙虚になれても、意識的人格的に謙虚にはなれない。2)姿勢は下手に出ることで、一見謙虚に見えるが、実は人格的に謙虚であることとは違う。3)慢心しないように、よく謹んで社会に接する姿勢を保つ必要があると 。育ってきた環境、受けてきた教育環境が許してきた欠陥だ。このことは、根気よく具体的に注意して自覚してもらう以外に手立てはないようだ。苦言を呈する諸先輩の根気のある厳しい指導が必要だ。(大相撲の不祥事も全く同じことだ)いかに才長けていようが、感謝の心の薄い人、上記の傾向のある人は長い人生の中で信頼を失い協力者を失うことになる。心しておくべきことだ。

「環境整備を通じて磨く就業姿勢」

理念探究会⑪
大連企業訪問記「環境整備を通じて磨く就業姿勢」
 2008年8月1日大連に三和特殊材料有限公司を訪問した。大連のホテルから、竹之内壮太郎社長と現地の管理部部長李暁春(副総経理福本氏の夫人)の案内で、開発区の工場を訪ねる。道中、大連の町並み、建物、道路が車中から見る限り非常に手入れがなされており、過去、10年ほど前から北京、南京、天津、青島、フフホトを5回ほど、3年前、上海を一度訪問しているが、北京なども清潔であるという点では、この大連の印象からはほど遠い感じだ。最も、ここ数年は格段の変化をしているとは思うが、開発区の町の清潔さには少し驚いた。
 さて工場に到着後、概要説明の後、工場見学をさせていただいた。創立5年、とりわけ5Sに留意しているとはいえ、工場の配置、器械の扱い、意識の高揚等も含めて見事なものであった。かってフフホトでヤマハの新工場、伊藤忠の紡績工場等を視察した経験から見て、雲泥の差だ。よく手入れされている。入社のときの社員教育当時から、5Sについては徹底して教育をし、加えてそのことが実行できない人はあえて採用しないという。創業理念、経営方針、5Sの理念もよく徹底して毎日の習慣にまで落とし込んでいる。
 創立当時から約40名の社員がいるとのこと、創業立ち上げの4名を含めて、現在の役職者達12名が中核となって推進し、国境を超えて同志的な結合を深めて取り組んでいる。現在30歳前後の人達が中心なのだが(創業当時は25歳前後)、「任してやらせる、主体性を持って取り組む姿勢」は非常に人を成長させる。この若くても中核の地位に置き、任せるという教育の方法は、大いに学ぶところがある。日本の中の企業で働く人達にも同様の育て方を見習うべきで、この点の結果(効果)は特筆すべきものを感じた。
 かって私が見た企業の中国人の社員の人達は、必ずしも勤勉な姿勢ではなく、労働を提供するという姿勢が中心だが、この会社はその点に関しても、優れた、意志のある中核の人達が、その中国人の傾向を折り込んで運営していることがわかった。ここでも、一般の人達は給料の過多で仕事を選び、転職を繰り返すというが、この中核の人達は「積み上げる仕事の実力」「自分の可能性を磨き挑戦する姿勢」を仕事の姿勢として取り組んでいると、懇親会の会話のなかでも強く感じた。
 人間は、顔にその人の考えや思いがどうしても出てくるものだが、幹部の人達は日本語を話し、よく学び、聡明でかつ、爽やかな人柄が感じられ。日本人的な視点も持っているという印象だった。言葉を変えれば、この三和特殊材料有限公司は、三和研磨本社よりも環境整備が優れているのはと冗談ぽく伝えたが、社長曰く「必要なものしか備えていな」という言葉にある意味で環境整備の本質を見た。交流会では皆さんのいろいろと質問をしながら答えていただいたが、将来の希望として経済的な豊かさは当然としても、会社をしっかりと経営していこうという姿勢を感じた。
 ホテルのある市内も、表通りは多くの中国の都市のように近代化は進んでいるが、しかし一歩裏に回ると、環境整備はほど遠い場面に出くわす。病院のそばにゴミの堆積、処理所があったり、道路に歩道の信号がないなど、車のマナーは非常に悪い。人の安全は確保されているとはいえない。中国全体が持っている現状かもしれない。そういう国家的な環境の中にあって、三和特殊材料有限公司は、環境整備では突出している。このよき習慣を徹底して貫き通すところに、叉進化が始まることを期待させてくれた。
         
  

調和体験の町勝山

理念探究会
日本人が本来持っている調和空間体験の町勝山
 この度は、勝山文化往来館ひしお「黒田善子MOLA作品展」開催に関しましていろいろご支援をいただき厚くお礼申し上げます。私の畏友、備前焼の陶芸家、和仁栄幸氏の紹介で昨年、勝山文化往来館を訪ねました。そこで副館長をなさっている小林孝さんは、私の中学、高校の同窓生です。文化往来館は、過去の文化を検証しつつも非常に落ち着いた展示場として再生され、叉幾多の美術企画が開催されていることも知りました。
 MOLAの作品展は2~3年に一度東京八重洲地下街で開催しておりますが、その他の機会では見ることもできません。私も茨城、霞ヶ浦に移る前、創業を機会に妻も屋号「Kガレージ アートワークス」を掲げてMOLAを中核に据えた生活を始めました。
 2002年の作品集出版を機会に、皆さんに見ていただく常設館、MOLA美術館を建てようと思い立ち、その後2005年暮れに、美術館を建てることができました。森のフォーチャMOLA美術館のオープンです。月曜日しか開かない美術館で、4月の初旬三日間は特別に、この芸術村オープンアートで一般公開しております。関心のある方に見ていただきたいというのが本心です。ゆっくりとお話をしたいと。昨年夏、小林さんを訪ねた後、11月に彼女の美術館訪問を機会に、今年の開催を決めたという経緯があります。
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 今回、勝山文化往来館で開催いたしましたが、非常に心の残る会になりました。それは勝山という地が、日本人が失いつつある人間としての温かみ、人とのふれあい、知性のある人間の落ち着きを持っている地であるということ、加えて、ごらんになる人達の丁寧な鑑賞の仕方、これは幾多の文化往来館の催事で、見る目が鍛えられているのだということを知りました。教養ということはこういうことなのだとも感じました。滞在中の快さ、調和体験は、こうしてご支援をいただいたみなさまと作り出せ、経験させていただいたものだと深く感じております。来年4月27日~5月27日まで東京、八重洲で新作を中心にMOLAの作品展を開催いたします。こちらにお越しの節はお時間のおありの方はぜひお寄りください。20人ほど泊まれる施設も用意しています。ゆっくりお話しましょう。

 

目標をもって会社生活を歩む

脳力開発⑩ 目標をもって会社生活を歩む
リブドゥコーポレーションは2000年に企業理念を制定した。京都国際会館で制定式を行った。その後社名変更等も含めてCIを実行し、また一方で経営品質のチャレンジもしている。年商が50億円時代から、社長とはともに学んだ時が多々あった。現在年商300億。問題解決学(情報統合技術)研修や脳力開発研修を毎年実施している。今年も11名の大学、大学院卒業の新入社員の3カ月にわたる研修の締めくくりとして脳力開発研修を行った。多彩なプログラムが用意されている。専門部門の研修、現場の研修と同時にMG(マネジメント研修)や脳力開発研修を行う。
 初日は企業理念の唱和から始まる。脳力開発研修では①主体的な姿勢づくり(仕事に、そして新しい人生に取り組む精神姿勢)②現状打破の姿勢③戦略と戦術の明快な理解と現実の混同から生じる種々の問題点を体得する④そして最後に仕事に取り組む、新しい会社人生を歩むに必要な自己の戦略(自分自身の明確な目標)づくりを研修の中心におく。

 新入社員は社会状況を如実に反映させる。厳しい状況のときの入社の人達はある種の緊張感を持っている。景気のよいときは甘い。何れにせよ様々な不安を抱えて社会人の一歩を踏み出す。幾ばくかの自信もあるだろうが、社会の現実には疎いことから、当初は人間関係に突き当たる。家庭できちんと躾けをされてきたわけではない。学生生活は専門性のある学部以外は多くは遊びに費やされる。毎年、新入社員を見て、彼らに勇気を持って踏み出してもらいたい。降りかかる問題に対処して、くじけないだけの目標を持ってもらいたいと二日間を様々なケーススタディーを使って、また様々な発言や和談の機会を作って訓練してもらう。初めて社会にでで、仕事に取り組む姿勢をきちっと整理してもらう。社会は学歴、知識、手練手管が通じるのではない。自分へのひたすらな誠実さ、積み上げる実績、手抜きをしない真摯さが大事だと。理論と体験を通じて納得度を高める。二日目の最後には情報統合技術を使って自分の戦略(仕事目標)を設定してもらう。指針がはっきりすると彼らの顔がぱっと輝く、ああこれを目指して仕事、日常行動していけばよいのだと。「どんなときにも状況を変えていく原動力は自分にある。状況を切り開いていくのは自分だとしっかり認識しました」という感想文に目を通しながら、彼らが逞しく人生を切り開いていくことを祈っている。彼らをいかに育てるかが会社の生命線に繋がる。